第82回井の頭かんさつ会レポート

第82回井の頭かんさつ会

「春の野草」~小さな姿に大きなパワー~

日時:2012年3月18日(日曜日)午前10:00-12:00
集合:午前9時45分 京王帝都井の頭線・井の頭公園駅前広場(井の頭公園入口前)
主催:井の頭かんさつ会
後援:東京都西部公園緑地事務所

案内

竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)
大原 正子
上村 肇
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
小町 友則(NACS-J自然観察指導員)
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
高久 晴子
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員)
日置 日出男(森林インストラクター)
大橋 博資

参加者: 29名 (大人24子供5)

レポート

前日まで雨の日が続き心配しましたが、当日は曇り空ながら天気も回復、まずまずの観察日和となりました。
テーマの「春の野草」は親しみ易いテーマでしょうか、子どもも交えた家族、カップル、歩き始めの1歳のお子さんから86歳のお年よりまで、幅広い世代の参加者が集まりました。グループ分けは子供及びその保護者の班を1班、大人班が2班という3班編成としました。テーマに関しての簡単なポイントと資料について説明のあと、グループごと上記観察コースに進みました。
各班、日頃見慣れたようで見過ごすことも多い野草を、改めてじっくり観て特徴や名前を確認しながら、野草たちの驚くべき「たくましさ」について質問したり、説明を聞いたりしてコースを回りました。
最初の場所は井の頭公園駅の北側、フェンスに囲まれた駅敷地の一角です。実はここ野草にとっては一種の「保護区」で、簡単に15種を越える野草が群がっています。ヨモギ、タンポポ、ハルシオン、ミチタネツケバナ、ヤエムグラ、オオアレチノギク、キュウリグサ、シロツメクサ、オランダミミナグサ、オニノゲシ、ムラサキハナナ、セイタカアワダチソウ、等々。足元の道端にも目がゆきます。まずはロゼットを作るもの、すでに花を咲かせはじめたもの、など野草の姿と名前のおさらいです。名前と姿をむすびつける中で質疑応答が活発になってきます。
道を挟んだ三角広場に移ると早速タンポポにも似た大小のロゼットが群がっています。アブラナ科のカキネガラシです。ロゼットの下を掘って長い根を見ます。
少し進んでオオバコの根も同様に見てみます。形は違うものの、どちらも地面に
生えた姿に対して、これから成長するため栄養を貯めた大きな根です。
リーダーが用意した写真で、それぞれの野草の親の姿・花や茎などを確認します。
子供班では、外来種(帰化植物)の原産地あてクイズを代表国の国旗を使っておこなうなど子供向け特別メニューも出て、大いに盛り上がりました。
次は井の頭池から続く神田川沿い、ゆうやけ橋の袂を見て回ります。ナズナ、ハコベ、ヒメオドリコソウ、キュウリグサの花を見、葉の匂いを嗅ぎ、茎の形を確認しながら進みます。
オオイヌノフグリの花はほんの一部しか開いていませんでしたが、アリが運ぶエライオソームのついた種、他家受粉・自家受粉併用の繁殖戦略などの簡単な補足説明がされました。
橋を渡り川縁に下りて、オニノゲシ、ハハコグサ、ウラジロチチコグサ、ギシギシ
などを見てから、ギシギシとカタバミの葉で10円玉磨き実験をしました。草の作る蓚酸は、ヨモギやノビルなど強い匂いと同様に本来は野草の虫除け対策だったといわれていますが・・・。
次は石垣に沿って駅方面に進みます。石垣の隙間から長い茎を伸ばすホトケノザ、
石垣の下にも群落を作っています。すぐ隣にヒメオドリコソウは花をつけているのにホトケノザは赤い蕾のようなもの以外、咲いた花がないのはどうしてでしょう。
同じ科の近縁種に見られる不思議な関係に改めて野草の不思議さに感心します。
あっという間に予定時間が近づき、特番「根掘り葉掘り」の根掘りの時間が厳しくなってきました。そこをなんとか急いでノビル、タンポポ、カラスノエンドウの根を掘り出し、神田川の水で土を落とし、鱗茎(ノビル球根)、タンポポの立派な根、カラスノエンドウの根粒も確認でき、お開きとなりました。

■レポーター所感
・ 何かおかしな今年の天気が続いていますが、遅れていた梅の花も咲き、やっと春らしくなってきました。野草たちも日を追うごとに葉を広げ、花を咲かせ始めています。心配した雨にも降られず、少し尻切れ気味でしたが、予定したメニューもなんとかこなすことができました。参加者の皆様には今回のテーマ“春の野草たちの小さな姿に秘められた大きなパワー”に賛同していただけたように思います。
野草は人によってはどうでもよい存在、また邪魔な存在とする人すらあるかも知れませんが、見れば見るほど知れば知るほど、その可憐な美しさやしたたかさに驚くばかりで、多くの人とこの楽しさを共有できることを望みます。貴重な都会の公園の全てにそうあれと期待するのは難しいとおもいますが、少なくとも一部には最低限の手入れのままの野草が見られる場所が残されることを祈ります。
「雑草という草はない。すべての草にはそれぞれ名前があって、自分に合った場所を選んで生を営んでいる。人間の勝手な都合で切ったり、刈ったりしてはいけない。」と昭和天皇が言われたとか、まさに至言と思います。
(レポート:竹内、写真:高野)