第62回井の頭かんさつ会レポート

第62回井の頭かんさつ会

テーマ: 「夜の生きものしらべ」


日時: 2010年8月14日(土) 午後6:30~8:30

場所: 井の頭公園

主催: 井の頭かんさつ会

後援: 東京都西部公園緑地事務所

集合: 午後6時15分 井の頭池ボート乗り場前

案内:

高野 丈(NACS-J自然観察指導員)

田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)

小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)

大原 正子

佐藤 誠

田中 雅子(NACS-J自然観察指導員)

日置 日出男

上村 肇

竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)

参加者: 39名


親睦会

日時: 2010年8月14日(土) 午後9:00~11:00

会場: 七井の月


レポート

2005年のかんさつ会立ち上げ以来、8月のかんさつ会は毎年恒例、夏の夜長のナイトウォッチングと決まっています。その伝統を今年は私が主担当として受け継ぎました。毎年同じことをやっても飽きないほど、夏の夜は面白い観察ができるのですが、今年は少し切り口を変えて、参加者全員で夜の生きものを調べよう!というコンセプトで企画しました。この夜のかんさつ会は毎回大人気で、基準定員を大幅に上回る39名の参加者を集めて会を実施しました。

夜咲く花、カラスウリから始め、夜行性のコウモリの観察、樹液に集まる昆虫調査、水中の生きものの夜の生態、ライトトラップ(光に集まる昆虫調査)と進めました。

第一の調査はカラスウリはどうやって「夜」を感じているかで、体内時計か明るさかという点については明るい時間にかぶせものをすることで、時間ではなく明るさの変化(暗さ)に反応して開花していることがはっきりしました。また、どの部分で明るさを感じているかについては、いろいろな部分を覆ってみたところ、やはり花の部分であることがわかりました。

第二の調査は天然樹液、人工樹液、どちらが昆虫に人気か?です。樹液が出ているコナラの隣のコナラに私が独自に研究したスペシャル樹液を仕込み、皆で確認してみました。スペシャル樹液はカルピスがベースで、それに焼酎、酢、蜂蜜を配合して作りました。結果は天然の樹液の圧勝!にわか仕込みの樹液もどきでは全くかないませんでした。

その後コウモリをカウントしたり、寝ている魚を観察したり、開花したカラスウリを観察したりして会は順調に進んでいました。しかしその後、ライトトラップの発電機がガス欠になったと会のメンバーから連絡が入り、ずっこけました。結構大がかりな準備が必要だったし、公園には許可をいただいたし、今回のプログラムの目玉の一つだったからです。しかしながら、電源がなければ蛍光灯もブラックライトも点灯できません。それでも、与えられた条件でかんさつ会を続けるしかないので、参加者の情報を頼りに別の樹液の出る樹を確かめたりと内容を調整したり。ライトトラップも明るい蛍光灯やブラックライトは点灯できなくなったものの、メンバーが頑張って白い幕に懐中電灯やポケットブラックライトを点灯させて何とか虫を集めていたので、少しだけ昆虫を観察することはできました。

そしてナイトウォッチング最後のプログラムはセミの羽化観察。やはり夏の夜はセミの羽化観察がメインイベントです。アブラゼミやツクツクボウシの羽化を観察し、夜と生物多様性の関わりについてお話をしてかんさつ会を終了しました。

かんさつ会の後はこちらも恒例、井の頭かんさつ会の納涼会!今年は久々に七井の月を会場に、夜半まで楽しく歓談しました。

(レポート:高野)

第61回井の頭かんさつ会レポート

第61回井の頭かんさつ会

テーマ: 「夏の昆虫ウオッチング」


日時: 2010年7月24日(土) 午前10:00~12:00

場所: 三角公園・ひょうたん池周辺

集合: 午前9時45分 井の頭公園駅(京王井の頭線)前の広場

主催: 井の頭かんさつ会

後援: 東京都西部公園緑地事務所

案内:

高久 晴子

小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)

田中雅子(NACS-J自然観察指導員)

田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)

高野 丈(NACS-J自然観察指導員)

大原 正子

佐藤 誠

日置 日出男

大橋 博資

上村 肇

参加者:29名


レポート

当日は、朝から熱中症が心配されるような猛暑日。それでも暑さに負けず参加してくださった方々の熱心さに感服しつつスタートしました。

昆虫が少しでも観察しやすいように、全体を大人班2つと子ども班1つの3班に分け、予め決めておいたローテンションで観察して回ります。昆虫は公園のどこででも見つけられるのですが、今回の目当ては、単に昆虫を見つけるだけでなく、その生活ぶりをじっくりウオッチングすることでしたので、いくつか的を絞って、ゆっくり観察してもらうことにしました。

まずは、昆虫界きっての飛行の名手、トンボです。ひょうたん池や神田川には、コシアキトンボ・ショウジョウトンボ・オオシオカラトンボ・モノサシトンボやコオニヤンマなどのトンボが飛び回っています。休む暇なく縄張りを巡回し、ライバルをけん制したり追いまわしたり、飛びながら交尾したり。そんなダイナミックな動きをじっくり見ていると、お馴染みだったはずのトンボからも、今まで気づかなかった面白い発見があったのではないでしょうか。

一方、エゴノキやミズキの木陰では、それらの木に依存してひっそりと暮らす小さなカメムシやゾウムシなどの昆虫に目を向けました。

エゴノキでは、エゴツルクビオトシブミという名前の小さなゾウムシ科の昆虫と、その昆虫が作った揺り籠を観察しました。揺り籠は卵を産みつけた葉をくるくると巻いてつくります。卵から孵った幼虫は親虫が作ってくれた揺り籠の葉を食べて成長するのです。こんな小さな昆虫がこんなにも精巧な揺り籠をつくる不思議さには、何度見ても驚かされますね。

また、たわわに実ったエゴノキの実には、エゴヒゲナガゾウムシが、これも実に産卵しにきているのを観察できました。このゾウムシの顔のユニークさも一度見たら忘れられないものです。

一方、ミズキには、背中にハートのマークをもつエサキモンキツノカメムシが孵化したての幼虫をしっかり守っている様子が見られました。寄生蜂やアリ・クモなどから身を挺して子を守る母虫の姿には、ハートのマークにふさわしい母性愛を感じてしまうものです。

ミズキの葉裏では、母虫から自立した子どもたちが集団で隠れているのを発見。子どもたちはミズキの実の汁を吸っては兄弟たちと葉陰で過ごしながら成長していくのです。臭くて嫌われもののカメムシですが、そんな姿を見ると、ちょっと応援したくなりませんか。

三角公園は井の頭公園の中では数少ない明るく開けた草原で、シロツメクサやギシギシ、イネ科の野草などが一面に生えています。ちょうどモンキチョウのオスとメスがシロツメクサの蜜を吸っていました。モンシロチョウやヤマトシジミも地面近くを低く飛んでいます。またギシギシにはベニシジミの幼虫が見られました。 チョウたちは、自分のエネルギー源になる蜜を吸ったり、幼虫の餌になる食草を見つけて産卵するためにこの場所を訪れているのです。

伸び始めた草原を歩くと、ショウリョウバッタの幼虫が勢いよく跳ねて逃げました。

その他、蝋物質を見にまとったアオバハゴロモの幼虫と成虫、コガネムシやテントウムシの仲間なども観察しました。

今回観察したのは、井の頭に生息する昆虫のほんの一部ですが、それでも昆虫たちの多様な姿や生活ぶりを観察する楽しさが充分味わえたのではないかと思います。

スタッフの方は、参加者の健康第一を考えて、日影を選び、水分補給の時間も考慮しながらご案内しましたが、みなさん元気に観察を終えられたことが一番の成果だったと思います。

中でも子どもたちは暑さもなんのその。次々と昆虫を見つけては、はりきってスタッフに見せにきていたようですね。

これからも、多様な昆虫が生息できる井の頭公園の自然環境が守られていってほしいです。

(レポート:高久)

第60回井の頭かんさつ会レポート

第60回井の頭かんさつ会

テーマ: 「井の頭池の生き物つながり」


日時: 2010年6月20日(日) 午前10:00~12:00

場所: 井の頭池

集合: 午前9時45分 井の頭池ボート乗り場前

主催: 井の頭かんさつ会

後援: 東京都西部公園緑地事務所

案内:

田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)

大原 正子

高野 丈(NACS-J自然観察指導員)

高久 晴子

佐藤 誠

田中 雅子(NACS-J自然観察指導員)

大橋 博資

上村 肇

協力:

安藤伸良、酒井建樹、竹内隆一、藤森秀一朗、別紙直樹

参加者:26名


レポート

心配された雨雲を皆の執念で吹き飛ばし、梅雨時にしてはまあまあのお天気で観察会はスタートしました。 茶色に濁った井の頭池、そこにどんな生き物達がいるのだろう~参加者達のワクワクした気持ちが伝わってきました。

最初の探索場所はお茶の水池北岸の枝垂れ柳周辺。日ごろ外来魚調査に活躍しているスタッフがチェストウェーダー(胸まである胴長靴)とライフジャケットを着用して池に入り、水中に張り出た柳の根っこの下をサデ網やタモ網でガサガサ~~ すると、網の中には小さなエビ類やハゼ類が何匹も入っているではありませんか! 外来魚調査を始めたころには失われていた光景です。 それらをプラスチックトレイや透明ケースにいれて、皆でじっくり観察。皆初めて観る池の中の小動物に目をぱちくりでした。

次は藤棚の下に移動。、殆どの方たちはそこにあることも気づいていない水中の7つの土管の中の調査です。その土管は直径1m位で、その昔、公園が水生植物を生やそうと設置したらしいのですが、今はオオクチバスの産卵場所になっているため、我々が繁殖抑制活動を行っている場所です。 その土管の中をかき回すと、エビ類、ハゼ類が出てきて、それを網で掬いました。また、後から詳しく観るために底の泥も採取しました。

いよいよ弁天池畔の分園入口前でこの観察会のクライマックスを迎えました。顕微鏡での微細生物の観察です。 参加者たちも、プランクトンネットを使って、陸上からプランクトンの採取。 また、スタッフがいろいろな生き物や、プランクトンの入った池の他の場所の水も予め採取し用意しておきました。 糸のような小さなアカムシを実体顕微鏡で拡大してみると、そこには迫力のある真っ赤なアカムシが~ 肉眼ではただ濁っている池の水も、顕微鏡で100倍にしてみると、なんと美しいクンショウモ(植物プランクトン、緑藻類)の姿が~! 珪藻も藍藻も見えます~ ゾウミジンコやワムシもぴょこぴょこ泳ぎ回っています~

最後に、田中代表が、これらの小さな生き物達が他の生き物に食べられ、さらにその食べた生き物達も別の生き物に食べられて命が繋がっていくこと、そして、誰かが持ち込んだオオクチバスやブルーギルなどの外来生物が増えて、その繋がりがおかしくなったことを解説し、質疑応答も加えて観察会を閉じました。

この観察会は、普段目にすることの出来ない池の中の生き物達を観て、参加者はサプライズの連続だったかもしれません。

(レポート:大原、)

 

第59回井の頭かんさつ会レポート

第59回井の頭かんさつ会

テーマ: 『鳥たちは春の渡り中 ~春の夏鳥探鳥会~』


日時: 2010年5月16日(日) 午前9:00~11:00

場所: 井の頭公園

集合: 午前8時45分 井の頭池ボート乗り場前

主催: 井の頭かんさつ会

後援: 東京都西部公園緑地事務所

案内:

高野 丈(NACS-J自然観察指導員、井の頭バードリサーチ代表)

田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)

小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)

大原 正子

佐藤 誠

高久 晴子

田中雅子(NACS-J自然観察指導員)

日置 日出男

大橋 博資

上村 肇

協力: 井の頭バードリサーチ

参加者:45名


レポート

59回目のかんさつ会は天候に恵まれて、爽やかな初夏の日和を迎えました。 今回のかんさつ会のテーマは探鳥会で、ねらいとしては季節移動中の夏鳥がこの井の 頭公園で羽を休めているのを「声」を頼りに見つけるというものでした。私の経験 上、野鳥の探し方は「声8割、眼2割」です。たとえ姿が眼に見えなくとも、声を聴く ことができれば「存在」に気づくことができるのです。

観察会は探鳥に出発する前に「声の予習」からスタートしました。私は同じ種のい ろいろな鳴き方のパターンを用意してきました。声を憶えるには鳴き方ではなく「声 質」そのものを憶えなければ、実践で役立たないのです。よく「焼酎一杯ぐいっ」や 「東京特許許可局」などいわゆる「ききなし」の話がありますが、フィールドではど れがそれだか全く見当がつかず、ほとんど役に立ちません。私は1種あたり数パター ンの声を用意し、スピーカーをつないで参加者に聞いてもらいました。子供班は小町 指導員の用意した別プログラムに取り組みました。

声の予習が終わったところで慣れている人班、初心者班、既に分かれていた子供班 の3班に分かれ、探鳥に出発しました。いよいよ実践というわけです。各班、リー ダーも 参加者も全員が聴覚に集中し耳を澄まして歩きましたが残念ながら「お目当ての声」 は 少なめでした。主に聴こえた「声」はカワセミとシジュウカラの声くらいでした。 すっかりカモの去った池で遠くにわずかに見えたバンの雛をフィールドスコープで観 察し、 森へ向かいました。 森では昨日聴いていたキビタキのさえずりを期待しましたが、今日はいなくなって いました。昨日の個体はかなりの歌い手だったので残念でした。その後、昨日下見で 観察したアオバトが再び「春の実」である各種サクラに来ているとの報で急行しまし たが、残念ながら間に合わず、到着したのは飛去した後でした。  気を取り直し、あらためて小鳥の森を徹底的に探すとセンダイムシクイとキビタキ ♀を かろうじて見つけることはできましたが、さえずり予習の実践ができたのはセンダイ ムシクイだけでさえずったのは2回だけ、キビタキは♀だったこともあり、目視がた よりでした。

この日、各班が眼と耳で観察できた野鳥をまとめるとカイツブリ、カワウ、オシド リ、カルガモ、バン、 キジバト、カワセミ、アオゲラ、コゲラ、ツバメ、ヒヨドリ、センダイムシクイ、キ ビタキ♀、 エナガ、シジュウカラ、メジロ、カワラヒワ、スズメ、ムクドリ、ハシブトガラスの 20種となり、 佐藤班ではシジュウカラの幼鳥をじっくり観察できたそうです。

今回は「声」にこだわったので、最後に各班が全て合流したところでイントロクイ ズを実施しました。 全問正解の方がいらっしゃれば記念の品をご用意しようと思いましたが、残念ながら 該当なしでした。

最後に国際生物多様性年にふさわしい話、月曜日に確認したミゾゴイが今朝の朝日 新聞に掲載された 事例を紹介し、当地の持つ自然環境が生物多様性保全上重要だということを参加者に お伝えして観察会を終えました。

(レポート:高野丈)

第58回井の頭かんさつ会レポート

第58回井の頭かんさつ会

テーマ: 「光と色の自然観察 ~春の色といきものたち~」


日時: 2010年4月18日(日) 午前10:00~12:00

場所: 井の頭公園

集合: 午前9時45分 井の頭池ボート乗り場前

主催: 井の頭かんさつ会

後援: 東京都西部公園緑地事務所

案内:

小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)

田中雅子(NACS-J自然観察指導員)

高久 晴子

田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)

高野 丈(NACS-J自然観察指導員)

佐藤 誠

大原 正子

大橋 博資

上村 肇

参加者:29名


レポート

今回の井の頭かんさつ会は「光と色の自然観察 ~春の色といきものたち」とテーマを設定してみました。 これまでのかんさつ会では鳥、植物、昆虫といった分野ごとか、 神田川、井の頭池といった場所に焦点を当ててテーマを決めていましたが、 今回は光と色というちょっと今までとは違ったテーマで解説を試みました。

ここ1週間弱、天気が不安定で、前日には4月半ばなのに雪が降るような天候でしたが、 当日は光が溢れ、輝くようないい天気で、まさに光と色をテーマにするには相応しい天候でした。 井の頭かんさつ会の”雨が降らない伝説”は相変わらず、健在でした。

観察は大人班2班と子供班にわかれ、そのぞれの班の講師から、 光や色について様々な角度から解説を行いました。班によっては、プリズムを用いて分光したり、 ペットボトルで青空のしくみを知ってもらい、太陽の光が白ではなく、 様々な色が混じって白く見えることを改めて認識してもらいました。

色としてまず、取り上げたのが、花の色です。青や紫色、赤やピンク、黄色、白、黒っぽい色など様々です。 花の色はどうして決まったのでしょうか?理由の1つは、花粉を運んでもらうため、 植物が持つ緑との対比で目立つ必要があります。 もう一つ、花粉を運んでもらうパートナーが好む色に進化していったと考えられます。 花を観察しながら、色や花のつくりを解説しました。

春は新緑が美しい季節です。新緑の緑にも焦点を当ててみました。 新緑が様々な緑となるしくみを説明し、芽吹きが始まった新葉には赤い色が非常に多いことも認識してもらいました。 これら新緑を日本人の伝統的な感性から、鶸色、萌黄、若草色、若葉色などの名前がついていることをお話しし、 理屈から離れて単に自然を”美しい”と感じてもらえる時間も大切にしてみました。

井の頭かんさつ会は5周年を迎えています。この5年間でのべ1500人以上の方々からご参加を頂き、 心から感謝しております。これからも都市公園の中の自然のドラマをやさしく解説していきたいと思っております。

(レポート:小町)

 

第57回井の頭かんさつ会レポート

第57回井の頭かんさつ会

テーマ: 「木々の履歴書 樹形」を楽しもう!


日時: 2010年3月22日(月祝) 午前10:00~12:00

場所: 井の頭公園

集合: 午前9時45分 井の頭池ボート乗り場前

主催: 井の頭かんさつ会

後援: 東京都西部公園緑地事務所

案内:

田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)

佐藤 誠

大原 正子

小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)

高久 晴子

田中雅子(NACS-J自然観察指導員)

日置 日出男

大橋 博資

参加者:37名


レポート

今回のかんさつ会は、「木々の履歴書=樹形」を楽しもう!というちょっとマニアックなテーマなので、参加者が集まるかどうか心配しましたが、心配は杞憂に終わり、37名(うち子供5名)もの参加者が集まりました。

観察は4班に分かれ、まずそれぞれのリーダーから、樹形とは先祖から受け継いできた遺伝的なものと、育った環境により後天的に得たものの組み合わせであることの説明をうけ、メタセコイヤやラクウショウ、ケヤキなどの姿を見ながら七井橋をスタートしました。

林の中の実生から育ったミズキの幼樹の形を見てその木が生まれついて持っている姿を知った後、大きく育ったミズキを見て、育った場所の日当たりや、ほかの木との競争、池の影響などでどんなふうに育ってきたかを考えました。

そのほかにもムクノキの板根がどうしてできたのか、その木の歴史を考えてみたり、過去に落雷で幹を真っ二つに裂かれたのであろうイロハモミジの木が頑張っているところや、2本のケヤキが1本にくっついてしまったのや、イヌシデがアカマツにもたれかかりそれでも空間の光を求めて枝を伸ばしているところを見て、その履歴を想像したりしました。

今回のかんさつ会では木にどんなことが起こったのかを想像することによって、 参加者の皆さんは自分がその樹木の気持ちになって、 その生きてゆく苦労を身をもって体験できたことが大きな収穫だったと思います。 木の根のすぐ近くが舗装されたり、人に踏み固められたり、 それによって木がストレスをうけている様子を見て「かわいそう」という声もあがりました。

我々に憩いと安らぎを与えてくれる樹木たちに、 都市公園という制約の中で、出来るだけストレスを与えず共存してゆくことが 非常に大切だということを再認識したかんさつ会でした。

(レポート:佐藤)

第56回井の頭かんさつ会レポート

第56回井の頭かんさつ会

テーマ: 「10倍楽しむ森の鳥」


日時: 2010年2月27日(土) 午前9:00~11:30

場所: 井の頭公園

集合: 午前8時45分 井の頭池ボート乗り場前

主催: 井の頭かんさつ会

後援: 東京都西部公園緑地事務所

案内:

高野 丈(NACS-J自然観察指導員)

田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)

大原 正子

佐藤 誠

高久 晴子

田中雅子(NACS-J自然観察指導員)

日置 日出男

大橋 博資

上村 肇

協力: 井の頭バードリサーチ

参加者:31名


レポート

前回のかんさつ会では池の水鳥を中心に冬鳥を観察し、 池の外来魚問題とそれが水鳥に及ぼしている影響までを知っていただく観察会でした。 今回は場所を池から森に移して冬鳥を目当てに森林性の野鳥を観察する探鳥会としました。

週間予報によると当日は前線が通過するタイミングに合い、雨ベースの予報になっていました。 それが数日前になると少し前倒しになってきて、当日は大丈夫かなと思いましたが、会の前日になると再び予報は悪化しました。 ちょうどかんさつ会の始まる時頃には10㎜ほどの強雨になるとの予報になってしまったのです。

スタート以来5年、今回で56回目の開催になる井の頭かんさつ会は雨で完全に屋外観察ができなかったことが一度もなかったのですが、 さすがに今回ばかりは屋外観察は無理だろうと雨プログラムのパワーポイントを夜中までかけて制作しました。

朝、強雨を予想しながら自宅バルコニーに出ると、意外にも外は小雨程度でした。 今日は強雨で間違いなく雨プロだと思い込んでいたので驚きましたが、これは束の間の小康状態で、 すぐに強い雨になると予想しました。でもうまくすれば少し観察ができるかもしれない... 雨脚が強くなるまでは野外観察し、天候が悪化してきたら屋内講座に切り替えようと考えました。

天気予報が悪かっただけに今回はさすがに悪天候を嫌ってキャンセルが続出しました。 無理もありません、時間に10mmも降ってきたらとてもではないですが、観察になりません。 屋内講座も夜中までかかって準備をしましたし、面白い内容を講演して参加者に楽しんでいただく自信はありましたが、 自然観察会はもちろん野外で観察するのが本道ですから、 それができなそうという予報を受けて参加申込者がキャンセルするのはやむを得ないと思いました。 満員御礼でスタッフ含め60名だった参加者は最終的に40名まで目減りしましたが、 強雨によって屋内講座になることが確実視されているにも関わらず約2/3の参加者が来てくれることには感激しました。

そして、その熱意が通じたのか、かんさつ会の始まった9時には予報を跳ね返して雨は止んだのです。 井の頭かんさつ会は雨で中止にならない、というジンクスと参加者の熱意が天に届いたようです。

天候だけでなく鳥運も味方してくれました。今季は冬鳥が少ないのですが、 ここ1週間ほどはそれに輪をかけて鳥が少ない状況が続いていました。 かんさつ会は冬鳥が少ない状況でも十分に楽しめる内容を準備していましたが、 やはり探鳥会はいろいろな種をたっぷり観察できるに越したことはありませんので参加者が退屈するのでは、 と少し不安がありました。

ところが雨上がりのかんさつ会ではそんな状況が一変し、 トラツグミからキクイタダキまでいろいろを観察することができました。 しかも、どれもじっくり観察でき、かんさつ会の狙いだった鳥類が何をしているかの行動観察がしっかりできました。 なにしろ案内役の私自身が心底面白かったと言えるような観察ができたのです。 充実した内容に、参加者の誰も退屈することなく時間は過ぎてゆき、 最後は繰り返し聞こえるアオゲラのドラミングを聞きながら生物多様性が豊かで広範な緑地帯と鳥が好む実のなる樹木の大切さについて話をし、 締めくくりの挨拶をして会を成功裏に終えました。

(レポート・写真:高野丈)

 

第55回井の頭かんさつ会レポート

第55回井の頭かんさつ会

テーマ:「10倍楽しむ池の鳥」~エサやりのない池は面白い!~


日時: 2010年1月17日(日) 午前10:00~12:00

場所: 井の頭池~神田川

集合: 午前9時45分 井の頭池ボート乗り場前

主催: 井の頭かんさつ会

後援: 東京都西部公園緑地事務所

案内:

田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)

小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)

高野 丈(NACS-J自然観察指導員)

大原 正子

佐藤 誠

高久 晴子

田中雅子(NACS-J自然観察指導員)

日置 日出男

大橋 博資

上村 肇

参加者:34名


レポート

「エサやり自粛でカモが激減したので、池がつまらなくなった。」 という声をエサやりをしていなかった鳥好きの人からも聞くことがあります。 でも我々は逆で、池が面白くなったと思っています。その違いは、池の鳥を見る見方の違いからきているようです。 それで今回は、普通の探鳥より10倍は楽しめる鳥の見方を紹介し、 「エサやりのない池は面白い!」ことを示すことにしました。それは鳥たちの行動を観察し、 彼らが何を考えているのか想像することです。

かなり冷え込んだ朝でしたが、参加者に1人の欠席もありませんでした。 参加者が増えた最近では無かったことです。 その34名と案内者10名が、意見交換がしやすいように、5つの班に分かれて観察をスタートしました。 我々の班は最初に、今ごろ卵を抱いているカイツブリを七井橋から観察。 するといろいろなカモやオオバンが寄って来たので、 種類の見分け方や、身体の造りの違いと食べる物の関係などを説明しました。

その後は、→弁天池→ボート池→神田川と進みながら、 池の鳥たちがどこに多くいてどこにいないか、そしてどんなことをしているか観察しました。 そういう目で見るといろいろなことに気づきます。

例えば、

・弁天池にはお茶の水池やボート池と比べてカモがとても少ない

・しかしその一角、分園の白鳥池にはオナガガモがたくさん集まる

・キンクロハジロやホシハジロは以前は弁天池に来なかったのに、エサやりが減ってから来るようになった

・しかし白鳥池にキンクロハジロやホシハジロがいるのを見たことがない

・お茶の水池でキンクロハジロが集まって休む場所が昨年とは変わった

・以前は毎日たくさん来ていたユリカモメが今はまったく来ない

・今朝池に少なかったカルガモが神田川にはたくさん、しかもカップルでいた

・最近神田川にいるオナガガモは池のオナガガモと違って人に寄ってこない

などなどです。

その都度、それがなぜかを考えてもらいました。 ヒントは、鳥が考えているのは基本的には3つ(①安全、②食べ物、③子育て)のことだけだということです。 鳥がいるのにも、いないのにも理由があります。 いないことも観察の重要な対象なのです。 問いかけを繰り返しているうちに、参加者の皆さんも鳥たちの考えをあれこれ想像するのに慣れてきたようでした。 鳥の種類によって形や色だけでなく暮らしぶりが異なり、好きな場所も違うことを分かってもらえたと思います。 鳥たちの暮らしを歪めてしまうエサやりがなければ、それがよく見えるのです。 いろいろな鳥が暮らすにはいろいろな環境が必要なことも理解してもらえたことでしょう。

弁天橋では皆の憧れの鳥・カワセミが飛来し、一同の目はそれに釘付けになりました。 しばらく池にいれば必ず見られる鳥なのですがね。 そこで、どちらも小魚を食べる鳥なのに、カイツブリは困窮しカワセミはそうでもない理由を考えてもらいました。 カイツブリが時季外れの子育てをしているのも窮状の表れです。 池の小魚が外来魚ばかりになっていることと、両者の魚の捕り方が違うことがその理由です。 もちろん、原因となる外来魚を池に持ち込んだのは人間です。

自然文化園が40年以上前から数えている池のカモのグラフや、 井の頭バードリサーチ(高野代表ほか)が2006年から秋~春の毎月カウントしているデータを示して、 井の頭池のカモの種類と数の移り変わりを説明しました。 大幅に増えたカモがいる一方で、ほとんど来なくなったカモもいます。 参加者はその大きな変化に驚いていました。 池と周辺の自然環境の変貌、そしてエサやりなど人間の行為の影響です。 それに順応できるカモは増え、できないカモは減ったのです。 大幅に増えていたカモはエサやり自粛で大幅に減りましたが、来なくなっていたカモは今も戻ってきていません。

40年余り前まで池に毎年500羽近く来ていたのに今はほとんど姿を見せないコガモを見に神田川を少し下りました。 今もそこには10羽近くが毎日来ているのです。 最初の2羽を見つけたところで全部の班が停止して、遠くから双眼鏡で観察しました。 コガモはとても臆病なので、大勢で近づくと間違いなく飛び去ってしまうからです。 人間の生活ゴミだらけの神田川のほうがコガモにとっては井の頭池よりマシらしいのが、 井の頭池ファンとしては悔しいです。 井の頭池にはコガモが安心して過ごせる場所や好きな食べ物が足りないのでしょう。 どんな池になったらコガモが戻ってきてくれるのか、考えてもらいました。

三角広場でまとめの話をして解散。「楽しかった。」という感想に混じって、 「鳥を見る目が変わりました。」という言葉をいただいたのが企画担当としてとても嬉しいことでした。 鳥たちの行動やしぐさの意味を想像するのは最初は難しいですが、続けているとしだいにできるようになり、 その結果、鳥たちのことをより深く理解できるようになります。 それはとても面白いし、大切なことです。 「カモが減って寂しいので、少しはエサやりを認めてもいいんじゃないの。」などと言う人は、 今日の参加者の中には1人もいないと思います。

(レポート:田中利秋)

第54回井の頭かんさつ会レポート

第54回井の頭かんさつ会

テーマ:「井の頭で星空と木星の観測」


日時: 2009年12月19日(土) 午後4:30~6:30

場所: 井の頭地区公会堂・井の頭公園

集合: 午後4時15分 井の頭池ボート乗り場前

主催: 井の頭かんさつ会

後援: 東京都西部公園緑地事務所

案内:

小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)

田中 雅子(NACS-J自然観察指導員)

田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)

高野 丈(NACS-J自然観察指導員)

大原 正子

佐藤 誠

高久 晴子

日置 日出男

大橋 博資

杉浦 千愛(NACS-J自然観察指導員)

上村 肇

参加者: 35名


忘年会

日時: 2009年12月19日(土) 午後7:00~9:00

会場: 吉祥寺駅近くの店


レポート

今回のかんさつ会は「井の頭で星空と木星の観測」というテーマで、地球を飛び出し、対象を宇宙へ向けてみました。

夕暮れ時にいつものボート乗り場前に集合し、井の頭地区公会堂へ。真っ暗会場に、ちょっと神秘的なBGMが流れ、参加者も何が始まるのだろうとウキウキの様子。

ここでは、3部構成で星や星座の解説を行いました。第1部は太陽系や宇宙についてです。太陽系の構成を分り易く説明し、木星については更に詳しく解説。

大赤班って何?

イオにはどうして火山があるの?

エウロパに生き物がいる可能性があるの?

などのちょっと難しい話題に子どもたちも興味深く聞き入っていました。太陽系の解説の後は、銀河や宇宙についてみんなで考えてみました。宇宙の大きさ縮小して、井の頭公園と比較してみると。。。身近なもの置き換えて考えると、ちょっとは感覚がつかめたようです。それにしても宇宙って広いでしょ!

第2部は季節の星座の解説。秋と冬の星座の見つけ方と、星座にまつわる神話を楽しみました。いろいろなギリシャ神話に大人も子どもも大喜びでした。第3部はミニ・プラネタリュウムを天井に張った天幕に映して、星空鑑賞。ちょっとロマンティックです。15分ほどで1年分の星座を楽しみました。

そして、いよいよ。野外での観測に出発です。西園のグランド中央で望遠鏡の準備をしていた先発隊と合流。少し寒かったけど、快晴・無風で、絶好の観測日和でした。始めに今見られる星と星座を全員で確認しながら探しました。その後、スタッフが持ち込んだ天体望遠鏡3台とフィールドスコープ3台、双眼鏡で惑星や星団を見てみました。木星の4つのガリレオ衛星がバッチリ見えました。木星の脇で小さな点が4つ点々と輝き、かわいい感じです。木星の直ぐ上にある海王星も見られました。望遠鏡で見てもただの点にしかみえませんが、「海王星を初めて見た!」と喜びの声が上がりました。双眼鏡で覗いてみると、また別世界です。星々が沢山見えます。アンドロメダ大星雲を探しましたが、見えた人、見えなかった人様々でした。一番美しかったのは、プレアデス星団で、まるで宝石箱のようでした。

井の頭公園でもこういった星々が見られることを感じてもらい、宇宙への想いを広げてもらいました。

(レポート:小町)

 

第53回井の頭かんさつ会レポート

第53回井の頭かんさつ会

テーマ:「聴いてみませんか、葉っぱからのメッセージ」


日時: 2009年11月29日(日) 午前10:00~12:00

場所: 井の頭公園

主催: 井の頭かんさつ会

後援: 東京都西部公園緑地事務所

案内:

日置 日出男

大橋 博資

田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)

小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)

高野 丈(NACS-J自然観察指導員)

高久 晴子

田中雅子(NACS-J自然観察指導員)

上村 肇

参加者:35名


レポート

心配だったお天気も薄日がさすまでに回復し、一年中で一番紅葉が 鮮やかな、まさに「錦秋」の一日。それだけでほとんど成功したといっても いいようななかで、第53回かんさつ会が行なわれました。

難しいテーマだったため、参加者が少ないのでは?という心配も何のその。フタを開けてみれば35名の方に参加いただき、3つの班に分かれて観察 がスタートしました。「葉っぱからのメッセージを聴こう」というテーマに対し、それぞれのリーダーが、それぞれの思いをこめて井の頭の池の周りをめぐりました。

大人は2つの班に分かれ、様々な葉っぱの形・色・香りの違いはどこから来 るのか?同じ木なのに形の違う葉っぱがついている?色の違いはなぜなのか? などなど正解の無い問いかけを、参加者みんなで出し合い、葉っぱの持つ 不思議な力・葉っぱの働きなどについて、触り・香りを味わい・楽しみながら考えていきました。 勿論トチノキ・カエデの仲間・イチイ・カヤ・クスノキなど沢山の葉っぱの名前の覚え方を知る事も大きな目的の一つでした。

子ども班は14人という大所帯で、葉っぱを集め、アルバムを作りながら観察を行ないました。葉っぱを集める過程で葉っぱの持つ役割・変化の不思議など を分かりやすく伝え、ゲームの要素を取り入れた活動とあわせて楽しみました。

ともかく天気にも恵まれ、紅葉真っ盛りの日程が味方してくれ、楽しいかんさつ会となりました。

(レポート:日置)