第128回井の頭かんさつ会レポート
「生き物の冬越し」
日時:2015年12月13日(土)10:00~12:00
主催: 井の頭かんさつ会
後援: 東京都西部公園緑地事務所
案内
村上 健太(NACS-J自然観察指導員)
高久 晴子
小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
佃 和夫(NACS-J自然観察指導員)
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
大原 正子
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
日置 日出男(森林インストラクター)
上村 肇
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)
大橋 博資
参加者30名(大人23名、子供7名)
レポート
冬は太陽の光が弱く気温が低いため、生き物にとっては暮らしにくい季節ですが、植物も動物もそれぞれの方法で適応して冬を乗り切っています。今回は生き物の中でも昆虫をメインに観察し、冬でも昆虫が見られることを実感していただこうと企画しました。 常緑で冬に花を咲かせるヤツデには様々な昆虫やクモが集まります。常緑というだけでなく、大きな葉で太陽の光を浴びるので、周りの木々よりも少し暖かいのです。葉をめくるとヨコバイ類やチャタテムシ類、カイガラムシ類などたくさんの小さな昆虫やクモがみつかります。参加者は楽しそうに葉をめくって虫を探しました。特に子供さんは嬉々として葉をめくり、いろいろな虫を見つけていました。 日本庭園の東屋にはオオミノガのミノムシがいました。5年ぐらい前には寄生バエの影響で生息数が激減したこと、さらにここ数年では、その寄生バエに寄生するハチにより、オオミノガの数が回復しつつあることを説明すると、自然の複雑さに参加者は感心しきりでした。 オオミズアオの繭が隠れている木の隙間を観察した時には、昆虫は寒さや風を防ぐため、または鳥などの天敵に見つからないために落ち葉の下やいろいろな隙間に入り込もうとすると説明しました。サシガメの幼虫もクヌギカメムシの卵塊も、隙間や影になる場所を選んで冬越しします。自然の叡智に興味が広がります。 当日は小雨が降ったり止んだりと気温が低い生憎の天気だったので、クロスジフユエダシャク雄が飛んでおらず、参加者と一緒に探しました。冬に繁殖するためだけに羽化してくる虫の話がしたかったので、見つからなくても一通り説明し終わったところで、玉川上水の擬木柵にチャバネフユエダシャク雌が発見されました。通常夜行性の昆虫がまるで観察会のために出て来てくれたような出来事に、参加者だけでなく案内人も興奮気味でした。 観察のクライマックスは小鳥の森南側でウラギンシジミ探しです。成虫で越冬するする小さなチョウが葉の裏に隠れているので、子どもも大人もみんな目を凝らして木の枝を見つめます。「あ!いたいた!」「まだ分からない」とにぎやかに話しながら、ゲームのように楽しむことができました。
参加者からは「冬でもたくさんの昆虫など生き物がみられるのですね」という感想を頂きました。冬の自然を見る目が変わり、冬の公園の楽しみが増えたことだとうれしく思います。