第102回井の頭かんさつ会のレポート

第102回井の頭かんさつ会

「公園のキノコ ~ キノコという生きものを知ろう!」

日時:2013年10月20日(日曜日)午前10:00~12:00
主催:井の頭かんさつ会
後援:東京都西部公園緑地事務所

案内:
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
大橋 博資
小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
大原 正子
高久 晴子
日置 日出男(森林インストラクター)
上村 肇
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)
井口 七穂(井の頭バードリサーチ)

参加者:29名(大人25名、子ども4名)

レポート

  第98回「シダ植物」に続き、井の頭かんさつ会として初めてのテーマ「キノコ」を取り上げました。動物でも植物でもないキノコ。本当はどんな生きものなのか、公園のどんなところでどのように生きているのか、野外でじっくり観察してほしいと思っていたのですが、井の頭かんさつ会にしては珍しく雨! しかしその雨の中を子供さんも含めて多くの参加者が集まってくださいました。
 集合場所の御殿山雑木林から雨プログラムの会場まで、キノコがよく出る公園内の道(通称「キノコ道」!?)を通って、雨天会場である井の頭公会堂へ。まず皆さんのイメージする「キノコ」の絵を描いていただきました。その多くはやっぱり八百屋さんに並んでいるシイタケのような傘と柄だけのキノコでした。でも、これはキノコのごく一部、植物で言えば「花」の部分、つまり胞子を作る生殖器官です…ということから始まって、キノコがカビの仲間の菌類であり、その本体である「菌糸」が公園の雑木林の地下に無数のネットワークをはりめぐらしているであろうことや、キノコには大きく分けて腐生菌と菌根菌があり、前者は生態系の分解者として、後者は生態系の生産者である植物にとってなくてはならぬ共生者として、重要な役割を担っていることなどをお話ししました。
 その後にスタッフが採集したキノコ(注)を、ルーペも使って見てみました。傘にビロード状の毛があるもの、裏がシイタケのようなひだでなく細い穴状であるもの、胞子がべたべたしていて臭いもの、シイタケ型とは全く違う形のキノコ、つつくと埃をまき散らすように胞子が煙状に出るもの…、いろいろなキノコがありました。キノコの生き方の工夫や多様性も少し感じていただけたと思います。
  野外観察ができず大変残念でしたが、屋内での解説と採集キノコの観察という雨プログラムも、熱心な参加者の皆さんにより楽しい時間となりました。かんさつ会終了後の会場には、参加者の皆さんの熱気とキノコの臭いが色濃く残っていました…。
  公園を散歩するときにキノコが生えていたら、私たちの足元には目に見えないキノコの世界が広がっており、小さなキノコたちの働きが自然の中で大きな役割をもっていることを思い出していただけたら幸いです。

■当日観察できたキノコ
・菌根菌
  ・ハラタケ類:コテングタケモドキ(?-未同定)、アセタケの仲間2種(未同定)
・腐生菌
  ・ハラタケ類:ハナオチバタケ(落ち葉分解菌)、スエヒロタケ
  ・ヒダナシタケ類(肉の硬いもの):ツヤウチワタケ、ヒイロタケ、カワラタケ、ニクウスバタケ、マンネンタケ、
   (たぶん)コフキサルノコシカケ(以上は白色腐朽菌)、ホウロクタケ(褐色腐朽菌)
  ・腹菌類:エリマキツチグリ、ツチグリの仲間(幼菌、未同定)、ホコリタケ、カニノツメ、シラタマタケ
  ・チャワンタケ類:ツバキにつくココミケス属の微小盤菌類(微小チャワンタケ類)
・寄生菌
  ・冬虫夏草の仲間:オサムシタケ、ツクツクホウシタケ*、クモタケ*
        *かんさつ会当日ではなく、以前に採集した乾燥標本

注:キノコは東京都西部公園緑地事務所の許可を得て特別に採集しました。

 

 

(レポート:田中雅子、写真:上村肇)