第61回井の頭かんさつ会
テーマ: 「夏の昆虫ウオッチング」
日時: 2010年7月24日(土) 午前10:00~12:00
場所: 三角公園・ひょうたん池周辺
集合: 午前9時45分 井の頭公園駅(京王井の頭線)前の広場
主催: 井の頭かんさつ会
後援: 東京都西部公園緑地事務所
案内:
高久 晴子
小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
田中雅子(NACS-J自然観察指導員)
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
大原 正子
佐藤 誠
日置 日出男
大橋 博資
上村 肇
参加者:29名
レポート
当日は、朝から熱中症が心配されるような猛暑日。それでも暑さに負けず参加してくださった方々の熱心さに感服しつつスタートしました。
昆虫が少しでも観察しやすいように、全体を大人班2つと子ども班1つの3班に分け、予め決めておいたローテンションで観察して回ります。昆虫は公園のどこででも見つけられるのですが、今回の目当ては、単に昆虫を見つけるだけでなく、その生活ぶりをじっくりウオッチングすることでしたので、いくつか的を絞って、ゆっくり観察してもらうことにしました。
まずは、昆虫界きっての飛行の名手、トンボです。ひょうたん池や神田川には、コシアキトンボ・ショウジョウトンボ・オオシオカラトンボ・モノサシトンボやコオニヤンマなどのトンボが飛び回っています。休む暇なく縄張りを巡回し、ライバルをけん制したり追いまわしたり、飛びながら交尾したり。そんなダイナミックな動きをじっくり見ていると、お馴染みだったはずのトンボからも、今まで気づかなかった面白い発見があったのではないでしょうか。
一方、エゴノキやミズキの木陰では、それらの木に依存してひっそりと暮らす小さなカメムシやゾウムシなどの昆虫に目を向けました。
エゴノキでは、エゴツルクビオトシブミという名前の小さなゾウムシ科の昆虫と、その昆虫が作った揺り籠を観察しました。揺り籠は卵を産みつけた葉をくるくると巻いてつくります。卵から孵った幼虫は親虫が作ってくれた揺り籠の葉を食べて成長するのです。こんな小さな昆虫がこんなにも精巧な揺り籠をつくる不思議さには、何度見ても驚かされますね。
また、たわわに実ったエゴノキの実には、エゴヒゲナガゾウムシが、これも実に産卵しにきているのを観察できました。このゾウムシの顔のユニークさも一度見たら忘れられないものです。
一方、ミズキには、背中にハートのマークをもつエサキモンキツノカメムシが孵化したての幼虫をしっかり守っている様子が見られました。寄生蜂やアリ・クモなどから身を挺して子を守る母虫の姿には、ハートのマークにふさわしい母性愛を感じてしまうものです。
ミズキの葉裏では、母虫から自立した子どもたちが集団で隠れているのを発見。子どもたちはミズキの実の汁を吸っては兄弟たちと葉陰で過ごしながら成長していくのです。臭くて嫌われもののカメムシですが、そんな姿を見ると、ちょっと応援したくなりませんか。
三角公園は井の頭公園の中では数少ない明るく開けた草原で、シロツメクサやギシギシ、イネ科の野草などが一面に生えています。ちょうどモンキチョウのオスとメスがシロツメクサの蜜を吸っていました。モンシロチョウやヤマトシジミも地面近くを低く飛んでいます。またギシギシにはベニシジミの幼虫が見られました。 チョウたちは、自分のエネルギー源になる蜜を吸ったり、幼虫の餌になる食草を見つけて産卵するためにこの場所を訪れているのです。
伸び始めた草原を歩くと、ショウリョウバッタの幼虫が勢いよく跳ねて逃げました。
その他、蝋物質を見にまとったアオバハゴロモの幼虫と成虫、コガネムシやテントウムシの仲間なども観察しました。
今回観察したのは、井の頭に生息する昆虫のほんの一部ですが、それでも昆虫たちの多様な姿や生活ぶりを観察する楽しさが充分味わえたのではないかと思います。
スタッフの方は、参加者の健康第一を考えて、日影を選び、水分補給の時間も考慮しながらご案内しましたが、みなさん元気に観察を終えられたことが一番の成果だったと思います。
中でも子どもたちは暑さもなんのその。次々と昆虫を見つけては、はりきってスタッフに見せにきていたようですね。
これからも、多様な昆虫が生息できる井の頭公園の自然環境が守られていってほしいです。
(レポート:高久)