第112回井の頭かんさつ会レポート

第112回井の頭かんさつ会

「ドキドキ、ワクワク 夜の生き物かんさつ」

2014年8月9日(土)18:30~20:30

主催:井の頭かんさつ会
後援:東京都西部公園緑地事務所
案内:
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
大原 正子
小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
高久 晴子
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクタ―)
日置 日出男(森林インストラクター)
大橋 博資
上村 肇
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)
佃 和夫(NACS-J自然観察指導員)
村上 健太(NACS-J自然観察指導員)
参加者:47名(大人33名+子ども14名)

レポート

台風11号の影響で雨。雨天プログラムの準備に追われましたが、本番直前に天気が回復し、屋外観察が可能になりました。今回はかいぼり後の池や池の生き物の夜のようすも見てもらいたいと考え、ボート池の北側を通り神田川に至る新たなルートを設定しました。参加者が多いため、5班に分かれての観察です。我々の班は先頭を切って出発しました。

かいぼり効果で水が澄み、池の底まで見えるようになったので、泳いでいるたくさんの小魚がよく見えます。小魚は昼も夜も活動しています。ところが、七井橋に設置しておいた網を上げてみると、入っていたのは外来魚ブルーギルの稚魚ばかり。数を回復した在来の小魚やエビの姿を見てもらいたいと思っていたのですが、残念ながら、エビの数はまだ回復せず、一時増えたモツゴも、その後に大発生したブルーギルの稚魚に覆い隠されてしまった感じです。それでも、お茶の水池の浅い場所では、池底を動き回る在来のハゼの仲間(ヌマチチブとトウヨシノボリ)を多数見ることができました。

かいぼり後に増えるアメリカザリガニを我々が調査・駆除しているひょうたん池でザリガニワナをいくつか上げてみたら、入っていたのは大きなブルーギルだけ。昼に調べて残しておいたワナからザリガニが消えていました。ザリガニは夜行性なので、夜になって活発になり、ワナを抜け出していったようです。参加者がその姿をよく見られたのは観察会終盤、神田川の岸辺を戻ってくるときでした。水が澄んだ川のあちらにもこちらにも、活動中のザリガニが多数見られたのです。今年ひょうたん池で3千9百匹ものザリガニが獲れているのは、神田川から次々に遡上してくるからに違いありません。池の水が澄めば川も澄む、川にザリガニが多ければ池にもザリガニが増える、井の頭池と神田川はつながっていることを実感してもらえたようです。
140809_0005.jpg140809_0009.jpg
もちろん、夜の観察会定番の、樹液に集まる昆虫たち、夜にだけ咲くカラスウリの花、セミの羽化などもしっかり観察しました。また、明かりに来る虫を捕らえるために橋の欄干やガード下などに網を張るクモの巧みな技や、完成した円網の美しさを堪能しました。街灯の周りを飛び回るアブラコウモリが出す超音波をバットディテクターで聴いたら、コウモリが何をしているのかよく分かりました。夜はドキドキワクワクがいっぱいです。案内者として興味深かったのは、夜眠る(就眠運動をする)植物のひとつとしてクローバー(シロツメクサ)を紹介した時でした。夜は葉を閉じて眠ることを我が班の参加者は誰もご存じなかったようで、皆さんから大きな驚きの声が上がったのです。よく知っているつもりの生き物ほど驚きが大きいようです。
140809_0015.jpg
神田川源流横の広場に集合して解散。池の生き物は、7月のかんさつ会でも分かった現状が夜にも現れていて、やや期待外れでしたが、陸上の生き物はいつものように楽しめたと思います。夜には昼とはまったく違う生き物たちの世界が展開していること、そして生き物たちには昼だけでなく夜もとても重要であること、を分かっていただけたのではないかと思います。

140809_0006.jpg

観察会の後は吉祥寺のイタリアンレストランで恒例の親睦会。観察会に参加できなかった仲間も加わって、会員と参加者合わせて総勢30名、ご自慢のベビー(自分の子ども)を見せに来てくれた仲間や、ご自慢の粘菌標本を披露してくれた参加者もいて、ワイワイガヤガヤの楽しい会が遅くまで続きました。

(レポート:田中利秋)