第205回井の頭かんさつ会実施レポート

「クモ・くも・蜘蛛~クモは面白い!」

■実施年月日: 2023年5年10月1(日)10:00~12:00
■参加者数: 一般参加者 16名(大人13名、子ども3名)
■実施場所: 井の頭公園駅下→ 京王井の頭線高架下 → 公園駅下トイレ → ボート池池尻 → 小鳥の森周辺(解散)

■実施レポート
 どうやらクモ好きの方々ばかりが集まってくださったようです。クモ嫌悪感、クモ恐怖感の克服も観察会の隠れた目的でしたが、その必要はありませんでした。3班に分かれて観察しました。
 今回は開催時期がこれまでより遅く、また草刈りの影響もあり、クモの種数からみると少なめでした。目視ですぐ見つけられるクモは人工物にも棲みつくような都会派のクモがほとんどでした。曇っていたせいか、ハエトリグモが少なくその点はちょっと残念でした。
 今回の観察の中心はクモが糸をどのように利用しているか、どんな網や巣を作っているか?を実際に観察してみることでした。ただ見るだけでなく、音叉振動や生餌など与えたときのクモの反応を観察する、クモの網・巣・卵嚢を実際に触ったり開いたりしてみる、クモの糸の強度を実験で感じるなど、参加者が体感できるような観察会を心掛けました。

<こんなことをしてみました>
・「クモの巣」のイメージとはかけ離れたヒラタグモの受信糸を張った住居、そっとはがして中にいるクモを確認 → 掛け布団と敷布団の間にいるような感じ。
・懐かしいジグモの巣堀り → 壊さないように土の中から抜き出し、中のジグモときれいに内張された袋巣を観察(一つの巣では子グモがいることが観察できました)
・オニグモの古い卵嚢を一部とって観察 → 卵嚢を守るクモの糸の強さを確認、中の子グモの脱皮殻を観察
・メガネヤチグモの網に振動している音叉をふれる → 管状住居から飛び出し、すぐ住居に戻るクモを観察中
・メガネヤチグモを捕まえて上の方から巣に返す → しおり糸を出しているのですっと垂れて帰巣
・オオヒメグモの団居(まどい)の子グモたちをつつく → 「クモの子を散らす」にはなりませんでしたが・・・
・ジョロウグモの網の作りを観察 → 五線譜のように規則的に間隔があいています → よ~く見ると細い別の糸(足場糸)が張られたまま残っています。
・ジョロウグモの網に振動している音叉をふれる → 素早く近づき、噛みつきます。
・ジョロウグモの網(枠糸)にゼムクリップを一つずつ掛けていき、その強度を観察する。

 特に、ジョロウグモの枠糸の強さを、糸にかけられるゼムクリップの数で計ろうという実験は楽しかったようです。いつ糸が切れてしまうのか・・・、クリップを一つ掛けるたびにハラハラしながら盛り上がりました。巣を張っていたクモの体重と糸が切れた時のゼムクリップの重量を比較したところ、約7.2g(500円玉より少し思いくらい)でクモの60倍でした。別の班では用意したクリップ40個全部でも切れない糸の強さでした。また、網はありませんでしたが、最後に美しいクモであるコガタコガネグモを見て終了となりました。
 ※班によって、すべてのプログラムをこなせなかった場合もあります。
 ※これらは観察会のために許可を得て行っています。開いたヒラタグモや掘り返したジグモの巣などのその後も見守っています。むやみにたくさんのクモの巣をいじらないようにお願いします。

<観察したクモ>
オニグモ(垂直円網)、ヒラタグモ(受信糸をもつ住居)、ジグモ(地中性の袋巣と中にいる子グモ)、ネコハグモ(葉上や人工物のボロ網)、ギンメッキゴミグモ(ゴミを付けた円網・頭は上)、オオヒメグモ(不規則網と卵嚢・団居)、アシナガグモ(水平円網)、オオハエトリ(擬木柵上)、メスジロハエトリ(擬木柵上)、ジョロウグモ(馬蹄形円網)、カニグモの仲間(樹幹)、コクサグモ(棚網と管状住居)、チリイソウロウグモ(他のクモの網に居候)、コガタコガネグモ
※班によって、観察したクモには多少の違いがあります。

井の頭線高架下でクモ観察(高架下には灯火があり、虫がくるのでそれらを捕食するクモも多い)
ジグモの巣をそっと掘り出し、クモと袋巣を観察
振動する音叉でジョロウグモの網に触れると真ん中にいたクモが噛みつきに来る
樹皮下に隠れているカニグモ探し
コクサグモの棚網と管状住居を観察

第204回井の頭かんさつ会実施レポート

「ナイトウォッチング

 ~驚きのセミの世界~」

■実施年月日 2023年8月11日(金・祝) 18時30分~20時30分

■参加者数 一般参加者 21名(大人14名、子供7名)

       井の頭かんさつ会スタッフ11名

■実施場所: 井の頭地区公会堂→第二公園→小鳥の森→第二公園  

 今回はセミの羽化に観察対象を絞り、夜の観察会を実施しました。今年は7月からの猛暑でセミの出現が早まり、8/6の下見時も羽化しているセミの数が例年よりも少なく、本番を心配しながら迎えることになりました。また、井の頭かんさつ会としては、かなり久しぶりに室内での座学をしてから公園で観察するというプログラムにしました。

 当日の座学では「セミの一生」をクイズや動画、スタッフ自作の絵本を使って学び、子供も大人も楽しんで学ぶことができました。

 座学の後は3班に分かれて公園に移動し観察をスタート。第二公園では例年たくさんのセミの幼虫達が路上に出てきて自転車などに轢かれて死んでいる現状があります。この現状を参加者の方にも知ってほしくて、第二公園を歩くところから観察をスタートしたのですが、路上を歩く幼虫には遭遇できず轢かれている幼虫が1匹だけいました。

 小鳥の森では井の頭かんさつ会恒例の暗闇体験をしてもらいました。都会での明るい夜しか知らない親子にとっては貴重な体験です。皆さん、暗闇体験を楽しんでいました。また、小鳥の森でも歩いているセミの幼虫やヤモリなど観察できました。

 第二公園に戻りいよいよ羽化観察です。保全班にも協力してもらいながら羽化しているセミをみんなで探しました。アブラゼミ、ミンミンゼミの他にツクツクボウシの羽化も観察できました。各班、羽化しているセミの姿をじっくり観察でき、その姿にみんな感動していました。羽化しているセミが少しずつ殻を脱いでお尻が抜けた瞬間は感動もひとしおです。みんなでセミの羽化を見守りながら感動を共有できました。

今回は座学でセミが羽化するまでにも幾多の試練があることを学んでから観察したので、よりセミのへの理解や羽化観察の感動が深まったのではないかと思います。

座学の様子 セミちゃん登場!「セミはどこに卵を産むのかな?」

子供達もクイズに積極的に答えてくれました。      スタッフ自作「セミくんとコナラさん」の絵本を読みました。

羽化しているセミがいないか探します。夜の公園を探検!子供たちはわくわくです。

タブレットで撮影する子も!時代の変化を感じます。

子供だけでなく大人もセミの羽化する神秘的な姿に目が釘付けになります。

殻からお尻が抜けるまで意外と時間がかかりますが、時間ギリギリ観察できました!みんなで見守って一番感動の瞬間です。

左から羽化したてのアブラゼミ、ミンミンゼミ、ツクツクボウシ。神秘的な姿です。

第203回井の頭かんさつ会 実施レポート/

■タイトル 土壌生物観察会 ~土の中の生き物を探してみよう~/

■実施年月日 2023年7月23日(日) 10時~12時

■参加者数 一般参加者 20名(大人13名、子供7名)

       ※申込受付数26名、事前キャンセル2名、当日欠席4名

       井の頭かんさつ会スタッフ1Ⅰ名

■実施場所: ボート乗り場前広場→弁天池南岸トチノキ付近→第二公園→玉川上水付近  

→交流広場

■実施レポート

 梅雨明け直後の猛暑の中、10時きっかりに4年ぶりの土壌生物観察会を3斑体制でスタートしました。2週間雨が降らず乾燥が進んでいましたが、トチノキの周りの落ち葉をめくり、表土を掘るとミミズ、ダンゴムシ、ハサミムシなどが動き回っています。子供たちはこれだけでも大喜び、大人も他になにかいないかじっくり観察しました。何かいそうな場所の土をスコップですくいビニール袋へ投入。あとで交流広場のテーブルでじっくり観察することにしました。

 同じように第二公園のトイレの裏付近や玉川上水緑道に近い樹林の中などでもその場所での観察と、土壌の採取を行い、11時頃に交流広場のテーブルに到着。

 班ごとに採取した土をふるいにかけると、大きな生き物はふるいの上に残り、小さな生き物はふるいの下に落ちます。小さな生き物はルーペや実体顕微鏡でじっくりと観察しました。

終了の少し前にある班で珍しい「カニムシ」が見つかったとの声が上がったため、興味のある人全員が交代で実体顕微鏡を覗き、その姿にびっくりしたところで終了となりました。

見つかった生き物は、ジムカデ、コムカデ、ヤスデ、ヨコエビ、ミミズ、ハサミムシ、ゾウムシ、ゴミムシ、カメムシ、カニムシ、ワラジムシ、ヒメミミズ、クモの仲間、アリ、トビムシ、ダンゴムシなど。

参加者全員最後まで楽しくかんさつできた一日でした。

第202回井の頭かんさつ会 実施レポート

「シダを楽しむ~シダ入門」

■実施年月日:    令和5年6月18(日)10:00~12:00
■参加者数:    一般参加者 24名(大人23名、子ども1名)
■実施場所:  井の頭公園駅下→ (神田川沿いに)夕焼橋 → (折り返して) → ボート池南岸 →
       弁天様向かい石垣→野草園→弁天池池畔(解散)

■実施レポート
 井の頭公園には29種のシダ植物があるそうです(最近の調査会社の調査による)。今回はその中の特徴的なシダと見分け易いシダ約20種を観察しました。
 観察会の目的はシダの精密な同定をすることではなく、シダという「美しい」植物が都市公園にも沢山あり、それらをもっと身近に感じ、楽しむことです。いわゆる「きれいな花」はつけず、人の目を引くことの少ない植物ですが、恐竜時代以前に出現し、長い進化の歴史を経て今日の生態系の一員として生きていることや、井の頭公園の生物多様性なども併せて感じていただければと企画しました。
 シダの全体の形、色合い、羽片のつき方や切れ込みなどを観ると、その特徴から大まかなグループがわかることが多く、中には「こんな形のシダは○○一種しかない」、「このような形の小羽片を持つシダは○○の仲間」というものもあります。今回もそういったシダが5~6種類くらいあり、まずこれを覚えると、「シダはどれを見ても同じに見える」から、ちょっと抜け出せると思います。
 さらに形を目で楽しむだけでなく、「触ってみる」ことにより、シダの葉にも、硬い・柔らかい、カサカサ、ふわふわ・・・など、いろいろな違いがあることを感じ、その感触も楽しみました。また、被子植物(いわゆる花が咲く植物らしい植物)と何が違うのか、どのような生活史を持っているのかなども少し紹介しました。
 被子植物と違う大きな点は、種子ではなく胞子を作ることです。それぞれが特徴的なソーラス(胞子嚢群)を持ち、そのいろいろなソーラスを観察するのも楽しみのひとつです。違うタイプのソーラスを、ルーペや実体顕微鏡で観察しました: 包膜が奇麗な赤色のベニシダ、浅いコップ状のイヌシダ、包膜のないノキシノブ、葉の縁が巻き上がって偽包膜となりその中に胞子があるイノモトソウ等々。
 またシダには山菜として昔から食されている身近なものがありますが、「これがゼンマイ!?」と参加者からあったように、大きくなった姿は意外と知られていないようです。因みに、井の頭公園には山菜となるシダはないようです(前述のゼンマイは某宅の植栽です)。

 今回の観察会では以下のようなシダの観察を楽しみました。
           小葉類:         イヌカタヒバ
           大葉類:         イヌワラビ、トラノオシダ、イノモトソウ、オクマワラビ、カニクサ、
                                  コバノヒノキシダ、ベニシダ(類)、イノデ(類)、ゼンマイ、
                                  リョウメンシダ、ミドリヒメワラビ、ノキシノブ、タチシノブ、
                                  イヌシダ、ゲジゲジシダ、オオバイノモトソウ、シケシダ、ホシダ

神田川夕焼橋の下におりて、石垣の小形シダを観察
(コバノヒノキシダ)
植栽の中にはリョウメンシダ
野草園の草むらにはシケシダ
樹幹にはたくさんのノキシノブ
園芸種として植えられたものかもしれませんが、
小葉類(イヌカタヒバと思われる)があるので、観察
弁天向かいの石垣にはイヌシダ。ふわふわの手触りを感じましょう

第201回井の頭かんさつ会 実施レポート

玉川上水 擬木柵の生き物

■実施年月日 2023 年 5月 6日( 土 10 時 12 時
■参加者数 一般参加者 21 名(大人 16 名、子供 5 名)
■実施場所: ボート乗り場前集合 玉川上水(幸橋〜万助橋) 班ごとに解散
■実施レポート
今回は 当会初のテーマ「玉川上水 擬木柵の生き物」で、擬木柵で見られる生き物 視点で 玉川
上水樹林の生態系を考えることに挑戦しました。参加者にとって生態系という奥が深いテーマで
あるだけでなく、何が見られるかは当日にならないと分からなく、しかも多種多様な生き物で昆
虫の目( もく;チョウ・ハチ・ハエなどの分類グループの単位 )さえ分からない生き物もいると
いう、案内する側にとっての難易度が高いテーマでした。
ボート乗り場前に集合してすぐに玉川上水に向かいました。 擬木柵の上には様々な生き物が見
られます、昆虫・クモ・爬虫類・巻貝(カタツムリ)、それらを観察して、何をしているのか、
何を食べているのか、どう してここ(擬木柵)で見られるのかを考えます。イモムシは頭上の木
から落ちて来たのか?クモはそのイモムシを捕まえるために待っているのか?そんなことを考え
ます。 オトシブミが葉を巻いてその中に卵を産む、ハマキガ幼虫が木の葉巻いて巣を作る、アリ
が弱った昆虫を襲って食べる様子も観察しました。 擬木柵は玉川上水樹林の生態系が観察しやす
い場所になっているのです。
参加者の子供だけでなく、大人にとっても、普段気づかない小さな生き物を沢山みて生態系の
深さを感じることはとても刺激的だったようで、沢山の質問を受け、一緒に生き物の生態を考え
ました。


また、今回も参加いただいた永井明子さんが、観察した内容を素敵なイラストにしてまとめて下さいました。

永井さんのホームページはこちら  http://lovely-garden.no.coocan.jp/

第200回井の頭かんさつ会 実施レポート

テーマ: サクラの楽しみ方

■実施年月日 2023年4月9日(日)10時~12時

■参加者数  一般参加者 19名(大人19名)

■実施場所:ボート乗り場前広場→ボート池南岸→文化交流広場

■実施レポート

 晴天に恵まれ、春うららの気持ちが良い陽気で、公園の春を楽しむには絶好の気候でした。今回は大人向けという事で、通常の会よりもキャンセルが少なく、大人班3班で公園を巡りました。

今年はいつになく、春が早く、サクラのシーズンもほぼ終盤でしたが、文化交流広場では遅咲きのサトザクラで満開の種類もあり、多くのサクラが楽しめました。最初にボート乗り場周辺では、わずかに残った染井吉野や八重紅枝垂などの花を観察し、サクラとは何かを各班でガイドしていきました。また、染井吉野がクローンであることと、自分の花粉では結実せず、実ができないことから、近くのヤマザクラの実の観察など、サクラの性質を確認しながら、池の南岸を観察し、文化交流広場に行きました。文化交流広場は花盛りの関山をはじめ、古くからある代表的な品種の普賢象、黄色の鬱金、緑色の御衣黄、真白な白妙などが華麗に咲き誇っていました。また、千里香・駿河台匂・静香などは香りも楽しみました。見た目だけではなく、それぞれの花の花弁や、雄しべ、雌しべ、托葉などをじっくり観察すると、様々な特徴が見えてきて、サクラの楽しさを更に深めることとなりました。

参加頂いた永井明子さんが、かんさつした内容を素敵なイラストにしてまとめて下さいました。
永井さんのホームページはこちら http://lovely-garden.no.coocan.jp/

第198回井の頭かんさつ会 実施レポート

■タイトル 冬芽の世界

■実施年月日 2023年2月26日(日)10時~12時

■参加者数  一般参加者 22名(大人16名、子供6名)
井の頭かんさつ会スタッフ 9名

■実施場所: ボート乗り場前 →狛江橋南側 →ボート池南側 →三角広場

■実施レポート
冬芽とは、落葉樹が晩秋に葉を落とし、次の春に活動を開始するための器官であり、冬の寒さや乾燥から目を守る様々な仕組みをもっています。一方で冬芽と葉痕がさまざまな形を作り出します。人の顔に見えるもの、動物の顔に見えるものもあります。その形を楽しみつつ、冬芽の構造から植物の体の構造まで考えていきました。
 寒さや乾燥から芽を守るしくみとして、コブシやアオツヅラフジのように毛で覆うもの、ニセアカシアのように隠れているもの、スズカケのように葉柄の中にあるものもあります。生き物の巧みさに参加者からは感嘆の声が上がります。
 芽の側の葉痕にある維管束痕の数が3つだと、冬芽という帽子を被った顔に見えます。エノキ、ムク、アジサイ、オニグルミなど、子供の参加者も頑張ってルーペを使い、顔に見えると歓声が上がります。
 また、花が先に咲く種類は花芽と葉芽が別れていることや、花が先に咲くソメイヨシノは花芽が葉芽にくらべて大きことを説明すると、大人の参加者は自然の複雑さに驚いた様子でした。
 枝の付き方と芽の付き方は同じ(互生と対生)の話や維管束の話など、植物の構造の話は難しいけれど、大人はしっかりと聞いてくれていました。
 冬芽という少しマイナーな観察テーマですが、多くの子供も参加して、観察意欲の高い人が多かったです。

■かんさつ会の様子

第196回井の頭かんさつ会 レポート

タ イ ト ル:    「地衣類って、何?」
■ 実施年月日:    令和4年12月18(土)10:00~12:00
■ 参 加 者 数:    16名
■ 実 施 場 所:  井の頭公園ボート乗り場前(集合)→ 狛江橋を渡ったペパカフェ(レストラン)下
         周辺の樹木 → 黒門周辺 → 日本庭園 → ペパカフェ下の開けた場所(解散)

■ レポート
 当日の未明まで雨が降り続きましたが、朝には快晴となり、寒い日でしたが参加された皆さんには初めての地衣類を楽しんでいただけたようです。最後に「面白かった」「楽しかった」という声も聞かれ、企画側としても嬉しく思いました。
 都会の自然の中にこのような生きものもいることを紹介し、「こんなところに地衣類!」という発見と共に、その生き方の不思議について知っていただけたらと企画しました。さらに、身近な環境でも様々な生き物が生息している生態系についても、少し思いを馳せていただけたらという思いもありました。
 都会の自然の中にこのような生きものもいることを紹介し、「こんなところに地衣類!」という発見と共に、その生き方の不思議について知っていただけたらと企画しました。さらに、身近な環境でも様々な生き物が生息している生態系についても、少し思いを馳せていただけたらという思いもありました。
 とは言え、地衣類初心者対象のかんさつ会なので、まずは「地衣類は植物?」「コケではないの?」など、お話しながら実際に地衣類を見て回りました。対象が微小でルーペでの観察が欠かせないので、場所は公園内の3ヶ所に絞り、色、全体の形状(大型葉状・小型葉状か、固着か、樹状か?)、子器の形(椀状か、ドーム状か、溝状か、など)、栄養繁殖器官(裂芽、粉芽など)をゆっくり観察しました。また、コケ植物と一緒に生育していることが多く、どう違う?なども観察しました。
 さらに、地衣類はそれぞれ特有の化学成分(二次代謝産物)を作るので、その簡易検出方法の一例として、次亜塩素酸ナトリウム希釈液(ハイター薄め液)による呈色反応も実際にやってみました。1滴たらすとすぐ赤変するので、化学成分の確認を実感できました。
 最後に、イワタケのように食用になるものや、トナカイの食料であったり(当日の夜のNHK番組「ダーウィンが来た!」でもやっていました)、染料や薬用、環境指標になったりと、人の生活にも関わりがあることもお話しました。


<見ることのできた地衣類(種名は見た目での判断)>

葉状地衣類:    ウメノキゴケ、キウメノキゴケ、ナミガタウメノキゴケ、マツゲゴケ、
          ハクテンゴケ、コフキメダルチイ、コナロゼットチイ、ロウソクゴケ
固着(痂状)地衣: コナロウソクゴケモドキ、ミズイロレプラゴケ*、レプラゴケ(類)、
          モジゴケ(類)、サネゴケ(類)、コフキバラゴケ*、ヘリトリゴケ、
          キッコウイボゴケ
樹状地衣:     ヒメジョウゴゴケ
               (*)化学成分検出の呈色反応を実施してみた地衣類

 

地衣類とコケ植物とは同じ場所に生育し、似ています.何が違うのでしょう?
案内者「これはナミガタウメノキゴケで…」
参加者「これが地衣類…!?」
石に固着する地衣類をライト付きルーぺで観察中.地衣類の観察にはルーペ必携です.
ルーペで覗くと別世界が広がります.

地衣類は安定した環境が維持されれば、同じ場所でじっくり何年もかけて生長する生物です。
公園の環境の変化の一つの目安として今後も公園で観察を続けてみたいと思います。
                                  (田中雅子・記)

第195回実施レポート

■タイトル 五感で楽しむ秋の井の頭公園

■実施年月日 2022年11月27日(日)10時~12時

■参加者数  一般参加者 12名(大人10名、子ども2名)
       案内人 井の頭かんさつ会スタッフ9名

■実施場所: ボート乗り場前 →七井橋 →お茶の水池北側 →→御殿山 →訓導碑周辺

■実施レポート
 今回もマスク着用、検温、消毒、などコロナ感染症対策を万全にして臨みました。
 ボート乗り場前に集合し、そこでヒメガマの種子が飛ぶ様を観察しました。タンポポの綿毛のような種子が日差しを浴びて煌めき、風に舞う様は新しい秋の風物詩です。
 五感を使って秋を楽しむと言うテーマですが、やはりメインは色とりどりの紅葉・黄葉を見て楽しみます。七井橋の上からは木々が様々に色づいている様子を観察し、紅葉のしくみをお話しし、落葉することの意味を考えました。
秋に香る植物も楽しみます。カツラの落ち葉やクスノキの種といった“良い香り”だけでなく、ヤブタバコなど“嫌な香り”も紹介しました。またサザンカの花の香りがなぜ弱いのかを考えました。
聞いて楽しむのは野鳥の声です。ウグイスの地鳴きの紹介や、ヒヨドリの声がなぜよく聞こえるのかを考えました。
触って楽しむのは葉の手触りです。ムクノキとエノキの葉は形が似ているけれど、参加者には触感で区別してもらいます。すぐに違いがわかるようになりました。
味わって楽しむことについて、かんさつ会の中では試食はしませんでしたが、食べられる木の実を紹介しました。
また子ども班では、観察対象を見つけるビンゴカードを使って知識がなくても楽しめるように工夫してみました。

第194回実施レポート

■タイトル 井の頭公園で秋の実の色探し

■実施年月日 2022年10月30日(日)10時~12時

■参加者数  一般参加者 22名(大人18名、子ども6名)
案内人 井の頭かんさつ会スタッフ10名

■実施場所:ボート乗り場前広場→七井橋→お茶の水池北岸→梅園→御殿山→小鳥の森
→野球場東エリア(班ごとに解散)

■実施レポート
晴天に恵まれ、気持ちが良い陽気で、公園の秋を楽しむには絶好の気候でした。大人班2班と家族班2班の4班で公園を巡りました。最初に実とは何かと考えてもらい、実の説明をし、観察を開始しました。今回は木の実、草の実の中で、生き物に食べられて運ばれる(被食散布)の実を公園内で見つけていき、実の色を観察し、色のシールを観察シートに張って、どんな色の実が多いか調べてみました。同じ種類の実を観察していても、色の感じ方は人により様々で、シールの色の選び方に個性が出てきます。公園内を歩き30種ほどの実を観察すると、熟した赤やオレンジ色の実が多かったですが、まだ熟していない緑の実や、黒い実、白い実、青~紫系の色の実もある程度見られ、カラフルな観察シートが出来上がりました。大人も子どもも木の実・草の実を見つけて、実の色コレクションに夢中になり、井の頭公園の秋を大いに楽しみました。

実施風景