第114回井の頭かんさつ会レポート

第114回井の頭かんさつ会

「土の中の生き物を探してみよう」

井の頭公園最後の秘境「土の中」を徹底調査!!
平成26年10月26日(日)10:00~12:00

佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
日置 日出男(森林インストラクター)
大橋 博資
高久 晴子
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
大原 正子田中 雅子(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
上村 肇
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)
佃 和夫(NACS-J自然観察指導員)
村上 健太(NACS-J自然観察指導員)
参加者31名

レポート

秋晴れのすがすがしい空気の中、参加者31名とスタッフ12名の計43名が4班に分かれて定刻にスタートしました。
まず全員で、スタッフが前日に林の中に仕掛けたトラップを確認、ゴミムシの仲間がかかっているのを見て最初の歓声。その後各班ごとにそれぞれ落ち葉が積もって、生き物が隠れていそうな場所で、石をひっくり返したり、落ち葉をめくったり、土をほじくったりしながら肉眼で観察できる動物を探しました。班によって観られた動物は違いますが、ミミズ、ハサミムシ、ムカデの仲間、甲虫の幼虫、ザトウムシなどが観察できました。そして、ルーペや実体顕微鏡でなければ見えないような動物をあとでじっくり探すために、各班2箇所の土をポリエチレン袋に採取、文化交流広場のテーブルで再集合しました。
文化交流広場のテーブルでは、各班ごとに採取してきた土をふるいにかけ、動き出した小さな動物を割り箸でつまんだり、吸虫管で吸い取ったりして捕まえ、観察しやすいように水を入れた小容器に入れ、実体顕微鏡やルーペでじっくり観察しました。また場所によって生き物の種類や数がどう違っているのかを調べるため、資料を参考に何の仲間かを同定し、点数をつけてみました。
小さい生き物で見つかったのは、トビムシ、カニムシ、ヨコエビ、ワラジムシ、ヒメミミズ、クモ、アリ、シロアリ、ダニなどが見つかりましたが、そのなかでも初めて見たカニムシのサソリのような姿には皆びっくりしていました。
今回のかんさつ会で点数をつけた結果、場所によって違いはあるものの、全体的には井の頭公園は公園の中では比較的自然度が高く保たれているという、我々の感覚を裏付ける結果となりました。そしてこの貴重な自然を永く残して行くことが我々の務めであるとの思いも再確認されました。
今回、子供も楽しそうに生き物を捜してくれましたが、大人の皆さんが子供以上に楽しんで夢中になってくれたことが、主催者のわれわれの大きな喜びとなりました。(佐藤)

第113回井の頭かんさつ会レポート

第113回井の頭かんさつ会

「楽しむ♪野鳥観察会」

日時:平成26年9月27日(土曜日)9:00~11:00
高野 丈(NACS-J自然観察指導員、井の頭バードリサーチ代表)
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
大原 正子
高久 晴子
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
日置 日出男(森林インストラクター)
大橋 博資
上村 肇
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)
佃 和夫(NACS-J自然観察指導員)

レポート

私が井の頭かんさつ会のメインのリーダーを初めて担当したのが、2005年9月開催の第4回でした。それから10年、かんさつ会は109回開催してきました。今回のテーマは10年前と同じ野鳥観察で、「楽しむ♪野鳥観察会」。10年前の会では、未熟な私は珍しい鳥や目立つ鳥を見つけることを目的や手段にしていました。当日は、1日中サンコウチョウを観察することができて、参加者は大満足でした。結果的には成功でしたし、井の頭公園の自然環境の貴重さを伝えることもできたのですが、今考えればギャンブルのようなものでした。
自然環境を評価するのは珍しい生きものの存在だけではありません。普通種とそれにつながっている生きものを含む生態系と、自然界の仕組みを知ることが大切です。また、珍しい生きものの観察は、見つけてしまえば、そこで満足してしまいがちです。五感を使って観察することで、その生きもののことをもっと深く知ることができます。手に取れない野鳥の場合は、視覚と聴覚しか使えませんので、じっくりと行動を観察することが大切です。「楽しむ♪バードウォッチング」はキジバトでも、ハシブトガラスでも、知っているようでまだまだ知らない生態を発見し、楽しむことを提案するものです。
当日は好天に恵まれました。参加者を4班に分け、探鳥を開始すると、早々にカワセミが現れてくれました。これをスワロフスキーの高性能なフィールドスコープでじっくりと観察することができ、上々のスタートでした。その後も、森ではアオゲラをじっくり観察でき、サクラの木ではモンクロシャチホコを捕食するツツドリを全員がスコープでじっくり観察できました。全体的にはそんなに鳥が豊富というわけでもなかったのですが、ポイントポイントでカギとなる鳥をじっくりと観察できたことに救われました。今回、フィールドへのインパクトと鳥を飛ばさないことに考慮し、各班が離れて行動するように心がけました。各班、観られた種はマチマチでしたが、それぞれ観察を楽しめました。
サクラがあるので、モンクロシャチホコがいて、それがツツドリの渡りを支えているという、生きもののつながりの一つをわかりやすく共有することができました。

(レポート:高野丈)

第112回井の頭かんさつ会レポート

第112回井の頭かんさつ会

「ドキドキ、ワクワク 夜の生き物かんさつ」

2014年8月9日(土)18:30~20:30

主催:井の頭かんさつ会
後援:東京都西部公園緑地事務所
案内:
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
大原 正子
小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
高久 晴子
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクタ―)
日置 日出男(森林インストラクター)
大橋 博資
上村 肇
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)
佃 和夫(NACS-J自然観察指導員)
村上 健太(NACS-J自然観察指導員)
参加者:47名(大人33名+子ども14名)

レポート

台風11号の影響で雨。雨天プログラムの準備に追われましたが、本番直前に天気が回復し、屋外観察が可能になりました。今回はかいぼり後の池や池の生き物の夜のようすも見てもらいたいと考え、ボート池の北側を通り神田川に至る新たなルートを設定しました。参加者が多いため、5班に分かれての観察です。我々の班は先頭を切って出発しました。

かいぼり効果で水が澄み、池の底まで見えるようになったので、泳いでいるたくさんの小魚がよく見えます。小魚は昼も夜も活動しています。ところが、七井橋に設置しておいた網を上げてみると、入っていたのは外来魚ブルーギルの稚魚ばかり。数を回復した在来の小魚やエビの姿を見てもらいたいと思っていたのですが、残念ながら、エビの数はまだ回復せず、一時増えたモツゴも、その後に大発生したブルーギルの稚魚に覆い隠されてしまった感じです。それでも、お茶の水池の浅い場所では、池底を動き回る在来のハゼの仲間(ヌマチチブとトウヨシノボリ)を多数見ることができました。

かいぼり後に増えるアメリカザリガニを我々が調査・駆除しているひょうたん池でザリガニワナをいくつか上げてみたら、入っていたのは大きなブルーギルだけ。昼に調べて残しておいたワナからザリガニが消えていました。ザリガニは夜行性なので、夜になって活発になり、ワナを抜け出していったようです。参加者がその姿をよく見られたのは観察会終盤、神田川の岸辺を戻ってくるときでした。水が澄んだ川のあちらにもこちらにも、活動中のザリガニが多数見られたのです。今年ひょうたん池で3千9百匹ものザリガニが獲れているのは、神田川から次々に遡上してくるからに違いありません。池の水が澄めば川も澄む、川にザリガニが多ければ池にもザリガニが増える、井の頭池と神田川はつながっていることを実感してもらえたようです。
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もちろん、夜の観察会定番の、樹液に集まる昆虫たち、夜にだけ咲くカラスウリの花、セミの羽化などもしっかり観察しました。また、明かりに来る虫を捕らえるために橋の欄干やガード下などに網を張るクモの巧みな技や、完成した円網の美しさを堪能しました。街灯の周りを飛び回るアブラコウモリが出す超音波をバットディテクターで聴いたら、コウモリが何をしているのかよく分かりました。夜はドキドキワクワクがいっぱいです。案内者として興味深かったのは、夜眠る(就眠運動をする)植物のひとつとしてクローバー(シロツメクサ)を紹介した時でした。夜は葉を閉じて眠ることを我が班の参加者は誰もご存じなかったようで、皆さんから大きな驚きの声が上がったのです。よく知っているつもりの生き物ほど驚きが大きいようです。
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神田川源流横の広場に集合して解散。池の生き物は、7月のかんさつ会でも分かった現状が夜にも現れていて、やや期待外れでしたが、陸上の生き物はいつものように楽しめたと思います。夜には昼とはまったく違う生き物たちの世界が展開していること、そして生き物たちには昼だけでなく夜もとても重要であること、を分かっていただけたのではないかと思います。

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観察会の後は吉祥寺のイタリアンレストランで恒例の親睦会。観察会に参加できなかった仲間も加わって、会員と参加者合わせて総勢30名、ご自慢のベビー(自分の子ども)を見せに来てくれた仲間や、ご自慢の粘菌標本を披露してくれた参加者もいて、ワイワイガヤガヤの楽しい会が遅くまで続きました。

(レポート:田中利秋)

第111回井の頭かんさつ会レポート

第111回井の頭かんさつ会

■タイトル  「かいぼり後の池」 ~かいぼりでどう変わったか~

■実施年月日 2014年7月19日(土曜日)10:00~12:00

■参加者数  一般参加者名 41名(大人40名 子供1名)

井の頭かんさつ会スタッフ11名、保全活動班スタッフ6名

  • 実施場所 井の頭公園ボート乗り場前~お茶の水池エサやりデッキ~ボート池北岸~ひょうたん池
  • 実施レポート (作成:第11回企画担当 上村 肇)
    昨年に引き続き、7月のかんさつ会は「井の頭池のかいぼり」をテーマに行いました
    本年1月から3月にかけて行われたかいぼりで井の頭池がどう良くなったのか、或いは思
    い通りにならなかったのか、新たな課題は見つかったのかを4つの切り口で調べていきます。さらに、金魚やメダカ・タイリクバラタナゴといった新たな放流魚が見つかっている現実を踏まえ
    て、水の中だけを相手していてもかいぼりの目的は達することは出来ず、池を訪れる多くの人々の
    目と意識が池の維持にとても重要だとの説明も行いました。
    かいぼり作業を見ていない参加者にも変化が理解できるように説明を行いました。
  • “最初の切り口は「水(水質)」です。集合場所の左右にある七井橋・狛江橋からそれ ぞれの池を
    覗き込んで池の水の違いを見て、直感的に感じた後でマーカーを沈めてかいぼり後の池の方が
    約2倍の透視度があることを確認しました。当日は小雨模様ということもあり、反射が少なかった
    ため七井橋では池底までしっかりと見えていました。続いて「水草」を調べます。七井橋の西側には育ち始めたたくさんの水草が見えるようになってい
    ます。かいぼりをした際には露出した池底には、全く見られなかったことを説明すると参加者から
    は、驚きの声が上がると同時に、透明度が上がることで池底に太陽光が届く事による変化だろうと
    いう、的確な指摘も返ってきました。さらに水質の改善や生物多様性のベースといった水草の効用
    を説明するとこれからの池に対する期待も大きくなったようです。三番目は「トリ」です。かいぼり前には暫く見られなかったカイツブリの子育てが今年はいくつも
    確認されています。卵を抱えた親や、親の後をついて回るヒナたちを見て頂きながら、昨年までの
    実態を資料のグラフで説明してその違いとかいぼりとの関係を考えてもらいました。
    かいぼり前の池には外来魚ばかりでエビや在来魚の稚魚がほとんどいなかったため、ヒナたちのエ
    サが不足していたことがカイツブリに井の頭池を忌避させる要因になっていたのではとの回答が
    参加者から直ぐに返ってきて、関心の高さを表していました。”

    そして最後の「サカナ~外来魚の現状」です。池の中を覗く度に小さなブルーギルの稚魚がたくさ
    ん泳いでいるのが参加者の目にも嫌でも入ってきます。この池はかい掘りしたところですよね、と
    の指摘を参加者が思わず口にしていました。さらにオダ網やカゴワナといった定置網と手釣りで捕
    獲した数々のブラックバス・ブルーギルを見て事態の深刻さを確認しました。

    多くの参加者が井の頭公園駅前の親水エリアで子供たちがザリガニ捕りをしているのを見知ってい
    ましたが、池で捕れているサイズが大きめで、数も多いことにびっくりされていました。このアメ
    リカザリガニが井の頭池全体に蔓延し始めており、先ほど喜んだばかりの水草の復活がこれにより
    無に帰すかもしれないとの説明に絶句する参加者もありました。

参加者各位が今後も池の様子に興味を持って、その変化に気がついてもらえたらと幸いです。さらに次回のかいぼりへの関心を持って頂き、かいぼり作業への参加を具体的に検討してもらえる事も期待
して終わりました。

第110回井の頭かんさつ会レポート

第110回井の頭かんさつ会

「クモ~のぞいてみよう不思議なクモの世界~」

2014年6月29日(日)10:00~12:00

主催:井の頭かんさつ会
後援:東京都西部公園緑地事務所

案内:
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクタ―)
大原 正子
高久 晴子
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
日置 日出男(森林インストラクター)
大橋 博資
上村 肇
佃 和夫(NACS-J自然観察指導員)
村上 健太(NACS-J自然観察指導員)

参加者:25名(大人19名+子ども6名)

レポート

 夜明け前後の強い雨で心配した天気が、時間と共に徐々に小降りになり、観察会の始まる頃にはすっかり止んで、青空に太陽まで出るほどの変わりよう、絶好の観察日和となりました。
 初企画のうえ小さく目立たないクモが対象ということで、募集人数を絞ったのですが、案内を出して間もなく応募が集まり、早々に満員御礼を出すことになりました。
 初めに全員に“クモとはどんな生き物?”という観点から昆虫との違い、オスメスの見分け方、糸と網、クモの一生など、基本的なポイントを絵図も使って簡単に解説しました。続いて子供と保護者の「子供班」(1)、大人中心の「大人班」(2)と全3班に分かれて観察を行いました。
 雨の後の晴天という状況だからでしょうか、それとも参加の皆さんの熱心さのおかげでしょうか、何度か行った事前の下見より短時間で多くのクモ(私の班では25種超)が登場し、最後は予定コースを一部割愛せざるを得ないほどでした。
コースは七井橋のズグロオニグモと毎日張り替えるリサイクルの網、池の上に張られたアシナガグモと水平の網など円網を作るクモからスタートしました。弁財天の近くではトタテグモの巣の扉やクモタケ、ジグモの巣から、クモの生活の一端を垣間見て話題が盛り上がりました。
 ほたる橋に向かう道の途中では、タナグモ類(クサグモ、コクサグモ)やヒメグモ類(ヒメグモ、オオヒメグモ)など円網とは違う網を張るクモや、ハエトリグモ類やカニグモなど、網を張らないクモも数種類登場、卵のうの中に残っていた生まれたてのオオハエトリの子グモも観察できました。
 小鳥の森の周りでは、バルー二ングで分散してきたのでしょう、まだ小さいジョロウグモの幼体があちらこちらに小さいながらも親と同じで、三重網を張っています。網に手を近づけると一人前?に揺らして威嚇のポーズをします。コガネグモの仲間は成体になっても網を揺らしますが、近縁のジョロウグモは幼体の時期だけ同じ行動をとるらしく、これがなかなか受けていました。
 他にも座布団のような巣から受信糸を出しているヒラタグモや、おしりに卵のうを抱えて守るコモリグモ、樹皮や石垣の隙間に漏斗状の住居を作り獲物を待つミヤグモ等、それぞれユニークな姿や生態の一端を垣間見ることができました。
  クモという一般的には人気のない生き物をテーマにした初の企画でしたが、常連の参加者も多いおかげでしょうか、早朝の雨にも関わらず欠員もなく、また天気にも恵まれ無事終了できました。今回の企画を通じて井の頭公園のクモの種類や生態をある程度把握でき、お陰様で有意義なかんさつ会になったと感じています。
 なお解散後の午後には再び雷を伴う豪雨に変わり、クモのかんさつ会は梅雨の合間の不思議な一時ということで幕を閉じました。

(レポート:竹内、写真:高野)

第109回井の頭かんさつ会レポート

第109回井の頭かんさつ会レポート

  「春の野鳥観察会」

日時: 平成26年5月10日(土曜日)8:00~10:00

レポート

60名近い参加者を迎え、春恒例の野鳥観察会を開催しました。昨年は早朝7時スタートにしたところ、気温が低かったためか鳥たちの行動が鈍かったので、今年は8時スタートにしました。 多くの参加者のお目当ては夏鳥でしたが、今季井の頭公園ではゴイサギが繁殖しているなど、見どころが多い会になりました。
双眼鏡の使い方をおさらいし、樹上のゴイサギを観察したあとは、繁殖コロニーを観察しました。ゴイサギは年間をとおして見られますが、繁殖は初めてのことです。なぜ今季は井の頭公園で繁殖しているのか。迷惑だと考える人。あたたかく見守ろうと考える人。管理者やボランティアの対応など、人と生き物の共生を考えるための格好の教材となりました。
夏鳥であるキビタキのさえずりは5カ所で確認。センダイムシクイのさえずりもしました。ただ、声はすれども姿は見えず、初心者にはなかなか手ごわい鳥観になりました。私が確認できても、同じ鳥を参加者が確認できるとは限らない…探鳥会の難しい課題です。でも、今日が初参加で初めてのバードウォッチングという友人がしっかりとキビタキの姿を捉えていました。いわゆるビギナーズラックでしょうか。
リピーターの方々に加え、公園で声をかけた人や、友人も多く参加してくれて、皆で一所懸命鳥を探しました。10時でいったんまとめをして、その後11時過ぎまで延長戦。これに参加した20名ほどの方々は10時までに見られなかったアオゲラなども観られました。
目立つものばかりを追うのではなく、身の回りの生き物もすべてじっくりと観察しよう、という考え方を今回も実践できたと思います。バードウォッチングをとおして、当地の自然環境の大切さもお伝えすることができました。

(レポート:高野)

第108回井の頭かんさつ会レポート

第108回井の頭かんさつ会

「井の頭公園 花を愛でる観察会」 ~花と生きもの~

日時: 2014年4月13日(日曜日)午前10:00~12:00
主催: 井の頭かんさつ会
後援: 東京都西部公園緑地事務所

案内
小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
佃 和夫(NACS-J自然観察指導員)
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
大原 正子
高久 晴子
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
日置 日出男(森林インストラクター)
大橋 博資
上村 肇
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)

参加者:40名(大人29名、子ども11名)

レポート

 週間予報では雨マークが付いていましたが、井の頭かんさつ会の晴れパワーは健在で、当日、春らしい穏やかな陽気の下、花を愛でる観察会を行いました。お花見の喧騒も終わり、井の頭公園はちょっと落ち着いてきましたが、花はソメイヨシノだけではなく、たくさんの花が咲き誇っています。

今回は、特に花と生きものの繋がりに焦点を当ててみました。花粉を媒介する生きものとして、甲虫、ハナアブ・ハエ、ハナバチ、チョウ、鳥などいます。花はどの生きものに来てもらいたいか焦点を当てて、色や形など様々に進化してきました。特に優秀な花粉媒介者であるハナバチに来てもらいたいために複雑な構造に進化した花も数多くあります。

 今回は大人2班、子ども2班の合計4班体制でスタートです。各班とも工夫をこらした解説で花を観察していきました。最初に人気だった花は、ツルニチニチソウでした。花の中を調べてみると、毛が一杯で、非常に複雑な構造をしています。顕微鏡を覗いた参加者から驚きの声が上がります。ツバキやアオキ、イロハモミジの花々もとても興味深い形状をしています。ムラサキケマンの花の仕組みも巧妙です。花粉媒介する虫が口を花に突っ込むとしっかり花粉が虫に付くようになっています。参加者の皆さんも実際に触って、観察して、花の仕組みが分かると、とても感動している様子でした。班によっては、サツキやシャガ、アセビなども観察をしました。

 野草園を過ぎて、雑木林に出ると、新緑が広がっていました。新緑を楽しみながら、タチツボスミレやウラシマソウの群生地をご案内し、西園のグランドの入り口付近で解散となりました。解散後、スタッフと参加者の有志で一緒に野外懇親会行いました。多くの方が参加され、和気藹々と過ごすことができました。

 

(レポート:小町、写真:高野)

第107回井の頭かんさつ会レポート

第107回井の頭かんさつ会

「あなたはどんな時に春を感じますか」~井の頭公園で春を探そう~

日時: 2014年3月15日(土曜日)午前10:00~12:00
主催: 井の頭かんさつ会
後援: 東京都西部公園緑地事務所

案内
大橋 博資
日置 日出男(森林インストラクター)
高久 晴子
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
大原 正子
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
上村 肇
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)
佃 和夫(NACS-J自然観察指導員)

参加者: 39名(大人27名、子供12名)

レポート

 今回のテーマである「春探し」は、天気や気温によって大きな影響があり、当日の天候が気掛かりでしたが、幸い快晴で気温も集合した10時頃は12度と例年並でした。
 いつものように各班にに分かれて、出発です。
 子供班は、あらかじめスタッフが用意したゲーム形式での春探しを行い、大人と同じ行程を楽しく学べたようです。
 一方大人班は、まず今回のタイトルとなった「あなたはどんな時に春を感じますか」の問いに答えていただきました。
 オオイヌノフグリやホトケノザといった野草に春を感じる方、梅やジンチョウゲなどの樹木の開花に春を感じる方、はたまた夜空の変化や日照時間の変化といった科学的なご意見、花粉症という近年の春の季語になりそうな理由の方もいらっしゃいました。
 参加者のみなさんと見つけることができた春は、予想以上にたくさんあったと思われます。
 中でも、トビモンオオエダシャクとの出会いは、大きな意味があったと言えるかもしれません。トビモンオオエダシャクはスプリングエフェメラルと言われる、春の一時期に出現してわずかの時間で姿を消してしまう種類のガの一つだったからです。
 また、ツバキキンカクチャワンタケというキノコも観察することができました。このキノコは、胞子をツバキの開花のころに合わせて放ち、ツバキの花が役目を終え地面に落ちるとその栄養分を使って成長するという生活をしているとのことで、普段なかなか見ることのできない春をご紹介できたと思います。
 春という季節は、生き物にとって厳しい冬と背中合わせです。植物・昆虫・鳥類などが井の頭公園の自然の中でつながりを持って生きていることをお伝えできたと思う春の日でした。

(レポート:大橋)

第106回井の頭かんさつ会レポート

第106回井の頭かんさつ会

  「池の中かんさつ会」

日時: 平成26年2月23日(日曜日)10:00~12:00

レポート

2014年2月のかんさつ会のテーマはもちろん「水のない池」です。かいぼりによって水を抜いている状態の池で自然観察するというまれな機会を活かさない手はありません。普段やろうと思ってもできない状況なのです。
 満員御礼で迎えたかんさつ会の内容は、100年実行委員会主催で開催した観察会と同コース・内容で進めました。かいぼりステーションでは、かいぼりの概要や捕獲された生き物を上村が解説しました。その後参加者を4班に分けてお茶の水方面へ移動しながら観察をスタートしました。
 池の底に降りたところで、分かれていた班を合流し、総勢70名の大集合写真を撮影しました。稀有な機会ですから、集合写真を撮って参加者に送り、記念にしていただきます。参加者に写真を提供するのは初の試みでした。
 集合写真撮影後、再び4斑に分かれて池の底での観察を再開しました。通常池の中にあって目にすることのない設備や遺構などを観察し、またハンノキとほかの樹木の水中への根の伸ばし方の違いなどを観察しながらシダレヤナギ方面へ移動しました。シダレヤナギの先で池から上がり、七井橋の上から生き物の足跡を観察し、狛江橋で弁天池の水が抜けなかった理由や、堰を観察し、池尻へ。ひょうたん池に到着したところで時間となりました。閉会のまとめでは、次回のかいぼりにも言及し、官民協働で取り組むべき活動であることを強調し、協力を呼びかけました。
池の底を歩きたいのに、機会を逃して参加できていなかった方々の受け皿になることができ、開催した意義がありました。参加者には満足していただきましたし、次回のかいぼりでは活動に参加したいという方も多く、将来の活動を充実させるきっかけにもなったと思います。

 

(レポート:高野)

第105回井の頭かんさつ会レポート

第105回井の頭かんさつ会

「冬の野鳥観察会」

日時: 平成26年1月12日日曜日9:00~11:00

レポート

1月の井の頭かんさつ会恒例の探鳥会を開催しました。今までは「冬鳥探鳥会」のように、お目当ての冬鳥を探すことがテーマだったのですが、今回のテーマは「冬の野鳥観察会」。留鳥だって、知っているようで知らないことがたくさん。行動をじっくりと観察することで、いろいろ発見しようという趣旨にしました。
 参加者を4班に分けてかんさつ会を開始しました。池の周囲はかいぼりの準備でネットが張られ、いつもと違った景観。子供の視線では池が見えませんので、まずは七井橋からじっくりと池を観察しました。早速、行動を観察できたのはカルガモです。雌雄で首を上げ下げし、その後交尾。交尾の後は水浴びし、羽ばたいて水を切ります。知っているつもりのカルガモの、見たことがない、あるいは頻繁には見ない行動です。
その後、野口雨情碑の裏で冬鳥のシロハラとツグミが落ち葉をひっくり返して、落ちた実を食べる行動を観察できました。食べていたのはエノキの実。食べていた場所の近くに、灰色で裂けないざらざらした樹皮が見えます。実際に鳥が食べていたエノキの実を確認し、自分たちも拾ってみました。そして、エノキの木の見分け方をレクチャーしました。
 エナガの声を追っていると、シジュウカラがハゼノキの実を食べている場面を観察できました。エナガはシジュウカラと混群を形成していましたが、ハゼノキの実は口に合わないようで、近くに来ますが食べませんでした。私は井の頭公園で8年半継続観察を続けていますが、シジュウカラがハゼノキの実を食べるという事実は、この日初めて知りました。これがじっくり観察の醍醐味です。そしてこれは発見の楽しみだけではなく、樹木と鳥類の切っても切れない関係と大切さを知ることでもあります。
 じっくり観察は時間がかかります。今回も時間が足りなくなってしまいました。103回に続いて、2時間の設定を失敗してしまいましたが、最後のまとめではフクロウの仲間、オオコノハズクの前日に拾われた羽を参加者に回し、井の頭産鳥類目録に140種目が記録されたことと共に、身近に残された自然環境の大切さを伝えました。
前シーズンに比べると冬鳥が少ないフィールドですが、留鳥でも冬鳥でもなんでも、じっくりと行動を観察しようという趣旨は正解だったと思います。これからも、目立つものばかり追うのではなく、当たり前だと思っている対象をしっかりと観察する大切さを伝えていきたいです

(レポート:高野)