第116回井の頭かんさつ会レポート

第116回井の頭かんさつ会

「見つけよう冬のいろいろ」 発見する自然観察

平成26年12月20日(日)15:00~17:00

主催:井の頭かんさつ会
後援:東京都西部公園緑地事務所
案内:
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
大原 正子
高久 晴子
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
日置 日出男(森林インストラクター)
大橋 博資
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)
佃 和夫(NACS-J自然観察指導員)
村上 健太(NACS-J自然観察指導員)
参加者:23名(大人20名+子ども3名)

レポート

12月はテーマ選びに悩みます。冬は生き物の動きが少ないのに加え、時間帯が夕方だからです。とはいえ、見るべきものがないわけでは決してありません。そこで今回は、対象を限定せず、自然の中に散りばめられている面白いことを見つける観察会を行うことにしました。「発見する自然観察」は井の頭かんさつ会設立時からのメインテーマです。自分で発見できる力があれば、自分の周りの自然のかけがえのなさや、そこに起きている問題に気づけるからです。
しかし、参加申し込みの勢いはいまひとつ。久しぶりに定員に届きませんでした。多くの人には、誰かが見つけた面白いことを教えてもらえる、勉強会のような観察会のほうが参加しやすいのかもしれません。しかも残念なことに当日は雨。申し込み者の4分の1ほどのキャンセルが出て、結果的には、雨天会場にちょうどよい人数になりました。
雨プロのメニューは4つでした。
1つ目は、井の頭池とそこの生き物が「かいぼり」後にどう変わったかについて、池での活動を続けてきた田中が話をしました。予想していなかったことがいろいろ起きましたが、良いことも悪いことも、自然や生き物を理解する上でいずれも貴重なことでした。見続けている人だけが気づくことができる、「発見する自然観察」の好例だと思います。

2つ目は、毎日野鳥を観察している高野が、「野鳥観察3つの謎」の話をしました。カモのエクリプス(オスがメスに似た羽になっている状態)の謎、ムクドリの(冬の繁殖行動?)の謎、(夜、三鷹駅前や吉祥寺駅前に集まって眠る)ハクセキレイの謎のお話でした。謎に気づくこと、疑問を持つことが、より詳しい観察の動機となり、新たな発見へとつながります。

3つ目は、公園の昆虫の観察を続けている高久が、「コシアカスカシバ」というスズメバチそっくりの蛾の観察体験を聞かせてくれました。10年前にそれを初めて見てから、しだいに発見を積み重ねて、その生態に迫っていく内容でした。参加者だけでなく、そんな蛾が井の頭公園にいることを知らなかったスタッフも話に聞き入りました。

そして、最後は実践編。
スタッフが事前に拾い集めておいた、いろいろな樹の落ち葉をテーブル上に広げ、いつもより仔細に観察してもらいました。視覚も触覚も嗅覚も使うと、形や色の違いだけでなく、それぞれがもついろいろな特徴に気づきます。顕微鏡も使って観察したので、毛の有無やその生え方の違いなどもはっきりわかりました。お話の間静かだった会場は、スタッフのリードで観察が始まると、驚きや感嘆の声で一気ににぎやかになりました。時間が短かくて皆さん少し物足りなさそうでしたが、落ち葉程度のものでも、よく観察すればいくつもの発見ができることはわかっていただけたと思います。

かんさつ会終了後は、保全活動班のメンバーも加わって、吉祥寺の店で忘年会。個室だったため、他の客の声に邪魔されることもなく、気兼ねも不要で、にぎやかで充実した会になりました。
2014年は念願の「かいぼり」が実現しました。2015年もきっと良い年になるでしょう。

(レポート:田中利秋)