第100回井の頭かんさつ会のレポート

第100回井の頭かんさつ会

「真夏の神秘体験! 夜の生き物ウォッチング」

日時:2013年8月10日(土曜日)午後6:30~8:30
主催:井の頭かんさつ会
後援:東京都西部公園緑地事務所

案内:
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
大原 正子
小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター) 
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
高久晴子
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
日置 日出男(森林インストラクター)
大橋 博資
上村 肇
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)
佃 和夫(NACS-J自然観察指導員)

協力:
保全活動班メンバーなど8名

参加者:71名(大人47、子供24)

レポート

 最高37.4℃、最低29℃、これがこの日の最高気温と最低気温。しかし最低気温が出たのは朝のことで、夕方6時半の御殿山は熱気と湿気でムンムン。そこへ総勢90名を超える人々がさらなる熱い期待を胸に集合しました。夜でなければ活動しない生き物たちが見られる、それも何故夜にだけ?の疑問も分かるかもしれない、という期待です。
下見で共通の観察内容を予め決めてはいましたが、夜の森には何が出てくるか分かりません。参加者だけでなく、スタッフたちもワクワクする夜の探検です。

参加者もスタッフも、メンバーの印として腕に「ネオンブレスレット」(コンサートなどでよく使用する光る腕輪)をつけて、6班に分かれて「夜の神秘体験」に出発しました。

まず集合場所では、最近市街地では殆ど聞くことの出来なくなったヒグラシの大合唱を楽しみ、弁天橋では虫を求めて上空を飛び交うアブラコウモリを肉眼で見ながら、彼らの出す超音波をバットディテクターでキャッチして確かめました。知識では知っていたコウモリの超音波を実際に感じてみた参加者たちは大喜びでした。
その頃には夜のとばりも降りて皆の期待はますます高まってきました。

*何といっても人気の的は夜の虫たちです。そのなかでも「セミの羽化」には子供も大人も感動しました。コース途中のそこここの柵や柵のロープ、樹木、草などにのそりのそりと登っていくセミの幼虫、殻から一生懸命に抜け出ようとしている羽化途中の姿、美しい薄緑色の羽を伸ばして乾くのを待っている生まれたばかりの成虫・・・井の頭公園の夏の夜はセミたちの密やかな営みにあふれていました。
また、90名もの目は、樹液に集まるカブトムシやコクワガタ、草むらに潜むサトクダマキモドキの幼虫、アオバハゴロモ等々……多くの虫たちが暗い森の中、樹木の上や草の陰で密やかな暮らしを営んでいるのを見つけ出しました。夜でも行列を作って卵を運んでいる、巣を持たないアミメアリの大群も人々の目を惹きました。

*花では、夜飛び回るスズメガをポリネーターとする為に夜咲くカラスウリ(野草園)、メマツヨイグサ(野球場予定地)、また、自家受粉もするオシロイバナ(ジブリ前)を観察しました。

*植物では、昼間とは違う姿になって就眠運動をする葉も観察しました。野草園のノササゲ、カラムシ、ヤブマメ、カタバミ、ジブリ前のネムノキ、ハギ等です。

*夜間に変形体から子実体へ劇的に変身する粘菌…残念ながら目立つ変形体がコース内にはこの日無く、写真と解説だけに留めましたが、参加者の関心を惹きました。
*その他、モグラ塚の穴掘りに挑戦した子供たちもいました。

終了時間には第二公園に全員集合し、さて、スタッフの挨拶を、という時でした。サプライズが起きました。取材に見えていた記者の胸になんと、カブトムシが突然止まったのです。本人は勿論、皆びっくり。記者の周りは興奮に包まれ、子供から大人まで押し合いへし合いの人垣が出来ました。最後まで熱気に溢れた夏の夜の観察会はこうして幕を閉じました。

第100回という節目にふさわしい大人気の観察会でした。じつは今回は120名を超える方々から参加申し込みをいただきました。井の頭かんさつ会「観察会班」12名がフル回転の6班体制としましたが、夜の観察会ということで、安全に関しては特別の配慮が必要です。「保全活動班」メンバーに協力を求め、子供たちへの目配りを担当してもらったものの、受け入れられる人数には限りがありました。キャンセル待ちをしていただいたにもかかわらず参加できなかった多くの方々には大変申し訳ない気持ちです。

今回、公園管理の皆様には、夜の見せ場のひとつであるカラスウリの開花を観察する為に草刈りをお待ちいただくなど、便宜を図っていただきました。新聞や地域放送局からの取材も3件ありました。こうして100回目を迎えられたことは、私たちにとって大きな感動です。支えて下さっている皆様、参加して下さる多くの皆様のお蔭であると心より感謝致します。

 

(レポート:大原、写真:高野)