第98回井の頭かんさつ会
「シダ入門 ~ シダってどんな植物?」
日時:2013年6月23日(日曜日)午前10:00~12:00
主催:井の頭かんさつ会
後援:東京都西部公園緑地事務所
案内:
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
日置 日出男(森林インストラクター)
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
大原 正子
高久 晴子
大橋 博資
上村 肇
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)
参加者:24名(大人20名、子供4名)
レポート
今回は井の頭かんさつ会として初めてのテーマ、「シダ」に取り組んでみました。地味なテーマなので、実はどれだけ参加者が集まるかと心配もしていましたが、予想外の人数の参加者に驚くと同時に、嬉しくもありました。
植物観察というと花の咲く植物(種子植物)が主体ですが、自然界には花を咲かせない植物たちもあり、それらもまた自然の構成要員であり、生物多様性を形づくる一員であることを感じていただきたくて企画しました。植物や花の進化を考えるうえでもシダは重要な位置づけにある植物で、花の咲く植物とは違ったくらしぶりを観ることで、さらに身近な自然のオモシロ発見をしていただくこともねらいでした。
とはいえ、あまりなじみのない対象なので、プログラムを二部構成とし、最初にスライドと印刷資料でシダ植物と観察のポイントを解説、その後に公園で実際にシダを観察しました。シダは見慣れないとどれも同じように見えてしまいますが、観るべき特徴を覚えると違いがわかってきます。シダはその形の美しさと葉裏の胞子嚢群(ソーラス)の色や形がさまざまで、それらを観るだけでも楽しいものです。入門編なので、できるだけ特徴のある覚えやすいシダをひとつひとつ観て歩きました。
誰もがその名前には聞き覚えのあるシダの前では「これがノキシノブ!」、またゼンマイの前では「これがあの食べるゼンマイ!初めて見た」という声も…。中軸に三角形の翼のあるゲジゲジシダも覚えやすいシダです。ベニシダの葉裏の美しい赤い胞子嚢群(ソーラス)を観察した時は、これは何の色?となり、包膜をはがしてみると、中は赤くなく、包膜が赤いことがわかりました。また、ソーラスは胞子を飛ばすためにとても周到な構造を持っていますが、実体顕微鏡で乾燥してくるとはじける胞子嚢も観察しました。
当日、実際に観察できたシダは約15種で、中には中級編のシダもあり、またイヌワラビのようにあまり特徴のないシダもあり、ちょっと難しかったかもしれません。また最初に室内で解説に時間をとった分、公園内の観察が駆け足になってしまったきらいがあり、反省点でもありますが、シダ植物の形のいろいろ、ソーラスのいろいろ、生育環境の違いなどが少しわかり、シダ植物観察の楽しさを味わっていただけたと思います。
これを機会に、いわゆる草花や木々のほかにも多種多様な生きものが自然界を形作っており、それぞれが長い進化の歴史とバランスのなかにいることにも思いを馳せていただけたらと思います。
(レポート:田中雅子、写真:高野)