第104回井の頭かんさつ会のレポート

第104回井の頭かんさつ会

「井の頭で天体観測 星の一生を観よう」

日時: 2013年12月21日(土曜日)17:00~19:00
主催: 井の頭かんさつ会
後援: 東京都西部公園緑地事務所

案内:
小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
大原 正子
高久 晴子
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
日置 日出男(森林インストラクター)
上村 肇
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)
佃 和夫(NACS-J自然観察指導員)

参加者:45名(大人35名+小人10名)

レポート

  街中に住んでいると、夜空を見上げない人が多いですが、井の頭公園でも多くの星々や星座が見られるのです。今回は皆さんにそのことを知って頂きたくて企画しました。どうせ見るのであれば、星の一生を見て、感じてもらいたいということで、今回のテーマは「井の頭で天体観測 星の一生を観よう」となりました。
夕方、ボート乗り場の前に集合するところから天体観測を始めました。受付を済ませた参加者を待っていたのは、西の空に向けられた2台の望遠鏡。覗くと、三日月が見えます。実は、「宵の明星」である金星は斜めから太陽の光が当たるので、望遠鏡で見ると三日月型をしているのです。
 暗くなるまでの前半は3部構成で、井の頭地区公会堂で星の話をしました。第一部は先ほど観察した金星や後半に観察する木星とガリレオ衛星を中心とした太陽系の話と星の一生の話しです。第二部は後半の野外観察の予習として、今の季節に見られる星座の探し方です。人間味溢れるギリシャ神話を織り交ぜ、楽しんでもらいました。第三部はミニ・プラネタリウムを使って星空散歩です。天井に映し出される満天の星に皆さん、釘付けでした。秋・冬・春・夏と1年の星座を楽しみました。
 後半はいよいよ野外で実際に星の観察です。井の頭地区公会堂を後にして、井の頭公園西園のグランドに向かいました。雲が出てきて心配でしたが、雲の合間から見られた星々を観察していきました。夏の大三角形、ペガススの四辺形、アンドロメダ座、カシオペア座、ペルセウス座、クジラ座と次々に見られました。そして、東の空にオリオンの雄姿が現れたところで、今回のテーマの1つである星の一生を見ていきます。まず、オリオン座の小三ツ星の中央にもやっと見えるのが、オリオン座の大星雲。星が誕生しているところです。視線を上に移すと、プレアデス星団。誕生したばかりの若い星の集まりで、双眼鏡で覗くと宝石箱をひっくり返したような美しさです。視線をオリオンの右肩に戻すと、1等星ペテルギウス、死にゆく星です。数か月以内に大爆発すると噂が立ち話題になった星です。
 クライマックスには東の空に木星が登場しました。天体望遠鏡で覗いてみると、縞模様がうっすら見られ、小さなガリレオ衛星が木星に寄り添うように一直線に並んでいました。
 今回、少し雲が出てしまいましたが、見ようとしていた星はほぼ全て観察できました。グランドは街中より暗いですが、それでも周囲のライトが明るく、観察には最適ではないです。そういった場所で多少雲が出ていても、星は観察できるのです。そして、星は一生を通して、様々な元素を作り上げ、それが大爆発によって宇宙のチリとなって、再び星ができるのです。その元素を使って地球上のあらゆるものが出来ています。人類を含め生きものは全て「星の子どもたち」なのです。そういった事をじっくり参加者の皆さんに感じてもらいました。一年の締めくくりに相応しい観察会でした。

(レポート:小町、写真:高野)

第103回井の頭かんさつ会のレポート

第103回井の頭かんさつ会

「秋の実り 公園の果実と種子を楽しむ」

日時:平成25年11月23日(土曜日)10:00~12:00
主催:井の頭かんさつ会
後援:東京都西部公園緑地事務所

案内:
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
大原 正子
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
日置 日出男(森林インストラクター)
大橋 博資
上村 肇
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)
佃 和夫(NACS-J自然観察指導員)

参加者:50名(大人33名+小人17名)

レポート

  かんさつ会で「空飛ぶ種」を飛ばしたい……そんな私のささやかな夢を実現するために、今回のかんさつ会を企画し、準備を進めました。
 秋は実りの季節。多様な果実と種が実り、それぞれ異なる機能や仕組みによって散布されます。今回のかんさつ会では、それを紹介しながら、転がしたり、飛ばしたり、味わったりして五感で楽しみました。
 今回は探鳥会の回並みに参加者が多かったので、声がきちんと届くよう、6班に分けました。
 ボート乗り場前のハナミズキの果実から観察を始め、ラクウショウの実を池に浮かべてみて水流散布の実験をしたり、イロハモミジやアキニレの種子を飛ばしてみたりしました。今回のテーマは見どころが多いので、各ポイントで少し話をしているだけで時間はどんどん過ぎていきます。ハンノキを過ぎて、スーパーボールのように跳ねるヤブランの種子で遊び、ルーペでヤブミョウガの種子の形の多様性を観察しました。
 サンシュユの果実を味わい、未熟なアオキの果実を観察し、すっかり古くなったコブシの種子やハゼノキの種子を観察し、御茶ノ水でスダジイを拾って味わう頃には1時間近くが経過していました。今回は三角広場までということで、経路が長かったので、なるべくポイントを絞らなければいけなかったのですが、観察を始め、話をし始めるとあっという間に時間は過ぎていきます。サワフタギ、ムラサキシキブ、サカキ、カナメモチ、イタヤカエデを観察し、弁天橋で何とか手が届くムクノキの実を味わい、日本庭園でコナラを拾う頃には残り30分!ここに来てようやく今回のテーマとコースを観察するには2時間では足りないことをはっきりと悟りました。
 その後は少し急ぎ足で三角広場を目指しました。サイカチの果実を拾い、マンリョウの果実を観察し、トネリコの種子を飛ばし、オニグルミの果実を拾い、三角広場にたどり着いたのは12時過ぎでした。まだまだ紹介したい実はたくさんあったのですが挨拶し、一旦終了しました。
 終了後すぐに、私がやりたかった余興をやりました。アルソミトラ マクロカルパ(インドネシア産)の、大きな翼のついた種を飛ばすというものです。この種はグライダーのようなつくりをしていて滑空します。一説にはステルス戦闘機のモデルになったともいわれます。下見で試験飛行した際には上昇気流に乗ってぐんぐん舞い上がり、ついには凧のように、大きなエノキの木に引っかかってしまいました。本番もそんな展開を期待しましたし、そこで拍手喝采を浴びるというのが、私のささやかな夢でした。しかし、この日は風が弱かったので、下見の時のように飛ぶまでには至りませんでした。それでも、よく滑空し、好評をいただくことはできました。


 昼過ぎには予報通り暖かくなりました。会終了後の親睦会にも多くの方が参加してくれ、自然観察談義に花が咲きました。またいつか、「飛ぶ種」アルソミトラを青空に飛ばしてみたいものです。

(レポート:高野、写真:上村)

第102回井の頭かんさつ会のレポート

第102回井の頭かんさつ会

「公園のキノコ ~ キノコという生きものを知ろう!」

日時:2013年10月20日(日曜日)午前10:00~12:00
主催:井の頭かんさつ会
後援:東京都西部公園緑地事務所

案内:
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
大橋 博資
小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
大原 正子
高久 晴子
日置 日出男(森林インストラクター)
上村 肇
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)
井口 七穂(井の頭バードリサーチ)

参加者:29名(大人25名、子ども4名)

レポート

  第98回「シダ植物」に続き、井の頭かんさつ会として初めてのテーマ「キノコ」を取り上げました。動物でも植物でもないキノコ。本当はどんな生きものなのか、公園のどんなところでどのように生きているのか、野外でじっくり観察してほしいと思っていたのですが、井の頭かんさつ会にしては珍しく雨! しかしその雨の中を子供さんも含めて多くの参加者が集まってくださいました。
 集合場所の御殿山雑木林から雨プログラムの会場まで、キノコがよく出る公園内の道(通称「キノコ道」!?)を通って、雨天会場である井の頭公会堂へ。まず皆さんのイメージする「キノコ」の絵を描いていただきました。その多くはやっぱり八百屋さんに並んでいるシイタケのような傘と柄だけのキノコでした。でも、これはキノコのごく一部、植物で言えば「花」の部分、つまり胞子を作る生殖器官です…ということから始まって、キノコがカビの仲間の菌類であり、その本体である「菌糸」が公園の雑木林の地下に無数のネットワークをはりめぐらしているであろうことや、キノコには大きく分けて腐生菌と菌根菌があり、前者は生態系の分解者として、後者は生態系の生産者である植物にとってなくてはならぬ共生者として、重要な役割を担っていることなどをお話ししました。
 その後にスタッフが採集したキノコ(注)を、ルーペも使って見てみました。傘にビロード状の毛があるもの、裏がシイタケのようなひだでなく細い穴状であるもの、胞子がべたべたしていて臭いもの、シイタケ型とは全く違う形のキノコ、つつくと埃をまき散らすように胞子が煙状に出るもの…、いろいろなキノコがありました。キノコの生き方の工夫や多様性も少し感じていただけたと思います。
  野外観察ができず大変残念でしたが、屋内での解説と採集キノコの観察という雨プログラムも、熱心な参加者の皆さんにより楽しい時間となりました。かんさつ会終了後の会場には、参加者の皆さんの熱気とキノコの臭いが色濃く残っていました…。
  公園を散歩するときにキノコが生えていたら、私たちの足元には目に見えないキノコの世界が広がっており、小さなキノコたちの働きが自然の中で大きな役割をもっていることを思い出していただけたら幸いです。

■当日観察できたキノコ
・菌根菌
  ・ハラタケ類:コテングタケモドキ(?-未同定)、アセタケの仲間2種(未同定)
・腐生菌
  ・ハラタケ類:ハナオチバタケ(落ち葉分解菌)、スエヒロタケ
  ・ヒダナシタケ類(肉の硬いもの):ツヤウチワタケ、ヒイロタケ、カワラタケ、ニクウスバタケ、マンネンタケ、
   (たぶん)コフキサルノコシカケ(以上は白色腐朽菌)、ホウロクタケ(褐色腐朽菌)
  ・腹菌類:エリマキツチグリ、ツチグリの仲間(幼菌、未同定)、ホコリタケ、カニノツメ、シラタマタケ
  ・チャワンタケ類:ツバキにつくココミケス属の微小盤菌類(微小チャワンタケ類)
・寄生菌
  ・冬虫夏草の仲間:オサムシタケ、ツクツクホウシタケ*、クモタケ*
        *かんさつ会当日ではなく、以前に採集した乾燥標本

注:キノコは東京都西部公園緑地事務所の許可を得て特別に採集しました。

 

 

(レポート:田中雅子、写真:上村肇) 

第101回井の頭かんさつ会のレポート

第101回井の頭かんさつ会

「恒例!渡りの夏鳥探鳥会 秋編

日時:2013年9月23日(月祝)9:00~11:00
主催:井の頭かんさつ会
後援:東京都西部公園緑地事務所

案内:
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
大原 正子
高久 晴子
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
大橋 博資
日置 日出男(森林インストラクター)
上村 肇
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)

参加者:56名(大人43名、子供13名)

レポート

 開催100回を達成し、次への新たな一歩となる101回目のかんさつ会は、8年前に私がリーダーとしてデビューした秋の渡りの探鳥会でした。やはり探鳥会の回は人気で、今回も満員御礼でキャンセル待ちが出ました。
暑い日が続く中、週間天気は良くなかったので心配でしたが、高曇りの好条件となりました。当日は若干のキャンセルがあったものの、56名もの参加者を集め、資料の説明をしてから、4班に分けてスタートしました。先に資料の説明をしたのは、探し方とどこを探すかをしっかりと伝えたかったからです。観察を始めてしまうと、なかなか細かい説明ができなくなってしまいがちです。資料もそのような編集にしました。また、夏鳥だけでなく留鳥など典型種の行動をよく観察することをすすめました。ハシブトガラス一つとっても、まだ知らないことは山ほどあります。普段の日常生活の中で、カラスやハトをじっくり観察する時間はまずないと思いますので、こういう機会にこそ、観察してみてほしいという趣旨です。
池に冬ガモが来ていればと思いましたが、カルガモとアオサギくらいでした。しかしながら、カルガモの面白い生態を観察できました。水辺に垂れているムクノキの果実を、水面からジャンプして採っていたのです。早速、典型種の知らない行動を観察することができました。
野口雨情碑の周辺で夏鳥のセンダイムシクイを見つけ、皆でしっかりと行動を観察できました。こちらはアオマツムシをはじめとする昆虫を捕食していました。採り損ねた昆虫が落下するのを追って、私たちの目の前まで下りてくる嬉しいハプニングもあり、盛り上がりました。
その後、弁財天の近くではキジバトがエゴノキの果実(種子?)を食べているのを確認。ヤマガラが有毒の果実を取り除いて種子を食べるのは有名ですが、キジバトがエゴノキの果実を食べる行動は最近知りました。これを参加者と一緒に観察することができました。
玉川上水では、ヤマザクラにつくモンクロシャチホコの幼虫を食べるツツドリを観察することができました。ヤマザクラがあって、それを食草とする昆虫がいて、それを季節性の餌として捕食する鳥類がいる、生き物のつながりを知ることのできる場面を、参加者と共にじっくりと観察できました。
その後、小鳥を捕食した後のツミを観察。生態系の頂点である猛禽類も観察できました。もう少しいろいろと探したいところでしたが、ここで時間になってしまい、終了としました。最後に簡単に鳥合わせをしました。他の班でも、エゾビタキなど私の班で観られなかった種類も観察し、充実した観察ができたようでした。
今回は食欲の秋にふさわしく?鳥類と食について、しっかりと観察することができた探鳥会でした。そして、その食を提供しているのは森なのだということを参加者と共に実感できました。

(レポート:高野、写真:上村)

第100回井の頭かんさつ会のレポート

第100回井の頭かんさつ会

「真夏の神秘体験! 夜の生き物ウォッチング」

日時:2013年8月10日(土曜日)午後6:30~8:30
主催:井の頭かんさつ会
後援:東京都西部公園緑地事務所

案内:
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
大原 正子
小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター) 
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
高久晴子
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
日置 日出男(森林インストラクター)
大橋 博資
上村 肇
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)
佃 和夫(NACS-J自然観察指導員)

協力:
保全活動班メンバーなど8名

参加者:71名(大人47、子供24)

レポート

 最高37.4℃、最低29℃、これがこの日の最高気温と最低気温。しかし最低気温が出たのは朝のことで、夕方6時半の御殿山は熱気と湿気でムンムン。そこへ総勢90名を超える人々がさらなる熱い期待を胸に集合しました。夜でなければ活動しない生き物たちが見られる、それも何故夜にだけ?の疑問も分かるかもしれない、という期待です。
下見で共通の観察内容を予め決めてはいましたが、夜の森には何が出てくるか分かりません。参加者だけでなく、スタッフたちもワクワクする夜の探検です。

参加者もスタッフも、メンバーの印として腕に「ネオンブレスレット」(コンサートなどでよく使用する光る腕輪)をつけて、6班に分かれて「夜の神秘体験」に出発しました。

まず集合場所では、最近市街地では殆ど聞くことの出来なくなったヒグラシの大合唱を楽しみ、弁天橋では虫を求めて上空を飛び交うアブラコウモリを肉眼で見ながら、彼らの出す超音波をバットディテクターでキャッチして確かめました。知識では知っていたコウモリの超音波を実際に感じてみた参加者たちは大喜びでした。
その頃には夜のとばりも降りて皆の期待はますます高まってきました。

*何といっても人気の的は夜の虫たちです。そのなかでも「セミの羽化」には子供も大人も感動しました。コース途中のそこここの柵や柵のロープ、樹木、草などにのそりのそりと登っていくセミの幼虫、殻から一生懸命に抜け出ようとしている羽化途中の姿、美しい薄緑色の羽を伸ばして乾くのを待っている生まれたばかりの成虫・・・井の頭公園の夏の夜はセミたちの密やかな営みにあふれていました。
また、90名もの目は、樹液に集まるカブトムシやコクワガタ、草むらに潜むサトクダマキモドキの幼虫、アオバハゴロモ等々……多くの虫たちが暗い森の中、樹木の上や草の陰で密やかな暮らしを営んでいるのを見つけ出しました。夜でも行列を作って卵を運んでいる、巣を持たないアミメアリの大群も人々の目を惹きました。

*花では、夜飛び回るスズメガをポリネーターとする為に夜咲くカラスウリ(野草園)、メマツヨイグサ(野球場予定地)、また、自家受粉もするオシロイバナ(ジブリ前)を観察しました。

*植物では、昼間とは違う姿になって就眠運動をする葉も観察しました。野草園のノササゲ、カラムシ、ヤブマメ、カタバミ、ジブリ前のネムノキ、ハギ等です。

*夜間に変形体から子実体へ劇的に変身する粘菌…残念ながら目立つ変形体がコース内にはこの日無く、写真と解説だけに留めましたが、参加者の関心を惹きました。
*その他、モグラ塚の穴掘りに挑戦した子供たちもいました。

終了時間には第二公園に全員集合し、さて、スタッフの挨拶を、という時でした。サプライズが起きました。取材に見えていた記者の胸になんと、カブトムシが突然止まったのです。本人は勿論、皆びっくり。記者の周りは興奮に包まれ、子供から大人まで押し合いへし合いの人垣が出来ました。最後まで熱気に溢れた夏の夜の観察会はこうして幕を閉じました。

第100回という節目にふさわしい大人気の観察会でした。じつは今回は120名を超える方々から参加申し込みをいただきました。井の頭かんさつ会「観察会班」12名がフル回転の6班体制としましたが、夜の観察会ということで、安全に関しては特別の配慮が必要です。「保全活動班」メンバーに協力を求め、子供たちへの目配りを担当してもらったものの、受け入れられる人数には限りがありました。キャンセル待ちをしていただいたにもかかわらず参加できなかった多くの方々には大変申し訳ない気持ちです。

今回、公園管理の皆様には、夜の見せ場のひとつであるカラスウリの開花を観察する為に草刈りをお待ちいただくなど、便宜を図っていただきました。新聞や地域放送局からの取材も3件ありました。こうして100回目を迎えられたことは、私たちにとって大きな感動です。支えて下さっている皆様、参加して下さる多くの皆様のお蔭であると心より感謝致します。

 

(レポート:大原、写真:高野)

第99回井の頭かんさつ会レポート

第99回井の頭かんさつ会
「井の頭池の自然と生き物」~かいぼり前の池を調べよう~

日時:2013年7月20日(土曜日)午前10:00~12:00
主催:井の頭かんさつ会
後援:東京都西部公園緑地事務所

案内:
上村 肇
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
大原 正子
小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
高久晴子
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
大橋 博資
日置 日出男(森林インストラクター)
佃 和夫(NACS-J自然観察指導員)

協力:
外来魚調査活動同志 7名

参加者:36名(大人22子供14)

レポート

いつものように1週間前に公園に案内ポスターを貼りだしてから、わずか3日後には定員オーバーとなる応募が殺到し急いで「満員御礼」の札を貼った今回でした。当日は猛暑も雨もない天気に恵まれ、一部欠席があったものの参加者36人(内子供14人)にスタッフを加えると50名を超え、更に時間とともに立ち寄りの見物人まで集まってきて大賑わいとなりました。

参加者はまず2グループ(☆池作業班と☆地上かんさつ班)に分かれ、以下のような盛りだくさんな体験プログラムを手順に沿って進めます。

*コイ捕獲:池作業班は水中作業のために先ずウェーダーを着け、追い込み用の囲い網とサデ網を持って池に入ります。数匹のコイを皆で遠巻きにし、徐々に輪を詰めて・・、さあ網をあげて見れば、あれ?コイはどこに行ったの?柳広場での空振りの後、再度池尻・ひょうたん平橋でトライし、やっと大きな緋鯉が一匹網に入ってくれました。

*浅瀬でガサガサ:池作業班が続いて行なうのはタモ網を使ったガサガサでの捕獲です。ブルーギルの稚魚に混じって、数は少ないもののギギの稚魚、ヌマチチブや在来魚であるモツゴ、テナガエビ、トウヨシノボリ、などが獲れました。
保護池であるひょうたん池ではサデ網などで外来魚であるブルーギルの稚魚の捕獲も行いました。ここにはザリガニやヌマチチブなどもいますが、本来いないはずの/いるべきでない生き物がいる現実に問題の深さを理解していただいたでしょうか。

*オダ網による外来魚捕獲とカメカゴの回収・カメ捕獲:地上かんさつ班はかんさつ会が継続実施している、オダ網によるブルーギル(主に稚魚)等の捕獲と、カメカゴによるアカミミガメの捕獲作業を見学しました。カゴにはクサガメ、スッポンも入りました。

*池作業の見学、捕獲生物の仕分けや展示作業等体験・観察:柳広場では捕獲生物に加え、かんさつ会メンバーが別途捕獲したブラックバスやブルーギルの成魚、アメリカザリガニなども一堂に展示されました。基本的には参加者を対象とした展示でしたが、一般の人たちも次々に立ち寄り、一緒に見学や質問に加わったりしたりして、まさにオープンなかんさつ会になったのは、主催者としてはうれしい誤算でした。

最後に時間外来生物を除く池の生物を水に戻すときのクサガメ、スッポンのユーモラスな「逃げ足」の速さには大人も子供も喜んで感嘆し、楽しく見送りました。

いつもとはちょっと毛色の違った今回のかんさつ会でしたが、まずまず満足していただいたように思いますが、いかがでしょうか?

 

(レポート:竹内、写真:高野)

第98回井の頭かんさつ会レポート

第98回井の頭かんさつ会

「シダ入門 ~ シダってどんな植物?」

日時:2013年6月23日(日曜日)午前10:00~12:00
主催:井の頭かんさつ会
後援:東京都西部公園緑地事務所

案内:
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
日置 日出男(森林インストラクター)
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
大原 正子
高久 晴子
大橋 博資
上村 肇
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)

参加者:24名(大人20名、子供4名)

レポート

今回は井の頭かんさつ会として初めてのテーマ、「シダ」に取り組んでみました。地味なテーマなので、実はどれだけ参加者が集まるかと心配もしていましたが、予想外の人数の参加者に驚くと同時に、嬉しくもありました。

植物観察というと花の咲く植物(種子植物)が主体ですが、自然界には花を咲かせない植物たちもあり、それらもまた自然の構成要員であり、生物多様性を形づくる一員であることを感じていただきたくて企画しました。植物や花の進化を考えるうえでもシダは重要な位置づけにある植物で、花の咲く植物とは違ったくらしぶりを観ることで、さらに身近な自然のオモシロ発見をしていただくこともねらいでした。

とはいえ、あまりなじみのない対象なので、プログラムを二部構成とし、最初にスライドと印刷資料でシダ植物と観察のポイントを解説、その後に公園で実際にシダを観察しました。シダは見慣れないとどれも同じように見えてしまいますが、観るべき特徴を覚えると違いがわかってきます。シダはその形の美しさと葉裏の胞子嚢群(ソーラス)の色や形がさまざまで、それらを観るだけでも楽しいものです。入門編なので、できるだけ特徴のある覚えやすいシダをひとつひとつ観て歩きました。

誰もがその名前には聞き覚えのあるシダの前では「これがノキシノブ!」、またゼンマイの前では「これがあの食べるゼンマイ!初めて見た」という声も…。中軸に三角形の翼のあるゲジゲジシダも覚えやすいシダです。ベニシダの葉裏の美しい赤い胞子嚢群(ソーラス)を観察した時は、これは何の色?となり、包膜をはがしてみると、中は赤くなく、包膜が赤いことがわかりました。また、ソーラスは胞子を飛ばすためにとても周到な構造を持っていますが、実体顕微鏡で乾燥してくるとはじける胞子嚢も観察しました。

当日、実際に観察できたシダは約15種で、中には中級編のシダもあり、またイヌワラビのようにあまり特徴のないシダもあり、ちょっと難しかったかもしれません。また最初に室内で解説に時間をとった分、公園内の観察が駆け足になってしまったきらいがあり、反省点でもありますが、シダ植物の形のいろいろ、ソーラスのいろいろ、生育環境の違いなどが少しわかり、シダ植物観察の楽しさを味わっていただけたと思います。

これを機会に、いわゆる草花や木々のほかにも多種多様な生きものが自然界を形作っており、それぞれが長い進化の歴史とバランスのなかにいることにも思いを馳せていただけたらと思います。

(レポート:田中雅子、写真:高野)

第97回井の頭かんさつ会レポート

第97回井の頭かんさつ会レポート

「初夏の昆虫」をさがしてみよう!

日時: 2013年5月25日(土)午前10:00~12:00
場所: 井の頭公園
集合: 午前9時45分 井の頭池ボート乗り場前
主催: 井の頭かんさつ会
後援: 東京都西部公園緑地事務所

案内:
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
大橋 博資
高久 晴子
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
大原 正子
日置 日出男(森林インストラクター)
上村 肇
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)

参加者:33名(大人19名,子供14名) 

レポート

 本格的な夏が訪れるちょっと前のこの時期に、『どんな昆虫』が、『どのような姿』で、『どんな所』にいるのかを参加者のみなさんの眼も借りてさがしました。
 今回は、参加者の大半が幼児または子供の親子の方々でしたので、井の頭かんさつ会としては、異例の子供班三つと大人班一つという体制で観察会をスタートさせました。

 大人班では、それぞれの昆虫の幼虫や成虫の食性や環境を通して、昆虫たちの生活スタイルの不思議や感嘆を発見でき、次の季節への観察眼が養われたように思われます。
 一方子供班は、スタッフの案内で普段は目に付きにくい場所の昆虫を実際に目にすることで、歓声があがりました。なかでもラッキーだったのは、オオヤマトンボの羽化の真っ最中を観ることができたことです。一見するとあの有名なオニヤンマにも似ているオオヤマトンボは、大きさも体の色彩も迫力満点でした。

 また、アブラムシが大量発生している梅の木では、テントウムシの蛹・幼虫・成虫がたくさん見られました。

 他にも樹液に集まる昆虫や小さな小さなゾウムシや働き者のニホンミツバチなど、多数の昆虫を観ることができました。明るい場所、木々が茂っているやや暗い場所、原っぱのように開けた場所など、それぞれの環境によってそれぞれの生活をしていることを少しは伝わったのではないかと思います。ただ、子供班にとってはちょっと移動距離が長かったかもしれませんね。

 

(レポート:大橋、写真:上村・大原)

第96回井の頭かんさつ会レポート

第96回井の頭かんさつ会レポート

恒例!春の夏鳥探鳥会 少し早起きして、井の頭の森で宝探し

日時:平成25年5月3日(金祝)午前7:00~9:00
場所: 井の頭公園
主催: 井の頭かんさつ会
後援: 東京都西部公園緑地事務所

案内:
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
大原 正子
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
高久 晴子
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
大橋 博資
日置 日出男(森林インストラクター)
上村 肇
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)

参加者:58名(大人54名,子供4名) 

レポート

 第96回井の頭かんさつ会「恒例!春の夏鳥探鳥会」は、昨年に続いて早朝の開催としました。やはり早い時間の方が鳥のさえずりが多く、観察に有利だからです。通常のかんさつ会の時間はさえずりが少なくなる時間帯なのです。
探鳥会の回はやはり人気です。集合6時45分という早朝の開催にも関わらず、満員御礼でした。当日は天気は申し分なかったものの気温が低く、久しぶりにフリースを着て行ってちょうど良かったほどでした。低温は昆虫の活動にとってマイナスなので、それを餌とする夏鳥も不活発なことが懸念されましたが、集合場所の井の頭自然文化園分園周辺では開始前からエゾムシクイがさえずり、近くではセンダイムシクイもさえずり、アオゲラの声も聞こえました。夏鳥がいるだけでなく、さえずってくれていて良かった.…….と胸を撫で下ろしました。
参加者を4班に分けて出発し、私は20人ほどの参加者を案内しました。確認したところ、水辺の鳥を観たいという方はほぼゼロだったので、すぐに御殿山の雑木林へ直行し、夏鳥を探しました。しかし、開催前には聴こえていたムシクイ類のさえずりが消え、留鳥の声さえもまばらで、イヤな予感がしました。折角大勢の方に早起きして来てもらったことですし、私は必死で耳を澄まし、キョロキョロして鳥を探しました。
御殿山の奥まで来てやっと遠くのキビタキの声を確認しましたが、キビタキがいたのは吉祥寺通りを挟んで井の頭自然文化園内だったので、交通整理に気を使いながら、参加者に声のみ確認してもらって、すぐに森へ戻りました。その後、ようやくオオルリのくぜり(完全なさえずりに至らないつぶやきのような歌)に気づき、姿を探したものの決定的に捉えることはできず、小鳥の森へ。ここでやっとクヌギの高い梢にオオルリの姿を見つけることができましたが、自分は観ることができても参加者の多くは見ることができず。その高い位置のオオルリをねばって観てもらうことに時間を使うのは賢明ではないと考えて、松本訓導碑周辺に移動し、あらためて夏鳥を探し直しました。
少し気温が上がってきたからか、キビタキやオオルリのくぜりは次第にさえずりっぽくなってきて、センダイムシクイの声も聞こえて、ほどなくオオルリの姿を何とか捉えることができ、スコープに入れた姿を参加者に観ていただくことができました。
その後、まとめとして身近な井の頭の森の自然環境の大切さについてお話をし、終了しました。今回は終了が9時台だったので、時間と熱意と体力のある方はそのまま延長戦へ。ねばった方はオオルリに加えてキビタキもしっかりと観ることができました。気温が低かったので、夏鳥探しの最大の手がかりであるさえずりが少なかったですが、タイミング的には季節移動の波に当たり、数種の夏鳥を観察することができました。

今回は天気は申し分なかったのですが、低温に参りました。時間が早ければ早いほど、
さえずりが多くて観察に有利なため、会の開始を早朝に設定したのですが、季節外れの低温がネックになってしまいました。皮肉なことに、会が終わった頃に気温が上がってきて、さえずりが増えてきました。終了の頃に想定していた気温に上がってきたのです。また、今シーズンは樹木の展葉が早く、例年であればゴールデンウィークの時期は未だ野鳥が観察しやすい条件のはずが、葉がすっかり茂りきっていて、観察の難易度が高かったです。もう少し参加者に観てもらいたかった、聴いてもらいたかったのですが、御殿山から小鳥の森にかけての雑木林を初めて訪れた方も少なくなく、朝のさわやかな森歩きに加えて野鳥観察ができて大満足という参加者も少なからずいて、やりがいを感じました。

(レポート:高野、写真:上村)

第95回井の頭かんさつ会レポート

第95回井の頭かんさつ会レポート

「井の頭公園花めぐり」 ~花の進化を観よう~

日時: 2013年4月21日(日)午前10:00~12:00
集合: 午前9時45分 井の頭池ボート乗り場前
主催:井の頭かんさつ会
後援:東京都西部公園緑地事務所

案内
小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
大原 正子
高久 晴子
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
日置 日出男(森林インストラクター)
大橋 博資
上村 肇
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)
佃 和夫(NACS-J自然観察指導員)

参加者:12名(大人12名)

レポート

 井の頭かんさつ会にとっては珍しく朝からの雨となり、残念ながらキャンセルも多かったですが、逆に来て頂いたのは、非常に熱心な方々ばかりでした。雨の中来て頂いた参加者のために井の頭地区公会堂で、内容の濃い室内プログラムを実施しました。

 プログラムとして、花の進化についての話しと実際に花の観察との二部構成で行いました。第一部の花の進化の話しはパワーポイントを使って講演形式で解説を行いました。まずは、花の各パーツについて説明を行い、植物がシダから裸子植物へ、そして被子植物へいかに進化したかを参加者のみなさんと見ていきました。そして花がなぜ進化したのかを考えながら、花の目指す方向を探りました。モクレンの仲間など原始的な花から、キクやイネやランの仲間など進化した花への構造の変化を見ていくと、花は効率よく子孫を増やすことができる形になってきているのが分かります。昆虫と花との共進化では、カーペンタービーしか花粉を出すことができないオルフィウムという花や口が長いスズメガの仲間でしか蜜が吸えないランの仲間の話など、写真を交えて解説を行いました。また、ランの仲間があの手この手で、昆虫に花粉塊を付けて運ばせる仕組みには、参加者から驚きの声が上がりました。

 第二部はスタッフが雨の中集めてきた花を使って実際の観察です。各テーブルにはまるで生け花教室のようにいろいろな花が置かれていました。ツツジ、タンポポ、ハルジオン、ヤエヤマブキ、スミレ、ツルニチチソウ、コナラ、シロヤマブキ、珍しい花ではスタッフの庭にあったカラスビシャクなどもありました。それらを一つずつ順番に解説を行いながら、観察していきました。分解して、虫メガネで観察したり、顕微鏡をのぞいたりと、その度に面白い発見があり、参加者とスタッフが一緒になって盛り上がりました。

今回は人数が少なかったので、スタッフが付きっ切りでアドバイスできたためか、参加者の方から充実した観察会であったとのコメントを頂きました。振り返ると、今回のような時間をかけてじっくりと観察することを、野外で大人数で実施することは非常に難しいです。企画者としては、本当にやりたかったことが、雨ゆえに実施できたと思っています。

(レポート:小町、写真:上村)