第110回井の頭かんさつ会レポート

第110回井の頭かんさつ会

「クモ~のぞいてみよう不思議なクモの世界~」

2014年6月29日(日)10:00~12:00

主催:井の頭かんさつ会
後援:東京都西部公園緑地事務所

案内:
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクタ―)
大原 正子
高久 晴子
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
日置 日出男(森林インストラクター)
大橋 博資
上村 肇
佃 和夫(NACS-J自然観察指導員)
村上 健太(NACS-J自然観察指導員)

参加者:25名(大人19名+子ども6名)

レポート

 夜明け前後の強い雨で心配した天気が、時間と共に徐々に小降りになり、観察会の始まる頃にはすっかり止んで、青空に太陽まで出るほどの変わりよう、絶好の観察日和となりました。
 初企画のうえ小さく目立たないクモが対象ということで、募集人数を絞ったのですが、案内を出して間もなく応募が集まり、早々に満員御礼を出すことになりました。
 初めに全員に“クモとはどんな生き物?”という観点から昆虫との違い、オスメスの見分け方、糸と網、クモの一生など、基本的なポイントを絵図も使って簡単に解説しました。続いて子供と保護者の「子供班」(1)、大人中心の「大人班」(2)と全3班に分かれて観察を行いました。
 雨の後の晴天という状況だからでしょうか、それとも参加の皆さんの熱心さのおかげでしょうか、何度か行った事前の下見より短時間で多くのクモ(私の班では25種超)が登場し、最後は予定コースを一部割愛せざるを得ないほどでした。
コースは七井橋のズグロオニグモと毎日張り替えるリサイクルの網、池の上に張られたアシナガグモと水平の網など円網を作るクモからスタートしました。弁財天の近くではトタテグモの巣の扉やクモタケ、ジグモの巣から、クモの生活の一端を垣間見て話題が盛り上がりました。
 ほたる橋に向かう道の途中では、タナグモ類(クサグモ、コクサグモ)やヒメグモ類(ヒメグモ、オオヒメグモ)など円網とは違う網を張るクモや、ハエトリグモ類やカニグモなど、網を張らないクモも数種類登場、卵のうの中に残っていた生まれたてのオオハエトリの子グモも観察できました。
 小鳥の森の周りでは、バルー二ングで分散してきたのでしょう、まだ小さいジョロウグモの幼体があちらこちらに小さいながらも親と同じで、三重網を張っています。網に手を近づけると一人前?に揺らして威嚇のポーズをします。コガネグモの仲間は成体になっても網を揺らしますが、近縁のジョロウグモは幼体の時期だけ同じ行動をとるらしく、これがなかなか受けていました。
 他にも座布団のような巣から受信糸を出しているヒラタグモや、おしりに卵のうを抱えて守るコモリグモ、樹皮や石垣の隙間に漏斗状の住居を作り獲物を待つミヤグモ等、それぞれユニークな姿や生態の一端を垣間見ることができました。
  クモという一般的には人気のない生き物をテーマにした初の企画でしたが、常連の参加者も多いおかげでしょうか、早朝の雨にも関わらず欠員もなく、また天気にも恵まれ無事終了できました。今回の企画を通じて井の頭公園のクモの種類や生態をある程度把握でき、お陰様で有意義なかんさつ会になったと感じています。
 なお解散後の午後には再び雷を伴う豪雨に変わり、クモのかんさつ会は梅雨の合間の不思議な一時ということで幕を閉じました。

(レポート:竹内、写真:高野)

第109回井の頭かんさつ会レポート

第109回井の頭かんさつ会レポート

  「春の野鳥観察会」

日時: 平成26年5月10日(土曜日)8:00~10:00

レポート

60名近い参加者を迎え、春恒例の野鳥観察会を開催しました。昨年は早朝7時スタートにしたところ、気温が低かったためか鳥たちの行動が鈍かったので、今年は8時スタートにしました。 多くの参加者のお目当ては夏鳥でしたが、今季井の頭公園ではゴイサギが繁殖しているなど、見どころが多い会になりました。
双眼鏡の使い方をおさらいし、樹上のゴイサギを観察したあとは、繁殖コロニーを観察しました。ゴイサギは年間をとおして見られますが、繁殖は初めてのことです。なぜ今季は井の頭公園で繁殖しているのか。迷惑だと考える人。あたたかく見守ろうと考える人。管理者やボランティアの対応など、人と生き物の共生を考えるための格好の教材となりました。
夏鳥であるキビタキのさえずりは5カ所で確認。センダイムシクイのさえずりもしました。ただ、声はすれども姿は見えず、初心者にはなかなか手ごわい鳥観になりました。私が確認できても、同じ鳥を参加者が確認できるとは限らない…探鳥会の難しい課題です。でも、今日が初参加で初めてのバードウォッチングという友人がしっかりとキビタキの姿を捉えていました。いわゆるビギナーズラックでしょうか。
リピーターの方々に加え、公園で声をかけた人や、友人も多く参加してくれて、皆で一所懸命鳥を探しました。10時でいったんまとめをして、その後11時過ぎまで延長戦。これに参加した20名ほどの方々は10時までに見られなかったアオゲラなども観られました。
目立つものばかりを追うのではなく、身の回りの生き物もすべてじっくりと観察しよう、という考え方を今回も実践できたと思います。バードウォッチングをとおして、当地の自然環境の大切さもお伝えすることができました。

(レポート:高野)

第108回井の頭かんさつ会レポート

第108回井の頭かんさつ会

「井の頭公園 花を愛でる観察会」 ~花と生きもの~

日時: 2014年4月13日(日曜日)午前10:00~12:00
主催: 井の頭かんさつ会
後援: 東京都西部公園緑地事務所

案内
小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
佃 和夫(NACS-J自然観察指導員)
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
大原 正子
高久 晴子
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
日置 日出男(森林インストラクター)
大橋 博資
上村 肇
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)

参加者:40名(大人29名、子ども11名)

レポート

 週間予報では雨マークが付いていましたが、井の頭かんさつ会の晴れパワーは健在で、当日、春らしい穏やかな陽気の下、花を愛でる観察会を行いました。お花見の喧騒も終わり、井の頭公園はちょっと落ち着いてきましたが、花はソメイヨシノだけではなく、たくさんの花が咲き誇っています。

今回は、特に花と生きものの繋がりに焦点を当ててみました。花粉を媒介する生きものとして、甲虫、ハナアブ・ハエ、ハナバチ、チョウ、鳥などいます。花はどの生きものに来てもらいたいか焦点を当てて、色や形など様々に進化してきました。特に優秀な花粉媒介者であるハナバチに来てもらいたいために複雑な構造に進化した花も数多くあります。

 今回は大人2班、子ども2班の合計4班体制でスタートです。各班とも工夫をこらした解説で花を観察していきました。最初に人気だった花は、ツルニチニチソウでした。花の中を調べてみると、毛が一杯で、非常に複雑な構造をしています。顕微鏡を覗いた参加者から驚きの声が上がります。ツバキやアオキ、イロハモミジの花々もとても興味深い形状をしています。ムラサキケマンの花の仕組みも巧妙です。花粉媒介する虫が口を花に突っ込むとしっかり花粉が虫に付くようになっています。参加者の皆さんも実際に触って、観察して、花の仕組みが分かると、とても感動している様子でした。班によっては、サツキやシャガ、アセビなども観察をしました。

 野草園を過ぎて、雑木林に出ると、新緑が広がっていました。新緑を楽しみながら、タチツボスミレやウラシマソウの群生地をご案内し、西園のグランドの入り口付近で解散となりました。解散後、スタッフと参加者の有志で一緒に野外懇親会行いました。多くの方が参加され、和気藹々と過ごすことができました。

 

(レポート:小町、写真:高野)

第107回井の頭かんさつ会レポート

第107回井の頭かんさつ会

「あなたはどんな時に春を感じますか」~井の頭公園で春を探そう~

日時: 2014年3月15日(土曜日)午前10:00~12:00
主催: 井の頭かんさつ会
後援: 東京都西部公園緑地事務所

案内
大橋 博資
日置 日出男(森林インストラクター)
高久 晴子
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
大原 正子
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
上村 肇
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)
佃 和夫(NACS-J自然観察指導員)

参加者: 39名(大人27名、子供12名)

レポート

 今回のテーマである「春探し」は、天気や気温によって大きな影響があり、当日の天候が気掛かりでしたが、幸い快晴で気温も集合した10時頃は12度と例年並でした。
 いつものように各班にに分かれて、出発です。
 子供班は、あらかじめスタッフが用意したゲーム形式での春探しを行い、大人と同じ行程を楽しく学べたようです。
 一方大人班は、まず今回のタイトルとなった「あなたはどんな時に春を感じますか」の問いに答えていただきました。
 オオイヌノフグリやホトケノザといった野草に春を感じる方、梅やジンチョウゲなどの樹木の開花に春を感じる方、はたまた夜空の変化や日照時間の変化といった科学的なご意見、花粉症という近年の春の季語になりそうな理由の方もいらっしゃいました。
 参加者のみなさんと見つけることができた春は、予想以上にたくさんあったと思われます。
 中でも、トビモンオオエダシャクとの出会いは、大きな意味があったと言えるかもしれません。トビモンオオエダシャクはスプリングエフェメラルと言われる、春の一時期に出現してわずかの時間で姿を消してしまう種類のガの一つだったからです。
 また、ツバキキンカクチャワンタケというキノコも観察することができました。このキノコは、胞子をツバキの開花のころに合わせて放ち、ツバキの花が役目を終え地面に落ちるとその栄養分を使って成長するという生活をしているとのことで、普段なかなか見ることのできない春をご紹介できたと思います。
 春という季節は、生き物にとって厳しい冬と背中合わせです。植物・昆虫・鳥類などが井の頭公園の自然の中でつながりを持って生きていることをお伝えできたと思う春の日でした。

(レポート:大橋)

第106回井の頭かんさつ会レポート

第106回井の頭かんさつ会

  「池の中かんさつ会」

日時: 平成26年2月23日(日曜日)10:00~12:00

レポート

2014年2月のかんさつ会のテーマはもちろん「水のない池」です。かいぼりによって水を抜いている状態の池で自然観察するというまれな機会を活かさない手はありません。普段やろうと思ってもできない状況なのです。
 満員御礼で迎えたかんさつ会の内容は、100年実行委員会主催で開催した観察会と同コース・内容で進めました。かいぼりステーションでは、かいぼりの概要や捕獲された生き物を上村が解説しました。その後参加者を4班に分けてお茶の水方面へ移動しながら観察をスタートしました。
 池の底に降りたところで、分かれていた班を合流し、総勢70名の大集合写真を撮影しました。稀有な機会ですから、集合写真を撮って参加者に送り、記念にしていただきます。参加者に写真を提供するのは初の試みでした。
 集合写真撮影後、再び4斑に分かれて池の底での観察を再開しました。通常池の中にあって目にすることのない設備や遺構などを観察し、またハンノキとほかの樹木の水中への根の伸ばし方の違いなどを観察しながらシダレヤナギ方面へ移動しました。シダレヤナギの先で池から上がり、七井橋の上から生き物の足跡を観察し、狛江橋で弁天池の水が抜けなかった理由や、堰を観察し、池尻へ。ひょうたん池に到着したところで時間となりました。閉会のまとめでは、次回のかいぼりにも言及し、官民協働で取り組むべき活動であることを強調し、協力を呼びかけました。
池の底を歩きたいのに、機会を逃して参加できていなかった方々の受け皿になることができ、開催した意義がありました。参加者には満足していただきましたし、次回のかいぼりでは活動に参加したいという方も多く、将来の活動を充実させるきっかけにもなったと思います。

 

(レポート:高野)

第105回井の頭かんさつ会レポート

第105回井の頭かんさつ会

「冬の野鳥観察会」

日時: 平成26年1月12日日曜日9:00~11:00

レポート

1月の井の頭かんさつ会恒例の探鳥会を開催しました。今までは「冬鳥探鳥会」のように、お目当ての冬鳥を探すことがテーマだったのですが、今回のテーマは「冬の野鳥観察会」。留鳥だって、知っているようで知らないことがたくさん。行動をじっくりと観察することで、いろいろ発見しようという趣旨にしました。
 参加者を4班に分けてかんさつ会を開始しました。池の周囲はかいぼりの準備でネットが張られ、いつもと違った景観。子供の視線では池が見えませんので、まずは七井橋からじっくりと池を観察しました。早速、行動を観察できたのはカルガモです。雌雄で首を上げ下げし、その後交尾。交尾の後は水浴びし、羽ばたいて水を切ります。知っているつもりのカルガモの、見たことがない、あるいは頻繁には見ない行動です。
その後、野口雨情碑の裏で冬鳥のシロハラとツグミが落ち葉をひっくり返して、落ちた実を食べる行動を観察できました。食べていたのはエノキの実。食べていた場所の近くに、灰色で裂けないざらざらした樹皮が見えます。実際に鳥が食べていたエノキの実を確認し、自分たちも拾ってみました。そして、エノキの木の見分け方をレクチャーしました。
 エナガの声を追っていると、シジュウカラがハゼノキの実を食べている場面を観察できました。エナガはシジュウカラと混群を形成していましたが、ハゼノキの実は口に合わないようで、近くに来ますが食べませんでした。私は井の頭公園で8年半継続観察を続けていますが、シジュウカラがハゼノキの実を食べるという事実は、この日初めて知りました。これがじっくり観察の醍醐味です。そしてこれは発見の楽しみだけではなく、樹木と鳥類の切っても切れない関係と大切さを知ることでもあります。
 じっくり観察は時間がかかります。今回も時間が足りなくなってしまいました。103回に続いて、2時間の設定を失敗してしまいましたが、最後のまとめではフクロウの仲間、オオコノハズクの前日に拾われた羽を参加者に回し、井の頭産鳥類目録に140種目が記録されたことと共に、身近に残された自然環境の大切さを伝えました。
前シーズンに比べると冬鳥が少ないフィールドですが、留鳥でも冬鳥でもなんでも、じっくりと行動を観察しようという趣旨は正解だったと思います。これからも、目立つものばかり追うのではなく、当たり前だと思っている対象をしっかりと観察する大切さを伝えていきたいです

(レポート:高野) 

第104回井の頭かんさつ会のレポート

第104回井の頭かんさつ会

「井の頭で天体観測 星の一生を観よう」

日時: 2013年12月21日(土曜日)17:00~19:00
主催: 井の頭かんさつ会
後援: 東京都西部公園緑地事務所

案内:
小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
大原 正子
高久 晴子
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
日置 日出男(森林インストラクター)
上村 肇
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)
佃 和夫(NACS-J自然観察指導員)

参加者:45名(大人35名+小人10名)

レポート

  街中に住んでいると、夜空を見上げない人が多いですが、井の頭公園でも多くの星々や星座が見られるのです。今回は皆さんにそのことを知って頂きたくて企画しました。どうせ見るのであれば、星の一生を見て、感じてもらいたいということで、今回のテーマは「井の頭で天体観測 星の一生を観よう」となりました。
夕方、ボート乗り場の前に集合するところから天体観測を始めました。受付を済ませた参加者を待っていたのは、西の空に向けられた2台の望遠鏡。覗くと、三日月が見えます。実は、「宵の明星」である金星は斜めから太陽の光が当たるので、望遠鏡で見ると三日月型をしているのです。
 暗くなるまでの前半は3部構成で、井の頭地区公会堂で星の話をしました。第一部は先ほど観察した金星や後半に観察する木星とガリレオ衛星を中心とした太陽系の話と星の一生の話しです。第二部は後半の野外観察の予習として、今の季節に見られる星座の探し方です。人間味溢れるギリシャ神話を織り交ぜ、楽しんでもらいました。第三部はミニ・プラネタリウムを使って星空散歩です。天井に映し出される満天の星に皆さん、釘付けでした。秋・冬・春・夏と1年の星座を楽しみました。
 後半はいよいよ野外で実際に星の観察です。井の頭地区公会堂を後にして、井の頭公園西園のグランドに向かいました。雲が出てきて心配でしたが、雲の合間から見られた星々を観察していきました。夏の大三角形、ペガススの四辺形、アンドロメダ座、カシオペア座、ペルセウス座、クジラ座と次々に見られました。そして、東の空にオリオンの雄姿が現れたところで、今回のテーマの1つである星の一生を見ていきます。まず、オリオン座の小三ツ星の中央にもやっと見えるのが、オリオン座の大星雲。星が誕生しているところです。視線を上に移すと、プレアデス星団。誕生したばかりの若い星の集まりで、双眼鏡で覗くと宝石箱をひっくり返したような美しさです。視線をオリオンの右肩に戻すと、1等星ペテルギウス、死にゆく星です。数か月以内に大爆発すると噂が立ち話題になった星です。
 クライマックスには東の空に木星が登場しました。天体望遠鏡で覗いてみると、縞模様がうっすら見られ、小さなガリレオ衛星が木星に寄り添うように一直線に並んでいました。
 今回、少し雲が出てしまいましたが、見ようとしていた星はほぼ全て観察できました。グランドは街中より暗いですが、それでも周囲のライトが明るく、観察には最適ではないです。そういった場所で多少雲が出ていても、星は観察できるのです。そして、星は一生を通して、様々な元素を作り上げ、それが大爆発によって宇宙のチリとなって、再び星ができるのです。その元素を使って地球上のあらゆるものが出来ています。人類を含め生きものは全て「星の子どもたち」なのです。そういった事をじっくり参加者の皆さんに感じてもらいました。一年の締めくくりに相応しい観察会でした。

(レポート:小町、写真:高野)

第103回井の頭かんさつ会のレポート

第103回井の頭かんさつ会

「秋の実り 公園の果実と種子を楽しむ」

日時:平成25年11月23日(土曜日)10:00~12:00
主催:井の頭かんさつ会
後援:東京都西部公園緑地事務所

案内:
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
大原 正子
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
日置 日出男(森林インストラクター)
大橋 博資
上村 肇
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)
佃 和夫(NACS-J自然観察指導員)

参加者:50名(大人33名+小人17名)

レポート

  かんさつ会で「空飛ぶ種」を飛ばしたい……そんな私のささやかな夢を実現するために、今回のかんさつ会を企画し、準備を進めました。
 秋は実りの季節。多様な果実と種が実り、それぞれ異なる機能や仕組みによって散布されます。今回のかんさつ会では、それを紹介しながら、転がしたり、飛ばしたり、味わったりして五感で楽しみました。
 今回は探鳥会の回並みに参加者が多かったので、声がきちんと届くよう、6班に分けました。
 ボート乗り場前のハナミズキの果実から観察を始め、ラクウショウの実を池に浮かべてみて水流散布の実験をしたり、イロハモミジやアキニレの種子を飛ばしてみたりしました。今回のテーマは見どころが多いので、各ポイントで少し話をしているだけで時間はどんどん過ぎていきます。ハンノキを過ぎて、スーパーボールのように跳ねるヤブランの種子で遊び、ルーペでヤブミョウガの種子の形の多様性を観察しました。
 サンシュユの果実を味わい、未熟なアオキの果実を観察し、すっかり古くなったコブシの種子やハゼノキの種子を観察し、御茶ノ水でスダジイを拾って味わう頃には1時間近くが経過していました。今回は三角広場までということで、経路が長かったので、なるべくポイントを絞らなければいけなかったのですが、観察を始め、話をし始めるとあっという間に時間は過ぎていきます。サワフタギ、ムラサキシキブ、サカキ、カナメモチ、イタヤカエデを観察し、弁天橋で何とか手が届くムクノキの実を味わい、日本庭園でコナラを拾う頃には残り30分!ここに来てようやく今回のテーマとコースを観察するには2時間では足りないことをはっきりと悟りました。
 その後は少し急ぎ足で三角広場を目指しました。サイカチの果実を拾い、マンリョウの果実を観察し、トネリコの種子を飛ばし、オニグルミの果実を拾い、三角広場にたどり着いたのは12時過ぎでした。まだまだ紹介したい実はたくさんあったのですが挨拶し、一旦終了しました。
 終了後すぐに、私がやりたかった余興をやりました。アルソミトラ マクロカルパ(インドネシア産)の、大きな翼のついた種を飛ばすというものです。この種はグライダーのようなつくりをしていて滑空します。一説にはステルス戦闘機のモデルになったともいわれます。下見で試験飛行した際には上昇気流に乗ってぐんぐん舞い上がり、ついには凧のように、大きなエノキの木に引っかかってしまいました。本番もそんな展開を期待しましたし、そこで拍手喝采を浴びるというのが、私のささやかな夢でした。しかし、この日は風が弱かったので、下見の時のように飛ぶまでには至りませんでした。それでも、よく滑空し、好評をいただくことはできました。


 昼過ぎには予報通り暖かくなりました。会終了後の親睦会にも多くの方が参加してくれ、自然観察談義に花が咲きました。またいつか、「飛ぶ種」アルソミトラを青空に飛ばしてみたいものです。

(レポート:高野、写真:上村)

第102回井の頭かんさつ会のレポート

第102回井の頭かんさつ会

「公園のキノコ ~ キノコという生きものを知ろう!」

日時:2013年10月20日(日曜日)午前10:00~12:00
主催:井の頭かんさつ会
後援:東京都西部公園緑地事務所

案内:
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
大橋 博資
小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
大原 正子
高久 晴子
日置 日出男(森林インストラクター)
上村 肇
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)
井口 七穂(井の頭バードリサーチ)

参加者:29名(大人25名、子ども4名)

レポート

  第98回「シダ植物」に続き、井の頭かんさつ会として初めてのテーマ「キノコ」を取り上げました。動物でも植物でもないキノコ。本当はどんな生きものなのか、公園のどんなところでどのように生きているのか、野外でじっくり観察してほしいと思っていたのですが、井の頭かんさつ会にしては珍しく雨! しかしその雨の中を子供さんも含めて多くの参加者が集まってくださいました。
 集合場所の御殿山雑木林から雨プログラムの会場まで、キノコがよく出る公園内の道(通称「キノコ道」!?)を通って、雨天会場である井の頭公会堂へ。まず皆さんのイメージする「キノコ」の絵を描いていただきました。その多くはやっぱり八百屋さんに並んでいるシイタケのような傘と柄だけのキノコでした。でも、これはキノコのごく一部、植物で言えば「花」の部分、つまり胞子を作る生殖器官です…ということから始まって、キノコがカビの仲間の菌類であり、その本体である「菌糸」が公園の雑木林の地下に無数のネットワークをはりめぐらしているであろうことや、キノコには大きく分けて腐生菌と菌根菌があり、前者は生態系の分解者として、後者は生態系の生産者である植物にとってなくてはならぬ共生者として、重要な役割を担っていることなどをお話ししました。
 その後にスタッフが採集したキノコ(注)を、ルーペも使って見てみました。傘にビロード状の毛があるもの、裏がシイタケのようなひだでなく細い穴状であるもの、胞子がべたべたしていて臭いもの、シイタケ型とは全く違う形のキノコ、つつくと埃をまき散らすように胞子が煙状に出るもの…、いろいろなキノコがありました。キノコの生き方の工夫や多様性も少し感じていただけたと思います。
  野外観察ができず大変残念でしたが、屋内での解説と採集キノコの観察という雨プログラムも、熱心な参加者の皆さんにより楽しい時間となりました。かんさつ会終了後の会場には、参加者の皆さんの熱気とキノコの臭いが色濃く残っていました…。
  公園を散歩するときにキノコが生えていたら、私たちの足元には目に見えないキノコの世界が広がっており、小さなキノコたちの働きが自然の中で大きな役割をもっていることを思い出していただけたら幸いです。

■当日観察できたキノコ
・菌根菌
  ・ハラタケ類:コテングタケモドキ(?-未同定)、アセタケの仲間2種(未同定)
・腐生菌
  ・ハラタケ類:ハナオチバタケ(落ち葉分解菌)、スエヒロタケ
  ・ヒダナシタケ類(肉の硬いもの):ツヤウチワタケ、ヒイロタケ、カワラタケ、ニクウスバタケ、マンネンタケ、
   (たぶん)コフキサルノコシカケ(以上は白色腐朽菌)、ホウロクタケ(褐色腐朽菌)
  ・腹菌類:エリマキツチグリ、ツチグリの仲間(幼菌、未同定)、ホコリタケ、カニノツメ、シラタマタケ
  ・チャワンタケ類:ツバキにつくココミケス属の微小盤菌類(微小チャワンタケ類)
・寄生菌
  ・冬虫夏草の仲間:オサムシタケ、ツクツクホウシタケ*、クモタケ*
        *かんさつ会当日ではなく、以前に採集した乾燥標本

注:キノコは東京都西部公園緑地事務所の許可を得て特別に採集しました。

 

 

(レポート:田中雅子、写真:上村肇) 

第101回井の頭かんさつ会のレポート

第101回井の頭かんさつ会

「恒例!渡りの夏鳥探鳥会 秋編

日時:2013年9月23日(月祝)9:00~11:00
主催:井の頭かんさつ会
後援:東京都西部公園緑地事務所

案内:
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
大原 正子
高久 晴子
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
大橋 博資
日置 日出男(森林インストラクター)
上村 肇
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)

参加者:56名(大人43名、子供13名)

レポート

 開催100回を達成し、次への新たな一歩となる101回目のかんさつ会は、8年前に私がリーダーとしてデビューした秋の渡りの探鳥会でした。やはり探鳥会の回は人気で、今回も満員御礼でキャンセル待ちが出ました。
暑い日が続く中、週間天気は良くなかったので心配でしたが、高曇りの好条件となりました。当日は若干のキャンセルがあったものの、56名もの参加者を集め、資料の説明をしてから、4班に分けてスタートしました。先に資料の説明をしたのは、探し方とどこを探すかをしっかりと伝えたかったからです。観察を始めてしまうと、なかなか細かい説明ができなくなってしまいがちです。資料もそのような編集にしました。また、夏鳥だけでなく留鳥など典型種の行動をよく観察することをすすめました。ハシブトガラス一つとっても、まだ知らないことは山ほどあります。普段の日常生活の中で、カラスやハトをじっくり観察する時間はまずないと思いますので、こういう機会にこそ、観察してみてほしいという趣旨です。
池に冬ガモが来ていればと思いましたが、カルガモとアオサギくらいでした。しかしながら、カルガモの面白い生態を観察できました。水辺に垂れているムクノキの果実を、水面からジャンプして採っていたのです。早速、典型種の知らない行動を観察することができました。
野口雨情碑の周辺で夏鳥のセンダイムシクイを見つけ、皆でしっかりと行動を観察できました。こちらはアオマツムシをはじめとする昆虫を捕食していました。採り損ねた昆虫が落下するのを追って、私たちの目の前まで下りてくる嬉しいハプニングもあり、盛り上がりました。
その後、弁財天の近くではキジバトがエゴノキの果実(種子?)を食べているのを確認。ヤマガラが有毒の果実を取り除いて種子を食べるのは有名ですが、キジバトがエゴノキの果実を食べる行動は最近知りました。これを参加者と一緒に観察することができました。
玉川上水では、ヤマザクラにつくモンクロシャチホコの幼虫を食べるツツドリを観察することができました。ヤマザクラがあって、それを食草とする昆虫がいて、それを季節性の餌として捕食する鳥類がいる、生き物のつながりを知ることのできる場面を、参加者と共にじっくりと観察できました。
その後、小鳥を捕食した後のツミを観察。生態系の頂点である猛禽類も観察できました。もう少しいろいろと探したいところでしたが、ここで時間になってしまい、終了としました。最後に簡単に鳥合わせをしました。他の班でも、エゾビタキなど私の班で観られなかった種類も観察し、充実した観察ができたようでした。
今回は食欲の秋にふさわしく?鳥類と食について、しっかりと観察することができた探鳥会でした。そして、その食を提供しているのは森なのだということを参加者と共に実感できました。

(レポート:高野、写真:上村)