第76回井の頭かんさつ会
「秋の鳴く虫・鳴かぬ虫」 ~昆虫たちの小さい秋を見つけよう~
日時: 2011年9月18日(日) 午前10:00~12:00
場所: 井の頭公園
主催: 井の頭かんさつ会
後援: 東京都西部公園緑地事務所
案内:
高久 晴子
小町 友則(NACS-J自然観察指導員 森林インストラクター)
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
大原 正子
日置 日出男
大橋 博資
上村 肇
参加者:39名(大人25名、子ども14名)
レポート
「秋の鳴く虫・鳴かぬ虫」と題して行われた第76回かんさつ会でしたが、秋にはほど遠い夏の暑さに見舞われました。
参加者全員への注意事項の一番目には、「水分等を補給して、熱中症対策に対応してください」と、まるで夏のかんさつ会のようなはじまりでした。
はじめに空が開けた明るいお花畑のような場所に移動して、花の蜜を求めて飛び回る昆虫を探しまた。
ツマグロヒョウモンやキチョウがひらひら飛んでいます。よく見ると小さなヤマトシジミやイチモンジセセリの姿も見えます。そんななか、ずんぐりむっくりなクマバチが、ハナ(カク)トラノオの花にしがみついているのが見えます。クマバチは、身体が大きくその花の中には入れません。チョウのような長い口も持っていません。どうやって蜜を吸うのでしょう。よく見るとクマバチは、花の外側から穴をあけて蜜を吸っています。花は、虫に花粉を運んでもらうために蜜を提供しているのですが、クマバチの吸い方ではハナトラノオは大損をしてしまうのです。萩の花では、クマバチも正面から頭を入れてちゃんと蜜を吸っていました。
リーダーの解説に参加者のみなさんは、耳をすましているようでした。
次の舞台は、原っぱです。原っぱの上では、アキアカネやウスバキトンボが飛び回っていて、秋を感じさせてくれました。
夏の間伸びた野草は、大人の腰のあたりまであります。そんな草むらにはたくさんの虫がいるはずです。そこで、参加者全員で大きな人の輪を作り、その輪をだんだん小さく狭めて虫を集める実験をしました。みんなの息をあわせて、さらに輪を小さく小さくしていきます。すると、原っぱに隠れていた虫たちも小さな輪の中に集められてきます。真ん中に置いてあったシートの大きさにまで輪が小さくなると、たくさんの虫たちが飛んだり跳ねたりして、誰かの背中や頭に虫がくっつきました。子供の参加者は、声をあげて大興奮です。
見つかった虫は、トノサマバッタ・ショウリョウバッタ・ホシササキリなどです。トノサマバッタを中心に、バッタの仲間の解説を話しました。参加者は、炎天下にいることを忘れるほどの集中力で聞いていました。かんさつ会での虫捕りは公園の許可をいただきました。もちろん、捕まえた虫は観察してから放しました。
一転してちょっと暗い、ひんやり涼しい林のなかにきました。
そんな環境にいる虫は、目より耳をたよりに生活しています。また、葉の影や石の裏などの見つかりにくいところに潜んでいるのです。つまり、鳴き声(?)はすれども、姿が見えないのです。そこで炎天下のなかを傘を持って歩いていたスタッフの活躍する場面がきました。傘を開き逆さまにして草や木の葉のしたに置き、その上の葉をゆらします。すると、細かい虫がたくさん落ちてきます。その中に、声は聞こえるけれど姿がみえない昆虫の一つ、カネタタキがいました。実際にみると鳴き声のわりに小さい虫で、翅が退化していることがわかります。
また暗い地面にはエンマコオロギの姿も見つかりました。トノサマバッタの脚の形との違いが、暮らしぶりによることがわかりました。
参加者のみなさんには、鳴く虫・鳴かぬ虫、日向にいる虫・日陰にいる虫など、様々な環境でいろいろな虫が生活していることが少しわかっていただけたのではないでしょうか。
(レポート:大橋、写真:高野)