第100回井の頭かんさつ会のレポート

第100回井の頭かんさつ会

「真夏の神秘体験! 夜の生き物ウォッチング」

日時:2013年8月10日(土曜日)午後6:30~8:30
主催:井の頭かんさつ会
後援:東京都西部公園緑地事務所

案内:
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
大原 正子
小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター) 
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
高久晴子
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
日置 日出男(森林インストラクター)
大橋 博資
上村 肇
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)
佃 和夫(NACS-J自然観察指導員)

協力:
保全活動班メンバーなど8名

参加者:71名(大人47、子供24)

レポート

 最高37.4℃、最低29℃、これがこの日の最高気温と最低気温。しかし最低気温が出たのは朝のことで、夕方6時半の御殿山は熱気と湿気でムンムン。そこへ総勢90名を超える人々がさらなる熱い期待を胸に集合しました。夜でなければ活動しない生き物たちが見られる、それも何故夜にだけ?の疑問も分かるかもしれない、という期待です。
下見で共通の観察内容を予め決めてはいましたが、夜の森には何が出てくるか分かりません。参加者だけでなく、スタッフたちもワクワクする夜の探検です。

参加者もスタッフも、メンバーの印として腕に「ネオンブレスレット」(コンサートなどでよく使用する光る腕輪)をつけて、6班に分かれて「夜の神秘体験」に出発しました。

まず集合場所では、最近市街地では殆ど聞くことの出来なくなったヒグラシの大合唱を楽しみ、弁天橋では虫を求めて上空を飛び交うアブラコウモリを肉眼で見ながら、彼らの出す超音波をバットディテクターでキャッチして確かめました。知識では知っていたコウモリの超音波を実際に感じてみた参加者たちは大喜びでした。
その頃には夜のとばりも降りて皆の期待はますます高まってきました。

*何といっても人気の的は夜の虫たちです。そのなかでも「セミの羽化」には子供も大人も感動しました。コース途中のそこここの柵や柵のロープ、樹木、草などにのそりのそりと登っていくセミの幼虫、殻から一生懸命に抜け出ようとしている羽化途中の姿、美しい薄緑色の羽を伸ばして乾くのを待っている生まれたばかりの成虫・・・井の頭公園の夏の夜はセミたちの密やかな営みにあふれていました。
また、90名もの目は、樹液に集まるカブトムシやコクワガタ、草むらに潜むサトクダマキモドキの幼虫、アオバハゴロモ等々……多くの虫たちが暗い森の中、樹木の上や草の陰で密やかな暮らしを営んでいるのを見つけ出しました。夜でも行列を作って卵を運んでいる、巣を持たないアミメアリの大群も人々の目を惹きました。

*花では、夜飛び回るスズメガをポリネーターとする為に夜咲くカラスウリ(野草園)、メマツヨイグサ(野球場予定地)、また、自家受粉もするオシロイバナ(ジブリ前)を観察しました。

*植物では、昼間とは違う姿になって就眠運動をする葉も観察しました。野草園のノササゲ、カラムシ、ヤブマメ、カタバミ、ジブリ前のネムノキ、ハギ等です。

*夜間に変形体から子実体へ劇的に変身する粘菌…残念ながら目立つ変形体がコース内にはこの日無く、写真と解説だけに留めましたが、参加者の関心を惹きました。
*その他、モグラ塚の穴掘りに挑戦した子供たちもいました。

終了時間には第二公園に全員集合し、さて、スタッフの挨拶を、という時でした。サプライズが起きました。取材に見えていた記者の胸になんと、カブトムシが突然止まったのです。本人は勿論、皆びっくり。記者の周りは興奮に包まれ、子供から大人まで押し合いへし合いの人垣が出来ました。最後まで熱気に溢れた夏の夜の観察会はこうして幕を閉じました。

第100回という節目にふさわしい大人気の観察会でした。じつは今回は120名を超える方々から参加申し込みをいただきました。井の頭かんさつ会「観察会班」12名がフル回転の6班体制としましたが、夜の観察会ということで、安全に関しては特別の配慮が必要です。「保全活動班」メンバーに協力を求め、子供たちへの目配りを担当してもらったものの、受け入れられる人数には限りがありました。キャンセル待ちをしていただいたにもかかわらず参加できなかった多くの方々には大変申し訳ない気持ちです。

今回、公園管理の皆様には、夜の見せ場のひとつであるカラスウリの開花を観察する為に草刈りをお待ちいただくなど、便宜を図っていただきました。新聞や地域放送局からの取材も3件ありました。こうして100回目を迎えられたことは、私たちにとって大きな感動です。支えて下さっている皆様、参加して下さる多くの皆様のお蔭であると心より感謝致します。

 

(レポート:大原、写真:高野)

第99回井の頭かんさつ会レポート

第99回井の頭かんさつ会
「井の頭池の自然と生き物」~かいぼり前の池を調べよう~

日時:2013年7月20日(土曜日)午前10:00~12:00
主催:井の頭かんさつ会
後援:東京都西部公園緑地事務所

案内:
上村 肇
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
大原 正子
小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
高久晴子
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
大橋 博資
日置 日出男(森林インストラクター)
佃 和夫(NACS-J自然観察指導員)

協力:
外来魚調査活動同志 7名

参加者:36名(大人22子供14)

レポート

いつものように1週間前に公園に案内ポスターを貼りだしてから、わずか3日後には定員オーバーとなる応募が殺到し急いで「満員御礼」の札を貼った今回でした。当日は猛暑も雨もない天気に恵まれ、一部欠席があったものの参加者36人(内子供14人)にスタッフを加えると50名を超え、更に時間とともに立ち寄りの見物人まで集まってきて大賑わいとなりました。

参加者はまず2グループ(☆池作業班と☆地上かんさつ班)に分かれ、以下のような盛りだくさんな体験プログラムを手順に沿って進めます。

*コイ捕獲:池作業班は水中作業のために先ずウェーダーを着け、追い込み用の囲い網とサデ網を持って池に入ります。数匹のコイを皆で遠巻きにし、徐々に輪を詰めて・・、さあ網をあげて見れば、あれ?コイはどこに行ったの?柳広場での空振りの後、再度池尻・ひょうたん平橋でトライし、やっと大きな緋鯉が一匹網に入ってくれました。

*浅瀬でガサガサ:池作業班が続いて行なうのはタモ網を使ったガサガサでの捕獲です。ブルーギルの稚魚に混じって、数は少ないもののギギの稚魚、ヌマチチブや在来魚であるモツゴ、テナガエビ、トウヨシノボリ、などが獲れました。
保護池であるひょうたん池ではサデ網などで外来魚であるブルーギルの稚魚の捕獲も行いました。ここにはザリガニやヌマチチブなどもいますが、本来いないはずの/いるべきでない生き物がいる現実に問題の深さを理解していただいたでしょうか。

*オダ網による外来魚捕獲とカメカゴの回収・カメ捕獲:地上かんさつ班はかんさつ会が継続実施している、オダ網によるブルーギル(主に稚魚)等の捕獲と、カメカゴによるアカミミガメの捕獲作業を見学しました。カゴにはクサガメ、スッポンも入りました。

*池作業の見学、捕獲生物の仕分けや展示作業等体験・観察:柳広場では捕獲生物に加え、かんさつ会メンバーが別途捕獲したブラックバスやブルーギルの成魚、アメリカザリガニなども一堂に展示されました。基本的には参加者を対象とした展示でしたが、一般の人たちも次々に立ち寄り、一緒に見学や質問に加わったりしたりして、まさにオープンなかんさつ会になったのは、主催者としてはうれしい誤算でした。

最後に時間外来生物を除く池の生物を水に戻すときのクサガメ、スッポンのユーモラスな「逃げ足」の速さには大人も子供も喜んで感嘆し、楽しく見送りました。

いつもとはちょっと毛色の違った今回のかんさつ会でしたが、まずまず満足していただいたように思いますが、いかがでしょうか?

 

(レポート:竹内、写真:高野)

第98回井の頭かんさつ会レポート

第98回井の頭かんさつ会

「シダ入門 ~ シダってどんな植物?」

日時:2013年6月23日(日曜日)午前10:00~12:00
主催:井の頭かんさつ会
後援:東京都西部公園緑地事務所

案内:
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
日置 日出男(森林インストラクター)
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
大原 正子
高久 晴子
大橋 博資
上村 肇
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)

参加者:24名(大人20名、子供4名)

レポート

今回は井の頭かんさつ会として初めてのテーマ、「シダ」に取り組んでみました。地味なテーマなので、実はどれだけ参加者が集まるかと心配もしていましたが、予想外の人数の参加者に驚くと同時に、嬉しくもありました。

植物観察というと花の咲く植物(種子植物)が主体ですが、自然界には花を咲かせない植物たちもあり、それらもまた自然の構成要員であり、生物多様性を形づくる一員であることを感じていただきたくて企画しました。植物や花の進化を考えるうえでもシダは重要な位置づけにある植物で、花の咲く植物とは違ったくらしぶりを観ることで、さらに身近な自然のオモシロ発見をしていただくこともねらいでした。

とはいえ、あまりなじみのない対象なので、プログラムを二部構成とし、最初にスライドと印刷資料でシダ植物と観察のポイントを解説、その後に公園で実際にシダを観察しました。シダは見慣れないとどれも同じように見えてしまいますが、観るべき特徴を覚えると違いがわかってきます。シダはその形の美しさと葉裏の胞子嚢群(ソーラス)の色や形がさまざまで、それらを観るだけでも楽しいものです。入門編なので、できるだけ特徴のある覚えやすいシダをひとつひとつ観て歩きました。

誰もがその名前には聞き覚えのあるシダの前では「これがノキシノブ!」、またゼンマイの前では「これがあの食べるゼンマイ!初めて見た」という声も…。中軸に三角形の翼のあるゲジゲジシダも覚えやすいシダです。ベニシダの葉裏の美しい赤い胞子嚢群(ソーラス)を観察した時は、これは何の色?となり、包膜をはがしてみると、中は赤くなく、包膜が赤いことがわかりました。また、ソーラスは胞子を飛ばすためにとても周到な構造を持っていますが、実体顕微鏡で乾燥してくるとはじける胞子嚢も観察しました。

当日、実際に観察できたシダは約15種で、中には中級編のシダもあり、またイヌワラビのようにあまり特徴のないシダもあり、ちょっと難しかったかもしれません。また最初に室内で解説に時間をとった分、公園内の観察が駆け足になってしまったきらいがあり、反省点でもありますが、シダ植物の形のいろいろ、ソーラスのいろいろ、生育環境の違いなどが少しわかり、シダ植物観察の楽しさを味わっていただけたと思います。

これを機会に、いわゆる草花や木々のほかにも多種多様な生きものが自然界を形作っており、それぞれが長い進化の歴史とバランスのなかにいることにも思いを馳せていただけたらと思います。

(レポート:田中雅子、写真:高野)

第97回井の頭かんさつ会レポート

第97回井の頭かんさつ会レポート

「初夏の昆虫」をさがしてみよう!

日時: 2013年5月25日(土)午前10:00~12:00
場所: 井の頭公園
集合: 午前9時45分 井の頭池ボート乗り場前
主催: 井の頭かんさつ会
後援: 東京都西部公園緑地事務所

案内:
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
大橋 博資
高久 晴子
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
大原 正子
日置 日出男(森林インストラクター)
上村 肇
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)

参加者:33名(大人19名,子供14名) 

レポート

 本格的な夏が訪れるちょっと前のこの時期に、『どんな昆虫』が、『どのような姿』で、『どんな所』にいるのかを参加者のみなさんの眼も借りてさがしました。
 今回は、参加者の大半が幼児または子供の親子の方々でしたので、井の頭かんさつ会としては、異例の子供班三つと大人班一つという体制で観察会をスタートさせました。

 大人班では、それぞれの昆虫の幼虫や成虫の食性や環境を通して、昆虫たちの生活スタイルの不思議や感嘆を発見でき、次の季節への観察眼が養われたように思われます。
 一方子供班は、スタッフの案内で普段は目に付きにくい場所の昆虫を実際に目にすることで、歓声があがりました。なかでもラッキーだったのは、オオヤマトンボの羽化の真っ最中を観ることができたことです。一見するとあの有名なオニヤンマにも似ているオオヤマトンボは、大きさも体の色彩も迫力満点でした。

 また、アブラムシが大量発生している梅の木では、テントウムシの蛹・幼虫・成虫がたくさん見られました。

 他にも樹液に集まる昆虫や小さな小さなゾウムシや働き者のニホンミツバチなど、多数の昆虫を観ることができました。明るい場所、木々が茂っているやや暗い場所、原っぱのように開けた場所など、それぞれの環境によってそれぞれの生活をしていることを少しは伝わったのではないかと思います。ただ、子供班にとってはちょっと移動距離が長かったかもしれませんね。

 

(レポート:大橋、写真:上村・大原)

第96回井の頭かんさつ会レポート

第96回井の頭かんさつ会レポート

恒例!春の夏鳥探鳥会 少し早起きして、井の頭の森で宝探し

日時:平成25年5月3日(金祝)午前7:00~9:00
場所: 井の頭公園
主催: 井の頭かんさつ会
後援: 東京都西部公園緑地事務所

案内:
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
大原 正子
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
高久 晴子
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
大橋 博資
日置 日出男(森林インストラクター)
上村 肇
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)

参加者:58名(大人54名,子供4名) 

レポート

 第96回井の頭かんさつ会「恒例!春の夏鳥探鳥会」は、昨年に続いて早朝の開催としました。やはり早い時間の方が鳥のさえずりが多く、観察に有利だからです。通常のかんさつ会の時間はさえずりが少なくなる時間帯なのです。
探鳥会の回はやはり人気です。集合6時45分という早朝の開催にも関わらず、満員御礼でした。当日は天気は申し分なかったものの気温が低く、久しぶりにフリースを着て行ってちょうど良かったほどでした。低温は昆虫の活動にとってマイナスなので、それを餌とする夏鳥も不活発なことが懸念されましたが、集合場所の井の頭自然文化園分園周辺では開始前からエゾムシクイがさえずり、近くではセンダイムシクイもさえずり、アオゲラの声も聞こえました。夏鳥がいるだけでなく、さえずってくれていて良かった.…….と胸を撫で下ろしました。
参加者を4班に分けて出発し、私は20人ほどの参加者を案内しました。確認したところ、水辺の鳥を観たいという方はほぼゼロだったので、すぐに御殿山の雑木林へ直行し、夏鳥を探しました。しかし、開催前には聴こえていたムシクイ類のさえずりが消え、留鳥の声さえもまばらで、イヤな予感がしました。折角大勢の方に早起きして来てもらったことですし、私は必死で耳を澄まし、キョロキョロして鳥を探しました。
御殿山の奥まで来てやっと遠くのキビタキの声を確認しましたが、キビタキがいたのは吉祥寺通りを挟んで井の頭自然文化園内だったので、交通整理に気を使いながら、参加者に声のみ確認してもらって、すぐに森へ戻りました。その後、ようやくオオルリのくぜり(完全なさえずりに至らないつぶやきのような歌)に気づき、姿を探したものの決定的に捉えることはできず、小鳥の森へ。ここでやっとクヌギの高い梢にオオルリの姿を見つけることができましたが、自分は観ることができても参加者の多くは見ることができず。その高い位置のオオルリをねばって観てもらうことに時間を使うのは賢明ではないと考えて、松本訓導碑周辺に移動し、あらためて夏鳥を探し直しました。
少し気温が上がってきたからか、キビタキやオオルリのくぜりは次第にさえずりっぽくなってきて、センダイムシクイの声も聞こえて、ほどなくオオルリの姿を何とか捉えることができ、スコープに入れた姿を参加者に観ていただくことができました。
その後、まとめとして身近な井の頭の森の自然環境の大切さについてお話をし、終了しました。今回は終了が9時台だったので、時間と熱意と体力のある方はそのまま延長戦へ。ねばった方はオオルリに加えてキビタキもしっかりと観ることができました。気温が低かったので、夏鳥探しの最大の手がかりであるさえずりが少なかったですが、タイミング的には季節移動の波に当たり、数種の夏鳥を観察することができました。

今回は天気は申し分なかったのですが、低温に参りました。時間が早ければ早いほど、
さえずりが多くて観察に有利なため、会の開始を早朝に設定したのですが、季節外れの低温がネックになってしまいました。皮肉なことに、会が終わった頃に気温が上がってきて、さえずりが増えてきました。終了の頃に想定していた気温に上がってきたのです。また、今シーズンは樹木の展葉が早く、例年であればゴールデンウィークの時期は未だ野鳥が観察しやすい条件のはずが、葉がすっかり茂りきっていて、観察の難易度が高かったです。もう少し参加者に観てもらいたかった、聴いてもらいたかったのですが、御殿山から小鳥の森にかけての雑木林を初めて訪れた方も少なくなく、朝のさわやかな森歩きに加えて野鳥観察ができて大満足という参加者も少なからずいて、やりがいを感じました。

(レポート:高野、写真:上村)

第95回井の頭かんさつ会レポート

第95回井の頭かんさつ会レポート

「井の頭公園花めぐり」 ~花の進化を観よう~

日時: 2013年4月21日(日)午前10:00~12:00
集合: 午前9時45分 井の頭池ボート乗り場前
主催:井の頭かんさつ会
後援:東京都西部公園緑地事務所

案内
小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
大原 正子
高久 晴子
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
日置 日出男(森林インストラクター)
大橋 博資
上村 肇
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)
佃 和夫(NACS-J自然観察指導員)

参加者:12名(大人12名)

レポート

 井の頭かんさつ会にとっては珍しく朝からの雨となり、残念ながらキャンセルも多かったですが、逆に来て頂いたのは、非常に熱心な方々ばかりでした。雨の中来て頂いた参加者のために井の頭地区公会堂で、内容の濃い室内プログラムを実施しました。

 プログラムとして、花の進化についての話しと実際に花の観察との二部構成で行いました。第一部の花の進化の話しはパワーポイントを使って講演形式で解説を行いました。まずは、花の各パーツについて説明を行い、植物がシダから裸子植物へ、そして被子植物へいかに進化したかを参加者のみなさんと見ていきました。そして花がなぜ進化したのかを考えながら、花の目指す方向を探りました。モクレンの仲間など原始的な花から、キクやイネやランの仲間など進化した花への構造の変化を見ていくと、花は効率よく子孫を増やすことができる形になってきているのが分かります。昆虫と花との共進化では、カーペンタービーしか花粉を出すことができないオルフィウムという花や口が長いスズメガの仲間でしか蜜が吸えないランの仲間の話など、写真を交えて解説を行いました。また、ランの仲間があの手この手で、昆虫に花粉塊を付けて運ばせる仕組みには、参加者から驚きの声が上がりました。

 第二部はスタッフが雨の中集めてきた花を使って実際の観察です。各テーブルにはまるで生け花教室のようにいろいろな花が置かれていました。ツツジ、タンポポ、ハルジオン、ヤエヤマブキ、スミレ、ツルニチチソウ、コナラ、シロヤマブキ、珍しい花ではスタッフの庭にあったカラスビシャクなどもありました。それらを一つずつ順番に解説を行いながら、観察していきました。分解して、虫メガネで観察したり、顕微鏡をのぞいたりと、その度に面白い発見があり、参加者とスタッフが一緒になって盛り上がりました。

今回は人数が少なかったので、スタッフが付きっ切りでアドバイスできたためか、参加者の方から充実した観察会であったとのコメントを頂きました。振り返ると、今回のような時間をかけてじっくりと観察することを、野外で大人数で実施することは非常に難しいです。企画者としては、本当にやりたかったことが、雨ゆえに実施できたと思っています。

(レポート:小町、写真:上村)

第94回井の頭かんさつ会レポート

第94回井の頭かんさつ会レポート

 「樹形と樹皮 ~分かる! 木のきもち、木のなやみ~」

日時:2013年3月24日(日曜日)午前10:00~12:00
主催:井の頭かんさつ会
後援:東京都西部公園緑地事務所

案内:
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
大原 正子
小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
高久 晴子
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
日置 日出男(森林インストラクター)
大橋 博資
上村 肇
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)

参加者:30名(大人28、子供2)

レポート

例年なら木々がまだ芽吹いていない時期なので「樹形と樹皮」をテーマにしたのに、なんとソメイヨシノが満開になってしまいました。でも心配した混雑は朝のうちはそれほどでもなく、いつもどおりにかんさつ会を開始できました。

今回のコースは、七井橋を渡って池の北岸から西岸へと辿り、御殿山へ上がって雑木林を通り、西園グラウンドが終点です。3班に別れて樹形と樹皮の観察を進めました。満開の桜も今日ばかりは花より樹形に注目です。池畔の桜が池のほうに大きく傾いているのは、光を求めて、隣の木との競合がない池の上へと幹や枝を伸ばしたからです。樹皮には実際に手で触ってもらい、木の種類や年齢による違いを感じ取ってもらいました。木々をよく観ると、生長のしかたには共通する点があるとともに、種類ごとの違いも大きいことが分かります。光を始めとするいろいろな環境条件やハプニングなどの影響がそれに加わって、個々の樹形ができ上がっていることが分かります。

そのような基礎的説明と並行して、応用問題にも挑戦してもらいました。我々があらかじめ見つけておいた不思議な/おかしな樹形を紹介し、どうしてそんな形になったのか推理してもらったのです。例えば、幹の地上2メートル以上のところから太い根を地上まで伸ばしているクスノキ、別種らしい太い枯れ木を抱え込んでいるスダジイ、2本足でどちらも幹に見えるケヤキ、雑木林の中で幹も枝も右往左往しているコナラ、ハート型に樹皮が剥がれているアカマツなどです。アカマツのハート型(じつは「矢はず」型)の傷は終戦直前に戦闘機の燃料を作ろうと国民に松脂を採集させた跡です。郷里で実際に採集作業をされた参加者が他の班にいらっしゃったそうです。参加者から、いつも通っている場所なのにこんなに面白い木がたくさんあるとは全然気づかなかったという声が上がりました。

観察コースには高齢の木が多いのに枯れた枝がほとんどないことにも気づいてもらいました。落ちて来園者が怪我をしないよう、担当者が頻繁に見回って、弱った枝を取り除いているからです。しかし太い枝をバサバサ切る強剪定は、木の体力を消耗させ、木を腐朽させる菌類への抵抗力を弱めてしまうので、木にとっては大問題です。観察を進めるにつれ、参加者の皆さんはしだいに木の気持ちや悩みを想像できるようになってきたようでした。

他の班は個々の議論や質疑応答にもっと時間をかけたようですが、我々の班は先を急いで、西園の桜の広場まで行きました。そこの木々は互いに離れて立っているので他の木に光を遮られず、まだ咲いていた早咲きの桜を始め、コナラやエノキやシラカシなどの自然樹形が見られるからです。桜は他の種類の木よりも枝を大きく横に広げていて、いかに光が好きか分かりました。それが池畔の桜が池にあんなに大きくせり出している理由だったのです。

グラウンドへ戻って他の班と合流しました。今後も時々は木の気持ちになって木を見続けていただくことと、どうすれば井の頭公園の木々と来園者がうまく共存できるかを考えていただくことをお願いして、かんさつ会を終えました。

(レポート:田中利秋、写真:上村肇他)

第93回井の頭かんさつ会レポート

第93回井の頭かんさつ会レポート

 「冬芽 ~木々の春支度を覗いてみよう

日時:2013年2月27日(日曜日)午前10:00~12:00
主催:井の頭かんさつ会
後援:東京都西部公園緑地事務所

案内
上村 肇 
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
大原 正子
小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
高久 晴子
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
日置 日出男(森林インストラクター)
大橋 博資
参加者数17名(大人16名 子ども1名)

レポート

今回のかんさつ会は冬芽を主題として取り上げました。
今回は参加者の方が比較的少なかったので、3班に分かれて各班5-6名に3人の案内者という小回りの効くかんさつ会となりました。
コースはボート乗り場から始まって、七井橋を渡り、池の北岸を反時計回りに回って、梅園から弁天橋・日本庭園を通ってスタート地点に戻る一周としました。コース内から選んで撮影した冬芽24種を写真資料として配布し、この資料を基に冬芽の特徴や意味をたずねて周りました。

普段は跨ぐことのない園路のロープを越えて木々の直ぐ傍まで行き、ハンノキやハナノキの比較的低い枝の先をルーペを使って一つ一つ覗いていきます。 ハンノキでは資料の写真にある可愛らしい葉痕をあれでもないこれでもないと探し回って見つかったときには「あっこれだ!」と声があがりました。またシナマンサクでは頂芽が二つ縦に並んでいる理由をあれこれと考え、大きな方の主芽が駄目になったときの予備が小さく構えていることを実例をもとにお話しました。
特徴的なアカメガシワやムクロジの頂芽が実生として沢山見られる場所では、倒木という周りの変化に敏感に反応するパイオニア植物たちの役割に、自然の仕組みを感じて頂きました。
また実体顕微鏡を使ってでコブシの花芽やアオキの芽の中がどうなっているかをじっくりと見ていただきました。
また落葉樹という範疇からは少し外れますが、日本庭園のユズリハで資料の写真と同じ顔をあれかこれかと葉痕探しをして楽しみました。 このころには終了の時間が迫っており急ぎ足となって、いくつもの木々をとばして集合地点を目指すこととなりました。

観察した主な冬芽・葉痕
ハナミズキ・ハンノキ・ハナノキ・コブシ・シナマンサク・ヒメシャラ・ヤマグワ・ミツマタ・ロウバイ・タラノキ
カラスザンショウ・ドウダンツツジ・クズ・ムクロジ・ハゼノキ・クサギ・ミズキ・ユズリハ・トチノキ・トサミズキ
ヒュウガミズキ・アジサイ・アカメガシワなど

 

(レポート:上村、写真:高久)

第92回井の頭かんさつ会レポート

第92回井の頭かんさつ会レポート

「冬鳥探鳥会 鳥観の楽しみ方と身近な自然環境」

日時:2013年1月27日(日曜日)午前10:00~12:00
主催:井の頭かんさつ会
後援:東京都西部公園緑地事務所

案内
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
大原 正子
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
高久 晴子
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
大橋 博資
日置 日出男(森林インストラクター)
上村 肇 
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)

レポート

 寒さの厳しい今シーズンですが、かんさつ会当日は小春日和となり、冬のバードウォッチングには最高の条件でした。今回は参加者がとても多く、満員御礼でしたので、おおまかに親子班、初心者班、中級者班、上級者班の4班に分けて案内しました。
 御茶ノ水池では水辺の鳥を観察しながら、今シーズンカモが少ないこと、それが井の頭公園に限らず全国的な傾向であることを紹介しました。具体的にはカモの総数が少ない上に、今季はハシビロガモが姿を消してしまったこと(当初は渡ってきていた)、毎年飛来するオオバンが来ないこと、などです。その後、池のほとりのハンノキの花にヒガラが来ているのを観察し、行動と鳴き声について説明しました。その後、池のカワウをフィールドスコープで詳細かつ鮮明に観察、カワウの羽の色が黒一色ではないこと、眼の虹彩がエメラルドグリーンで宝石のように美しいのに参加者は感動していました。その後、シメが地上で行動しているのを確認し、その理由を説明、また池のほとりにはカワセミが来てくれたので、宝石のような羽色を参加者一同楽しむことができました。
 池を離れ、地上で餌を探すシロハラを観察、そこで餌を探す理由を説明しました。弁天池のほとりではシメがイロハモミジの種子を不器用に食べているのを観察、生きものが合理的・効率的に行動するようでいて、案外不器用さや個性があるのを観察して楽しみました。弁天池では木の陰にオシドリが隠れているのを紹介しました。
 弁天池のほとり、茶屋の周辺でお目当ての一つであるキクイタダキを確認。シジュウカラ、メジロ、コゲラなど他の種との「混群」の中で、大きさ、シルエット、動きを基に肉眼で見分け、双眼鏡で観察する方法を紹介しました。その後、御殿山から玉川上水にかけては少し低調でしたが、ヒガラやヤマガラを観察できました。
 小鳥の森に着くと、再び大きな混群に出会い、キクイタダキを目の前で観察することができました。キクイタダキは複数いた上に、比較的に低い位置で行動してくれたので、茶屋で今一つしっかり観察できなかった参加者もばっちり観察することができ、頭部の菊の花びらのような黄色い羽もしっかり確認できて感激していました。
 こうして充実した観察を楽しんでいる内にあっという間に2時間が経ちました。各班が小鳥の森の観察窓前に集合したところで、井の頭公園に多様な樹木があり、その実り、および樹木につながっている多様な昆虫がいるからこそ、今日のように多くの野鳥が観察できること、自然が豊かな山間部の実りが凶作だったり雪深く埋もれてしまった時に、井の頭公園のような平地の自然環境が野鳥たちの越冬を支えることを伝え、まとめとしました。

(レポート:高野、写真:上村)

第91回井の頭かんさつ会レポート

第91回井の頭かんさつ会レポート

 「冬の井の頭公園を探してみよう ~それぞれの冬越しウオッチング~

日時:2012年12月22日(土曜日)午後2:00~4:00
主催:井の頭かんさつ会
後援:東京都西部公園緑地事務所

佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
大橋 博資
日置 日出男(森林インストラクター)
高久 晴子
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
大原 正子
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員)
上村 肇
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)

参加者数25名(大人20名+子ども5名)

レポート

タイトルからもわかるように、今回は井の頭公園の冬にそれぞれの生物がどのように過ごしているかを参加者とともに探そうという内容で、はっきり申し上げまして地味なテーマに挑戦しました。したがって、参加者の方々の反応は芳しくはないと予想していました。実際、募集当初は、参加者人数は伸びなやんでいました。ところが、一週間前に掲示したポスターの効果か、前日までに定員を上回るほどとなったのです。
しかし、天に我々は見離されてしまいました。前日の夜から冷たい雨が降り始めてしまったのです。しかも予報は15時頃から晴れマークというなんとも微妙な状況(観察会は14時~16時)です。ほとんど用意していなかった雨用プログラムやキャンセルの連絡の対応等、それぞれのスタッフも天気予報に翻弄させられました。
結局、日本の優秀な天気予報ははずれることなく、参加者の数は上記のものとなりました。
いつもの雨用会場に移動して、重ねて行われた下見のときに出会った昆虫の写真をみながら、冬という季節を生き物を通して考えました。
成虫で越冬していたヒメコガネナガカメムシやカメノコテントウ、幼虫越冬のゴマダラチョウやアカボシゴマダラ、蛹越冬のモンクロシャチホコやオオミノガ、卵で過ごすオオカマキリ・ハラビロカマキリやジョロウグモ。また、あえて冬に成虫になって繁殖活動をするフユシャクの仲間のクロオビフユナミシャクのオスや蛾の仲間とは思えない羽が退化してしまったチャバネフユエダシャクのメスなどの生活についても説明がなされました。
一時間程の講義が終わると、窓からは日差しがのぞいてきました。
2班に分かれて、急きょ屋外の観察会をすることになりました。雨天会場で見た昆虫の60~70パーセントは、観ることができたように思えます。
1時間の講義の後の観察ですので、参加者の方々の理解力も早く、短時間の割には充実した観察会が行えたと思います。
天は我々を見離してなかったのかもしれません。我々に新たな観察会のスタイルをお教えてくれたのかもしれません。

(レポート:大橋、写真:高野)