第134回井の頭かんさつ会レポート

第134回井の頭かんさつ会

テーマ:変形菌 ふしぎな生きもの

■開催日時:2016年6月26日(日)9:00~11:30

■参加者数:一般参加者 31人(大人23人、子ども8人)

スタッフ 11人(外部協力者2人を含む)

 

■場所:自然文化園分園前~弁天池畔~井の頭地区公会堂~井の頭第二公園~小鳥の森

 

■実施内容:(作成:第134回企画担当 高野 丈)

変形菌類の観察と入門講座を実施しました。

最初に弁天池畔で観察し、ウツボホコリ、シロウツボホコリ、クモノスホコリ、シロエノカタホコリを観察するグループと、ツツサカズキホコリが群生しているのを観察するグループに分かれ、ローテーションしました。最初に実物に触れておくことで、そのスケールの小ささや、野外でどんな感じで出ているかを実感してもらいました。

井の頭地区公会堂へ移動し、パワーポイントを使って、変形菌はどういう生物かをレクチャーしました。「菌」とついても、菌類や細菌とは分類も生活史もまったく異なる生きものだということがポイントでした。

レクチャー後、第二公園へ移動し、観察を実践しました。落ち葉がたまっている個所を中心に探し、参加者自身で見つける楽しさを体験してもらいました。シロエノカタホコリ、ガマグチフクロホコリ、キミミズフクロホコリ、ホネホコリ、バークレイホネホコリ、シロジクキモジホコリや種不明の変形体が次々に見つかり、参加者は一様に喜んでいました。

後半は小鳥の森で観察。ヒメカタホコリ、コシロジクキモジホコリ、褐色のサカズキホコリ、外部協力者でもすぐに同定できない不明種などが追加で見つかり、虹色の光沢がある人気種、ジクホコリを最後に観察して終了時間を迎えました。

本企画では、ふしぎな生きものである変形菌が身近にたくさんいることを知ってもらい、自身で発見する喜びを体験してもらうことがねらいでしたが、実践できたと思います。また、色形がおもしろく、小さいので非日常に感じるかもしれないが、変形菌を観察することは決してマニアックな趣味ではなく、生態系の中で分解者を捕食してバランスをとっている重要な役割のある生きものを知るこということをお伝えしました。楽しみながら、生態系を実感する。それが実践できたと考えています。

第132回井の頭かんさつ会レポート

第132回井の頭かんさつ会

タイトル 春色観察会 ~春のお花観(はなみ)~

■実施年月日 2016年4月17日(日)10:00~12:00

■参加者数  一般参加者 34名(大人30名、子ども4名)

■実施場所: ボート乗り場前(集合)→井の頭池北岸 →野草園 →井の頭地区公会堂

■実施レポート(作成:第132回企画担当 小町 友則)

春恒例の花を愛でる観察会ですが、今年は天候に祟られ、開始直前からパラパラと大粒の雨が降ってきました。また、風が強く、落枝による事故も心配されるため、安全に配慮して、室内での雨天プログラムを実施することにしました。ただ、雨がひどくない内に池の西半分を周り、春の色を観察しながら井の頭地区公会堂へ向かうことにしました。

 

この時期の井の頭公園は、ハナミズキ、ツツジ、ヤマブキなどの樹木の花、イチリンソウ、ニリンソウ、イカリソウなどの野草園の草花、ハルジオンやハルノノゲシといった雑草の花など多くの花が咲き誇っており、予定したルート上だけで、約50種の花が咲いています。今回のテーマは春の色です。花も色とりどりですが、それに加えて、この時期は何と言っても新緑の緑です。新緑に多様な色があることを見て頂き、日本の伝統色と合わせて話をしました。また、春の芽出しには、紫外線から植物を守るため、赤い色の葉や芽がみられます。そういった様々な色を足早に眺めながら、井の頭地区公会堂へ向かいました。

 

室内プログラムの第一部は、この時期に見られる約50種の花について、一つ一つ写真で見て、解説を行いながら、白い花、黄色い花、赤またはピンク色の花、青または紫色の花、その他の色の花の5種類に分け、何色の花が多いか、調査をしてみました。一番多かったのが、白の花で16種ありました。その次が黄色の12種、赤またはピンクと青または紫色は8種程度でした。

 

室内プログラムの第二部は、人間の目では識別できない紫外の領域で数多くの花を撮影した写真を可視光の写真と対比させて見て頂きました。黄色い花の多くが、紫外でコントラストが強いことが分かりました。

 

室内プログラムの最後は、予め採取した花をグループ単位でじっくりと観察し、花のしくみや虫との関係などを考えてみました。

 

 

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今回は雨天プログラムを実施しましたが、短時間とはいえ、外で花を観察し、その後、講義で詳しく解説し、手に取って理解することは、非常に分かりやすかったと、参加者からコメントを頂きました。

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第130回井の頭かんさつ会レポート

第130回井の頭かんさつ会 

タイトル かいぼり中の池底

■実施年月日 2016年2月21日(日)10:00~12:00

■参加者数  一般参加者:46名(大人34名、子ども12名)

案内人:井の頭かんさつ会スタッフ12名+保全活動班補助2名

■実施場所: ①野外ステージ(集合)→②かいぼり屋 →③七井橋 →④弁天池底(弁天堂付近) →⑤お茶の水橋〜雨情碑(池底) → ⑥サギ島〜七井橋(池底)→⑦野外ステージ(解散)*全体5班のうち2班は②〜⑥を逆回りに実施。

■実施レポート (作成:第130回企画担当 村上 健太)

かいぼり中の池底に入る今回は市民の関心が高いからか、50名の定員が募集開始からわずか2日で満員となりました。前日までの荒天で開催が危ぶまれましたが、開催を願うスタッフと参加者の願いが届き、何とか雨が上がって実施できました。

まず最初に”かいぼり屋”の前でかいぼりの説明をしました。概要はもちろんですが、何のために行っているのか、どうして生き物を池に放ってはいけないのかを説明しました。井の頭公園の本来の生態系を守るために、国内であっても井の頭池以外の生き物を放つことはいけないと強調しました。

七井橋の上から泥に残る生き物の足跡を観察しました。前日までの雨で多くは消えてしまいましたが、カモやカメの足跡が残っていました。子供さんに「カモの足には足ヒレがあるよ、だから水をかいてスイスイ泳げるんだ」と体の構造と行動の関係を説明すると、興味深げな反応を返してくれました。

今回の観察テーマの一つは”湧水”です。弁天池に入り、大人の方には湧水のしくみや湧水が枯れたと思われていたけれど実は残っていたことを説明し、子供達も一緒に湧水の起点を探しました。「ここで砂が舞って湧いている!」と歓声が上がります。これが神田川の源流だと説明すると、納得した顔の反応を返してくれました。前日の雨の影響か、湧水付近の水温が約14度と通常の湧き水よりも(前週の下見よりも)低かったのですが、その理由の推察も含めて話すことができました。

続いてお茶の水橋付近からお茶の水池に入ります。護岸のコンクリート板の隙間から伸びる木の根や、水質浄化装置など、普段は水の中にあるものを見ることができ、参加者だけでなく案内人もワクワクしていました。水たまりにはアズマヒキガエルの卵がありました。カエルの卵に初めて触る参加者は大喜びでした。「ヌルヌル」「ひんやりしてる」と感想を言い合っていました。

親水デッキ脇からサギ島の横を通り、七井橋まで歩きました。サギ島横の水路を行くのは、探検をしているようでドキドキします。七井橋横の水草株ではすでに今年の芽がでていたので、水草が増えることを期待していることを説明できました。

 

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池底は生き物が少なかったのですが、それでも池底に入れたことや、普段は見られないものが見られたことに参加者の皆さんは興奮し、満足してくれたようです。単純に池に入るだけでなく、かいぼりの意義や井の頭池の本来の自然・生態系について理解も深まったことと思います。

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第129回井の頭かんさつ会レポート

第129回井の頭かんさつ会

■タイトル  「冬の野鳥観察を楽しもう」

■実施年月日 2016年1月17日(日曜日)9:30~12:00

■参加者数  一般参加者数 46名(大人39名+小人7名)

井の頭かんさつ会スタッフ13名+保全班1名 計60名

  • 実施場所 井の頭公園駅前~池尻~ボート池~七井橋~お茶の水池~御殿山~松本訓導碑
  • 実施レポート(作成:第129回企画担当 高野 丈) 葉が落ちて観察しやすいのがこの季節。やぶにこもりがちなウグイスがもろに出てきたり、求愛行動が活発になってきたアオゲラをじっくり観察できたりしました。2時間30分の観察会はあっという間に終焉へ。各班、充実した観察ができたという声がリーダー、参加者両方から出るなど全員で楽しむことができた会でした。
  • このところ続いていた好天が下り坂になるという予報に空模様を心配しましたが、晴天率9割以上を誇る当会の晴れパワーは健在でした。参加者スタッフ計60名を高野、小町、中村の3班に分け、井の頭公園駅下を出発。会が始まる前から多くの人が観察していた、アキニレやサワラの実を食べるカワラヒワをあらためて観察。トウネズミモチの実を食べるヒヨドリ、アキニレの実を試して流したシジュウカラ、それぞれ植物と鳥の関係を考えました。池尻では繁殖放棄したてのキジバトの巣の構造を確認し、キセキレイをじっくりと観察。そして、餌やり自粛キャンペーン以来まとまった数が飛来しているユリカモメ軍団。もう10年近く、年間に1羽出るかどうかという状況が続いていました。それが、今回かいぼりのために池の水を抜いている状況をどこで知ったか、30羽ほどがやってきました。そして、水が少なくなった池で魚を捕食したり、オオバンが捕らえた魚を横取りしたり、やりたい放題。カワウもスゴイ勢いで魚を捕食しているので、かいぼりの前に魚類が喰い尽されてしまうのではという冗談が出るほどです。オオバンも今まで最高で3羽だったものが、今シーズンは10羽ほど来ています。お茶の水池の水が抜けてくると、潜水して暮らしているカイツブリやキンクロハジロは姿を消しました。そのように、環境が変わると鳥たちに動きが出ることを参加者と一緒にじっくり観察しました。
  • 129回目の井の頭かんさつ会では、新たにかんさつ会に加わった中村芳生さんがリーダーデビューしました。以前は常連の参加者だった方です。熱心なリピーターがかんさつ会メンバーに加わるという流れは、当会の伝統のようになっています。このように仲間の輪が広がり、新たな参加者を迎えるという流れは、かんさつ会の目的の一つである生物多様性保全の普及啓発の上で理想的だと考えています。

第128回井の頭かんさつ会レポート

第128回井の頭かんさつ会レポート

「生き物の冬越し」

日時:2015年12月13日(土)10:00~12:00

主催: 井の頭かんさつ会
後援: 東京都西部公園緑地事務所
案内
村上 健太(NACS-J自然観察指導員)
高久 晴子
小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
佃 和夫(NACS-J自然観察指導員)
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
大原 正子
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
日置 日出男(森林インストラクター)
上村 肇
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)
大橋 博資

参加者30名(大人23名、子供7名)

レポート

冬は太陽の光が弱く気温が低いため、生き物にとっては暮らしにくい季節ですが、植物も動物もそれぞれの方法で適応して冬を乗り切っています。今回は生き物の中でも昆虫をメインに観察し、冬でも昆虫が見られることを実感していただこうと企画しました。 常緑で冬に花を咲かせるヤツデには様々な昆虫やクモが集まります。常緑というだけでなく、大きな葉で太陽の光を浴びるので、周りの木々よりも少し暖かいのです。葉をめくるとヨコバイ類やチャタテムシ類、カイガラムシ類などたくさんの小さな昆虫やクモがみつかります。参加者は楽しそうに葉をめくって虫を探しました。特に子供さんは嬉々として葉をめくり、いろいろな虫を見つけていました。 日本庭園の東屋にはオオミノガのミノムシがいました。5年ぐらい前には寄生バエの影響で生息数が激減したこと、さらにここ数年では、その寄生バエに寄生するハチにより、オオミノガの数が回復しつつあることを説明すると、自然の複雑さに参加者は感心しきりでした。 オオミズアオの繭が隠れている木の隙間を観察した時には、昆虫は寒さや風を防ぐため、または鳥などの天敵に見つからないために落ち葉の下やいろいろな隙間に入り込もうとすると説明しました。サシガメの幼虫もクヌギカメムシの卵塊も、隙間や影になる場所を選んで冬越しします。自然の叡智に興味が広がります。 当日は小雨が降ったり止んだりと気温が低い生憎の天気だったので、クロスジフユエダシャク雄が飛んでおらず、参加者と一緒に探しました。冬に繁殖するためだけに羽化してくる虫の話がしたかったので、見つからなくても一通り説明し終わったところで、玉川上水の擬木柵にチャバネフユエダシャク雌が発見されました。通常夜行性の昆虫がまるで観察会のために出て来てくれたような出来事に、参加者だけでなく案内人も興奮気味でした。 観察のクライマックスは小鳥の森南側でウラギンシジミ探しです。成虫で越冬するする小さなチョウが葉の裏に隠れているので、子どもも大人もみんな目を凝らして木の枝を見つめます。「あ!いたいた!」「まだ分からない」とにぎやかに話しながら、ゲームのように楽しむことができました。
 参加者からは「冬でもたくさんの昆虫など生き物がみられるのですね」という感想を頂きました。冬の自然を見る目が変わり、冬の公園の楽しみが増えたことだとうれしく思います。

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第127回井の頭かんさつ会レポート

第127回井の頭かんさつ会 

タイトル  「果実と種のすべて」   ~大きさ・色・かたちのすべて~

■実施年月日 2015年11月15日(日)10:00~12:00

■参加者数  一般参加者19名 (大人16名、子ども3名)

  • 実施場所 ボート乗り場前~七井橋~お茶の水池北岸~藤棚周辺~梅林~弁財天周辺 ~井の頭地区公会堂
  • 実施レポート(作成:第127回班リーダー 日置 日出夫) まず全員に、種・種子・果実・木の実など様々な呼び方をされているが、それはなぜか、どう違うのか、何が違うのか、その違いはなぜかなどについてリーダーから簡単に説明があり、各班ごとに実際の種子の観察がスタートしました。自らは移動手段を持たない植物が、子孫を残し種の保存を図るための様々な方法と工夫(鳥などの動物を利用する種子・風を利用する種子・水を利用する種子・自らの力を利用する種子など)の実物を観察し、驚いたり感心したりの連続です。屋内では、あらかじめ集めておいた様々な種類の種子・種・木の実をグループごとに広げ、各リーダーの説明と実際に手で触り、ルーペ・実体顕微鏡を使っての細かい部分までの観察です。イイギリの小さな赤い実の中にはいくつの種が詰まっているのか?サイカチのさやで石鹸が本当にできるのか?などなどを確かめながら、自然の素晴らしさと楽しさを受け止め、ますます自然を大切にしなければならないこと実感した観察会でした。
  • そんな中でも様々な種子を食べるヒヨドリは種子散布に非常に貢献しているという話や、ヒメガマの5センチほどの小さな房の中に数万の真綿のような小さな種が隠れていて、時期が来ると一斉にあたりが真っ白になるくらいに風に乗って飛び立つ工夫、鳥にたくさん散布してもらうために色と味を工夫しているムクノキなどを1時間にわたって観察し屋内のかんさつ場所に移動しました。
  • まず目についたのは「ハナミズキ」の真っ赤な種子。なぜ真っ赤なのか?構造はどうなっているのか?などについてじっくりと実物を観察します。次に観察した種子は「イロハモミジ」。プロペラのような独特の形はどうしてなのか、実際にどう飛んでいくのか、など、参加者一人一人がわいわい言いながら飛ばし確かめていました。
  • 今にも雨粒が落ちてきそうな天気の中、参加者19名とスタッフ12名の計31名が3班に分かれて定刻にスタートしました。

第126回井の頭かんさつ会レポート

第126回井の頭かんさつ会

「かいぼりで変った池の生き物  ~種類・数・行動~」

2015年10月24日(土)10:00~12:00

主催:井の頭かんさつ会
後援:東京都西部公園緑地事務所
案内:
村上 健太(NACS-J自然観察指導員)
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
上村 肇
大橋 博資
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)
大原 正子
高久 晴子
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
日置 日出男(森林インストラクター)
佃 和夫(NACS-J自然観察指導員)
参加者:20名(大人15名、子供5名)

レポート

井の頭池では、水質浄化と外来生物の駆除を目的として、2014年1月に池の一部(お茶池、ボート池)の水を抜く”かいぼり”を実施しました。2015年の冬にも2回目のかいぼりを行います。その前に1回目のかいぼりの結果として、池の生き物はどう変ったのかを観察しました。
事前の案内文や開始時に参加者に対して「増えた生き物、減った生き物、行動に変化のおきた動物はいるでしょうか?」と問いかけました。かいぼりの効果を生き物の側面から観察していきます。
まず前回かいぼりを実施していない弁天池を観察しました。弁天池では11月のかいぼりのためにオレンジ色のフェンスが設置されていました。弁天池では、本来の井の頭池に近づける為に池の水質を改善しなければならないことや、外来魚がいることで池の生態系が壊れていることなど、弁天池に起こっている問題を話しました。参加者には何度もうなずく方が多く、かいぼりの必要性を理解して頂いたようです。弁天橋を通る時に「かいぼりをして、鯉のその後はどうするのか」という質問が参加者から出ました。それに対し「鯉はもともと井の頭池にいた生き物ではなく、水底の泥を巻き上げて水底の水草や小動物を食べてしまうため生態系に悪影響が強いため、今回のかいぼりでは駆除対象になります。」と回答すると、納得されたようでした。
野口雨情歌碑の近くではハシビロガモやオナガガモがいました。前回のかいぼり後それまで少なかったコガモや見られなかったオカヨシガモが見られるようになった事、バンが繁殖をした事、それは水草が復活して食料が増えたからからだと思われることをお話しすると、かいぼりで水草が増えたことで生態系が豊かになった事を実感して頂いたようです。ボート池ではキンクロハジロが水中に潜って獲物を採る行動が観察され、これも水底の生物層が豊かになったことをが要因として考えられることを解説すると、参加者一同喜んでいました。
お茶池北岸柳付近では「かいぼり隊」がその日捕獲された在来生物や外来生物を展示し普及啓発を行っており、そこで現在の池の生き物の種類について話しました。1回のかいぼりではブラックバスやブルーギルの数をゼロにはできなかったこと。ブラックバスが少なくなった為にブルーギルやアメリカザリガニが逆に増えてしまっている事など問題点をお話しし、2回目3回目のかいぼりの課題であることなど、かいぼりの意義を伝えました。
ひょうたん池に移動し、「井の頭かんさつ会」による保全活動を見学しました。前日に神田川に設置していた張り網や水中に沈めておいたドームカゴ網を上げて中の生き物を観察しました。獲物は少なかったですが、生物を捕獲し調査することの重要性も話しました。
事前に池の3カ所(弁天橋、お茶橋付近、七井橋)で池の水を汲み番号を書いたペットボトルに入れ、どの番号がどの場所で汲んだ水か参加者に考えて頂きました。かいぼり未実施の弁天橋のものが最も透明度が低く、参加者にもかいぼりによる水質浄化作用を実感して頂けたと思います。
今回の観察会は池の生き物を通じて、かいぼりの効果や意義を伝えるものでした。1回目でかいぼりの効果が出た良い側面と、これから解決したい課題を案内人と参加者で話せた事で次回かいぼりに向けた市民の理解が進み、かいぼりのバックアップになったと思います。(村上健太)

第125回井の頭かんさつ会レポート

第125回井の頭かんさつ会 

■タイトル  「野鳥観察を楽しもう」

■実施年月日 2015年9月26日(土曜日)9:30~12:00

■参加者数  一般参加者名 43名(大人36名+小人7名)

井の頭かんさつ会スタッフ11名

  • 実施場所 井の頭公園駅前~ボート池~七井橋~お茶の水池~弁天池~御殿山~玉川上水~小鳥の森
  • 実施レポート(作成:第125回企画担当 高野 丈) きわめて鳥が少ない状況で始まった観察会でしたが、すぐに転機が訪れました。池の畔でハト大の鳥が対岸から飛んできました。ドバトかキジバトかと思いましたが、すぐに飛翔形が違うことに気づきました。ツツドリでした。そのツツドリはあろうことか、住宅に隣接するサワラのこずえに丸見えの状態でとまったのです。そして、そのまま10分以上もいてくれたので、幼児からシニアまで望遠鏡を覗いてしっかりと観察できました。普通種で勝負と思っていた私はなぜか狼狽し、初めて本格的にバードウォッチングする人もいることを意識し、「こんなこと普通はないんです」「これをスタンダードだと思わないでください」などとなぜか断りました。材料がない状況でいかに空腹を満たしてもらおうかと料理を考えていたら、メインディッシュの食材が不意に手に入ってしまった感じでした。公園に樹木があり、樹木につく毛虫やイモムシがいて、渡りの途中でエネルギー補給するツツドリやホトトギスがいるということを、わかりやすく説明できました。その後も、留鳥から夏鳥まで、いろいろな鳥をじっくりと観察し、井の頭公園の自然環境との関係を簡単に説明してまとめました。
  • キンモクセイ香る井の頭公園で125回目の井の頭かんさつ会を開催しました。今回のテーマは「野鳥観察を楽しもう」。10年前はいかに珍しい鳥を探し出すかに執心していましたが、その後学んでいくなかで、それは本道ではないことに気づきました。今は普通種でもしっかりと観察して、知っているようで知らなかったことを発見しようというスタンスで探鳥会をやっています。そして、ある環境のなかで鳥はどういう位置にいて、どういう役割を果たしているのかということを、広い視野で生態系をみながら考え、伝えることを心がけています。ですから、今回もカルガモやキジバト、ハシブトガラスをじっくり見るのでいいと考えていました。

第124回井の頭かんさつ会レポート

第124回井の頭かんさつ会

タイトル 「植物と動物の夜の不思議」 ~なぜ夜に活動するの?~

■実施年月日 2015年8月8日(土)18:30~20:30

■参加者数  一般参加者 48名(大人30名、子ども18名)+ 保全活動班2名

案内人 井の頭かんさつ会スタッフ12名

■実施場所: ボート乗り場前(集合)→七井橋 →お茶の水池北岸 →野草園 →雑木林→玉川上水 →第二公園(解散)

■実施レポート (作成:第124回企画担当 村上 健太)

8月恒例の夜の観察会は今年も大人気です。参加者50名、案内12名の総勢62名の大集団となりました。これを5つの班に分けて、班ごとに違う色のライトリング(発光する腕輪)をつけて出発です。今回は副題を「なぜ夜に活動するの?」とし、夜に活動する動物や植物が、夜を選んで活動する理由を考えつつ観察することを目標としました。

ボート乗り場からスタートして七井橋に移ると、アブラコウモリが飛び回り始める時刻です(当日の東京の日没は18:39)。バットディテクタでコウモリの出す超音波を聞くと、大人も子供も歓声を上げました。夜に活動を始めるゴイサギが飛び立つところを七井橋の上から待ちましたが、今回は出会えませんでした。足下の橋の欄干に網を張るズグロオニグモの説明をすると、こんな所にクモがいた事に親子が驚き、興味深げに観察していました。

今回初の試みとして、夜間のライトに照らされた水面に集まるミジンコを観察しました。昼と夜に採取した水面の水と、夜にライトの当たる水面の水をそれぞれボトルに入れて比べてみると、ライトの水には多くのミジンコが観察されました。ミジンコは昼間には底の方に隠れていて、夜間に水面付近に移動し、ライトの当たる部分に集まります。そんな微生物の行動の不思議を参加者も実感したようです。

夜に花が咲くカラスウリは注目の観察対象ですが、他の木々を覆ってしまう雑草です。公園事務所に今回の観察会のためにカラスウリを除草しないでいて頂いたため、きれいな花を観察できました。この時「何で夜に咲くのでしょうか」と参加者に問いかけると、「夜に花粉を運んでもらうから」とすぐにほぼ正解が出ました。そこでじっくりと花の形を観察しました。花筒の長さとスズメガの関係を説明すると、「他の夜に咲く花に花粉を運んでしまうことも多いのでは」と一歩踏み込んだ疑問も出ました。

カタバミの就眠運動や、夜に休んでいるニホンミツバチ、夜には集団で休むヨコヅナサシガメといった、夜に休んでいる生きものもしっかり観察しました。

活動最後の山場は第二公園でセミの羽化観察です。今年は例年より羽化するセミの数が少なかったですが、それでも羽化のために木に登るもの、上半身だけが出て来たもの、翅を伸ばし途中のものなど何匹も見つかり、それぞれの班がじっくりと観察できました。初めてセミの羽化を観察した参加者も多く、がんばって羽化しようとする姿に感動したと語ってくれました。

 

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今回の案内では「何で?」「何故でしょう?」と参加者に呼びかけました。その都度参加者自身で考えて自分也の言葉で答えて頂きました。正解を知る事だけを目標にするのではなく、生き物に対する疑問を持つ楽しさが伝わっていればうれしいです。

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第123回井の頭かんさつ会レポート

123回井の頭かんさつ会                       

■タイトル  「ふしぎな生きもの 変形菌

■実施年月日 2015年7月19日(日) 午前10:00~12:00

■参加者数  一般参加者名 24名(大人22名+小人2名)

井の頭かんさつ会スタッフ11名+臨時スタッフ&講師4名

  • 実施場所 井の頭公園ボート乗り場前~ブルースカイカフェ付近~井の頭地区公会堂~井の頭第二公園~小鳥の森
  • 実施レポート(作成:第123回企画担当 高野 丈)私が所属している「日本変形菌研究会」にはプロの研究者からアマチュアまで多様な会員がおり、その中には幼稚園児から変形菌を研究しているという中学生もいます。増井真那君はいわゆる「スーパー中学生」で、小学生のときから自由研究コンクールや科学コンクールで文科大臣賞、総理大臣賞など数々の賞を受賞している少年です。私は彼を講師に立てて会を運営することを企画しました。他にも「日本変形菌研究会」から3名の先輩方に応援していただきました。変形菌とはどんな生きものかを理解したところで再び野外へ。2班に分かれて小鳥の森の周囲で変形菌を探しました。落ち葉をめくり、切り株や樹皮に目をこらし、数種を発見することができました。あっという間に時間が過ぎ、終了の時間に。外部から講師を招くという通常とは変則の運営でしたが、充実した内容に参加者は一様に満足したことと思います。
  • 今回のテーマは案内できるスタッフが少ないこともあり、募集定員を絞りました。参加者の多くは変形菌観察経験がないか、機会の少ない方ばかり。まずは、変形菌の子実体を何種か観察してスケール感を捉えてもらおうとブルースカイカフェ近くの切り株へ移動し、観察しました。その後、井の頭地区公会堂に移動し室内での講座。真那君がパワーポイントを使って「変形菌」の概要をレクチャーしました。講座では子実体のほか、真那君が飼育している変形体も見せてもらいました。
  • 井の頭かんさつ会11年目にして初めてのテーマが「変形菌」。一般にはなじみが薄いものの、身近な環境で観察することができる不思議な生きもの。アメーバ状の変形体はもちろんのこと、子実体の形や色が多様で魅力的です。「変形菌」はメイン企画担当の私が公私とも関わっているということもありますが、生態系の中で大切な役割を担っている生きものであり、120回以上開催している井の頭かんさつ会で紹介しておきたいと考えました。