第110回井の頭かんさつ会レポート

第110回井の頭かんさつ会

「クモ~のぞいてみよう不思議なクモの世界~」

2014年6月29日(日)10:00~12:00

主催:井の頭かんさつ会
後援:東京都西部公園緑地事務所

案内:
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクタ―)
大原 正子
高久 晴子
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
日置 日出男(森林インストラクター)
大橋 博資
上村 肇
佃 和夫(NACS-J自然観察指導員)
村上 健太(NACS-J自然観察指導員)

参加者:25名(大人19名+子ども6名)

レポート

 夜明け前後の強い雨で心配した天気が、時間と共に徐々に小降りになり、観察会の始まる頃にはすっかり止んで、青空に太陽まで出るほどの変わりよう、絶好の観察日和となりました。
 初企画のうえ小さく目立たないクモが対象ということで、募集人数を絞ったのですが、案内を出して間もなく応募が集まり、早々に満員御礼を出すことになりました。
 初めに全員に“クモとはどんな生き物?”という観点から昆虫との違い、オスメスの見分け方、糸と網、クモの一生など、基本的なポイントを絵図も使って簡単に解説しました。続いて子供と保護者の「子供班」(1)、大人中心の「大人班」(2)と全3班に分かれて観察を行いました。
 雨の後の晴天という状況だからでしょうか、それとも参加の皆さんの熱心さのおかげでしょうか、何度か行った事前の下見より短時間で多くのクモ(私の班では25種超)が登場し、最後は予定コースを一部割愛せざるを得ないほどでした。
コースは七井橋のズグロオニグモと毎日張り替えるリサイクルの網、池の上に張られたアシナガグモと水平の網など円網を作るクモからスタートしました。弁財天の近くではトタテグモの巣の扉やクモタケ、ジグモの巣から、クモの生活の一端を垣間見て話題が盛り上がりました。
 ほたる橋に向かう道の途中では、タナグモ類(クサグモ、コクサグモ)やヒメグモ類(ヒメグモ、オオヒメグモ)など円網とは違う網を張るクモや、ハエトリグモ類やカニグモなど、網を張らないクモも数種類登場、卵のうの中に残っていた生まれたてのオオハエトリの子グモも観察できました。
 小鳥の森の周りでは、バルー二ングで分散してきたのでしょう、まだ小さいジョロウグモの幼体があちらこちらに小さいながらも親と同じで、三重網を張っています。網に手を近づけると一人前?に揺らして威嚇のポーズをします。コガネグモの仲間は成体になっても網を揺らしますが、近縁のジョロウグモは幼体の時期だけ同じ行動をとるらしく、これがなかなか受けていました。
 他にも座布団のような巣から受信糸を出しているヒラタグモや、おしりに卵のうを抱えて守るコモリグモ、樹皮や石垣の隙間に漏斗状の住居を作り獲物を待つミヤグモ等、それぞれユニークな姿や生態の一端を垣間見ることができました。
  クモという一般的には人気のない生き物をテーマにした初の企画でしたが、常連の参加者も多いおかげでしょうか、早朝の雨にも関わらず欠員もなく、また天気にも恵まれ無事終了できました。今回の企画を通じて井の頭公園のクモの種類や生態をある程度把握でき、お陰様で有意義なかんさつ会になったと感じています。
 なお解散後の午後には再び雷を伴う豪雨に変わり、クモのかんさつ会は梅雨の合間の不思議な一時ということで幕を閉じました。

(レポート:竹内、写真:高野)