第98回井の頭かんさつ会レポート

第98回井の頭かんさつ会

「シダ入門 ~ シダってどんな植物?」

日時:2013年6月23日(日曜日)午前10:00~12:00
主催:井の頭かんさつ会
後援:東京都西部公園緑地事務所

案内:
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
日置 日出男(森林インストラクター)
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
大原 正子
高久 晴子
大橋 博資
上村 肇
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)

参加者:24名(大人20名、子供4名)

レポート

今回は井の頭かんさつ会として初めてのテーマ、「シダ」に取り組んでみました。地味なテーマなので、実はどれだけ参加者が集まるかと心配もしていましたが、予想外の人数の参加者に驚くと同時に、嬉しくもありました。

植物観察というと花の咲く植物(種子植物)が主体ですが、自然界には花を咲かせない植物たちもあり、それらもまた自然の構成要員であり、生物多様性を形づくる一員であることを感じていただきたくて企画しました。植物や花の進化を考えるうえでもシダは重要な位置づけにある植物で、花の咲く植物とは違ったくらしぶりを観ることで、さらに身近な自然のオモシロ発見をしていただくこともねらいでした。

とはいえ、あまりなじみのない対象なので、プログラムを二部構成とし、最初にスライドと印刷資料でシダ植物と観察のポイントを解説、その後に公園で実際にシダを観察しました。シダは見慣れないとどれも同じように見えてしまいますが、観るべき特徴を覚えると違いがわかってきます。シダはその形の美しさと葉裏の胞子嚢群(ソーラス)の色や形がさまざまで、それらを観るだけでも楽しいものです。入門編なので、できるだけ特徴のある覚えやすいシダをひとつひとつ観て歩きました。

誰もがその名前には聞き覚えのあるシダの前では「これがノキシノブ!」、またゼンマイの前では「これがあの食べるゼンマイ!初めて見た」という声も…。中軸に三角形の翼のあるゲジゲジシダも覚えやすいシダです。ベニシダの葉裏の美しい赤い胞子嚢群(ソーラス)を観察した時は、これは何の色?となり、包膜をはがしてみると、中は赤くなく、包膜が赤いことがわかりました。また、ソーラスは胞子を飛ばすためにとても周到な構造を持っていますが、実体顕微鏡で乾燥してくるとはじける胞子嚢も観察しました。

当日、実際に観察できたシダは約15種で、中には中級編のシダもあり、またイヌワラビのようにあまり特徴のないシダもあり、ちょっと難しかったかもしれません。また最初に室内で解説に時間をとった分、公園内の観察が駆け足になってしまったきらいがあり、反省点でもありますが、シダ植物の形のいろいろ、ソーラスのいろいろ、生育環境の違いなどが少しわかり、シダ植物観察の楽しさを味わっていただけたと思います。

これを機会に、いわゆる草花や木々のほかにも多種多様な生きものが自然界を形作っており、それぞれが長い進化の歴史とバランスのなかにいることにも思いを馳せていただけたらと思います。

(レポート:田中雅子、写真:高野)

第97回井の頭かんさつ会レポート

第97回井の頭かんさつ会レポート

「初夏の昆虫」をさがしてみよう!

日時: 2013年5月25日(土)午前10:00~12:00
場所: 井の頭公園
集合: 午前9時45分 井の頭池ボート乗り場前
主催: 井の頭かんさつ会
後援: 東京都西部公園緑地事務所

案内:
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
大橋 博資
高久 晴子
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
大原 正子
日置 日出男(森林インストラクター)
上村 肇
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)

参加者:33名(大人19名,子供14名) 

レポート

 本格的な夏が訪れるちょっと前のこの時期に、『どんな昆虫』が、『どのような姿』で、『どんな所』にいるのかを参加者のみなさんの眼も借りてさがしました。
 今回は、参加者の大半が幼児または子供の親子の方々でしたので、井の頭かんさつ会としては、異例の子供班三つと大人班一つという体制で観察会をスタートさせました。

 大人班では、それぞれの昆虫の幼虫や成虫の食性や環境を通して、昆虫たちの生活スタイルの不思議や感嘆を発見でき、次の季節への観察眼が養われたように思われます。
 一方子供班は、スタッフの案内で普段は目に付きにくい場所の昆虫を実際に目にすることで、歓声があがりました。なかでもラッキーだったのは、オオヤマトンボの羽化の真っ最中を観ることができたことです。一見するとあの有名なオニヤンマにも似ているオオヤマトンボは、大きさも体の色彩も迫力満点でした。

 また、アブラムシが大量発生している梅の木では、テントウムシの蛹・幼虫・成虫がたくさん見られました。

 他にも樹液に集まる昆虫や小さな小さなゾウムシや働き者のニホンミツバチなど、多数の昆虫を観ることができました。明るい場所、木々が茂っているやや暗い場所、原っぱのように開けた場所など、それぞれの環境によってそれぞれの生活をしていることを少しは伝わったのではないかと思います。ただ、子供班にとってはちょっと移動距離が長かったかもしれませんね。

 

(レポート:大橋、写真:上村・大原)

第96回井の頭かんさつ会レポート

第96回井の頭かんさつ会レポート

恒例!春の夏鳥探鳥会 少し早起きして、井の頭の森で宝探し

日時:平成25年5月3日(金祝)午前7:00~9:00
場所: 井の頭公園
主催: 井の頭かんさつ会
後援: 東京都西部公園緑地事務所

案内:
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
大原 正子
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
高久 晴子
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
大橋 博資
日置 日出男(森林インストラクター)
上村 肇
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)

参加者:58名(大人54名,子供4名) 

レポート

 第96回井の頭かんさつ会「恒例!春の夏鳥探鳥会」は、昨年に続いて早朝の開催としました。やはり早い時間の方が鳥のさえずりが多く、観察に有利だからです。通常のかんさつ会の時間はさえずりが少なくなる時間帯なのです。
探鳥会の回はやはり人気です。集合6時45分という早朝の開催にも関わらず、満員御礼でした。当日は天気は申し分なかったものの気温が低く、久しぶりにフリースを着て行ってちょうど良かったほどでした。低温は昆虫の活動にとってマイナスなので、それを餌とする夏鳥も不活発なことが懸念されましたが、集合場所の井の頭自然文化園分園周辺では開始前からエゾムシクイがさえずり、近くではセンダイムシクイもさえずり、アオゲラの声も聞こえました。夏鳥がいるだけでなく、さえずってくれていて良かった.…….と胸を撫で下ろしました。
参加者を4班に分けて出発し、私は20人ほどの参加者を案内しました。確認したところ、水辺の鳥を観たいという方はほぼゼロだったので、すぐに御殿山の雑木林へ直行し、夏鳥を探しました。しかし、開催前には聴こえていたムシクイ類のさえずりが消え、留鳥の声さえもまばらで、イヤな予感がしました。折角大勢の方に早起きして来てもらったことですし、私は必死で耳を澄まし、キョロキョロして鳥を探しました。
御殿山の奥まで来てやっと遠くのキビタキの声を確認しましたが、キビタキがいたのは吉祥寺通りを挟んで井の頭自然文化園内だったので、交通整理に気を使いながら、参加者に声のみ確認してもらって、すぐに森へ戻りました。その後、ようやくオオルリのくぜり(完全なさえずりに至らないつぶやきのような歌)に気づき、姿を探したものの決定的に捉えることはできず、小鳥の森へ。ここでやっとクヌギの高い梢にオオルリの姿を見つけることができましたが、自分は観ることができても参加者の多くは見ることができず。その高い位置のオオルリをねばって観てもらうことに時間を使うのは賢明ではないと考えて、松本訓導碑周辺に移動し、あらためて夏鳥を探し直しました。
少し気温が上がってきたからか、キビタキやオオルリのくぜりは次第にさえずりっぽくなってきて、センダイムシクイの声も聞こえて、ほどなくオオルリの姿を何とか捉えることができ、スコープに入れた姿を参加者に観ていただくことができました。
その後、まとめとして身近な井の頭の森の自然環境の大切さについてお話をし、終了しました。今回は終了が9時台だったので、時間と熱意と体力のある方はそのまま延長戦へ。ねばった方はオオルリに加えてキビタキもしっかりと観ることができました。気温が低かったので、夏鳥探しの最大の手がかりであるさえずりが少なかったですが、タイミング的には季節移動の波に当たり、数種の夏鳥を観察することができました。

今回は天気は申し分なかったのですが、低温に参りました。時間が早ければ早いほど、
さえずりが多くて観察に有利なため、会の開始を早朝に設定したのですが、季節外れの低温がネックになってしまいました。皮肉なことに、会が終わった頃に気温が上がってきて、さえずりが増えてきました。終了の頃に想定していた気温に上がってきたのです。また、今シーズンは樹木の展葉が早く、例年であればゴールデンウィークの時期は未だ野鳥が観察しやすい条件のはずが、葉がすっかり茂りきっていて、観察の難易度が高かったです。もう少し参加者に観てもらいたかった、聴いてもらいたかったのですが、御殿山から小鳥の森にかけての雑木林を初めて訪れた方も少なくなく、朝のさわやかな森歩きに加えて野鳥観察ができて大満足という参加者も少なからずいて、やりがいを感じました。

(レポート:高野、写真:上村)

第95回井の頭かんさつ会レポート

第95回井の頭かんさつ会レポート

「井の頭公園花めぐり」 ~花の進化を観よう~

日時: 2013年4月21日(日)午前10:00~12:00
集合: 午前9時45分 井の頭池ボート乗り場前
主催:井の頭かんさつ会
後援:東京都西部公園緑地事務所

案内
小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
大原 正子
高久 晴子
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
日置 日出男(森林インストラクター)
大橋 博資
上村 肇
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)
佃 和夫(NACS-J自然観察指導員)

参加者:12名(大人12名)

レポート

 井の頭かんさつ会にとっては珍しく朝からの雨となり、残念ながらキャンセルも多かったですが、逆に来て頂いたのは、非常に熱心な方々ばかりでした。雨の中来て頂いた参加者のために井の頭地区公会堂で、内容の濃い室内プログラムを実施しました。

 プログラムとして、花の進化についての話しと実際に花の観察との二部構成で行いました。第一部の花の進化の話しはパワーポイントを使って講演形式で解説を行いました。まずは、花の各パーツについて説明を行い、植物がシダから裸子植物へ、そして被子植物へいかに進化したかを参加者のみなさんと見ていきました。そして花がなぜ進化したのかを考えながら、花の目指す方向を探りました。モクレンの仲間など原始的な花から、キクやイネやランの仲間など進化した花への構造の変化を見ていくと、花は効率よく子孫を増やすことができる形になってきているのが分かります。昆虫と花との共進化では、カーペンタービーしか花粉を出すことができないオルフィウムという花や口が長いスズメガの仲間でしか蜜が吸えないランの仲間の話など、写真を交えて解説を行いました。また、ランの仲間があの手この手で、昆虫に花粉塊を付けて運ばせる仕組みには、参加者から驚きの声が上がりました。

 第二部はスタッフが雨の中集めてきた花を使って実際の観察です。各テーブルにはまるで生け花教室のようにいろいろな花が置かれていました。ツツジ、タンポポ、ハルジオン、ヤエヤマブキ、スミレ、ツルニチチソウ、コナラ、シロヤマブキ、珍しい花ではスタッフの庭にあったカラスビシャクなどもありました。それらを一つずつ順番に解説を行いながら、観察していきました。分解して、虫メガネで観察したり、顕微鏡をのぞいたりと、その度に面白い発見があり、参加者とスタッフが一緒になって盛り上がりました。

今回は人数が少なかったので、スタッフが付きっ切りでアドバイスできたためか、参加者の方から充実した観察会であったとのコメントを頂きました。振り返ると、今回のような時間をかけてじっくりと観察することを、野外で大人数で実施することは非常に難しいです。企画者としては、本当にやりたかったことが、雨ゆえに実施できたと思っています。

(レポート:小町、写真:上村)

第94回井の頭かんさつ会レポート

第94回井の頭かんさつ会レポート

 「樹形と樹皮 ~分かる! 木のきもち、木のなやみ~」

日時:2013年3月24日(日曜日)午前10:00~12:00
主催:井の頭かんさつ会
後援:東京都西部公園緑地事務所

案内:
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
大原 正子
小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
高久 晴子
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
日置 日出男(森林インストラクター)
大橋 博資
上村 肇
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)

参加者:30名(大人28、子供2)

レポート

例年なら木々がまだ芽吹いていない時期なので「樹形と樹皮」をテーマにしたのに、なんとソメイヨシノが満開になってしまいました。でも心配した混雑は朝のうちはそれほどでもなく、いつもどおりにかんさつ会を開始できました。

今回のコースは、七井橋を渡って池の北岸から西岸へと辿り、御殿山へ上がって雑木林を通り、西園グラウンドが終点です。3班に別れて樹形と樹皮の観察を進めました。満開の桜も今日ばかりは花より樹形に注目です。池畔の桜が池のほうに大きく傾いているのは、光を求めて、隣の木との競合がない池の上へと幹や枝を伸ばしたからです。樹皮には実際に手で触ってもらい、木の種類や年齢による違いを感じ取ってもらいました。木々をよく観ると、生長のしかたには共通する点があるとともに、種類ごとの違いも大きいことが分かります。光を始めとするいろいろな環境条件やハプニングなどの影響がそれに加わって、個々の樹形ができ上がっていることが分かります。

そのような基礎的説明と並行して、応用問題にも挑戦してもらいました。我々があらかじめ見つけておいた不思議な/おかしな樹形を紹介し、どうしてそんな形になったのか推理してもらったのです。例えば、幹の地上2メートル以上のところから太い根を地上まで伸ばしているクスノキ、別種らしい太い枯れ木を抱え込んでいるスダジイ、2本足でどちらも幹に見えるケヤキ、雑木林の中で幹も枝も右往左往しているコナラ、ハート型に樹皮が剥がれているアカマツなどです。アカマツのハート型(じつは「矢はず」型)の傷は終戦直前に戦闘機の燃料を作ろうと国民に松脂を採集させた跡です。郷里で実際に採集作業をされた参加者が他の班にいらっしゃったそうです。参加者から、いつも通っている場所なのにこんなに面白い木がたくさんあるとは全然気づかなかったという声が上がりました。

観察コースには高齢の木が多いのに枯れた枝がほとんどないことにも気づいてもらいました。落ちて来園者が怪我をしないよう、担当者が頻繁に見回って、弱った枝を取り除いているからです。しかし太い枝をバサバサ切る強剪定は、木の体力を消耗させ、木を腐朽させる菌類への抵抗力を弱めてしまうので、木にとっては大問題です。観察を進めるにつれ、参加者の皆さんはしだいに木の気持ちや悩みを想像できるようになってきたようでした。

他の班は個々の議論や質疑応答にもっと時間をかけたようですが、我々の班は先を急いで、西園の桜の広場まで行きました。そこの木々は互いに離れて立っているので他の木に光を遮られず、まだ咲いていた早咲きの桜を始め、コナラやエノキやシラカシなどの自然樹形が見られるからです。桜は他の種類の木よりも枝を大きく横に広げていて、いかに光が好きか分かりました。それが池畔の桜が池にあんなに大きくせり出している理由だったのです。

グラウンドへ戻って他の班と合流しました。今後も時々は木の気持ちになって木を見続けていただくことと、どうすれば井の頭公園の木々と来園者がうまく共存できるかを考えていただくことをお願いして、かんさつ会を終えました。

(レポート:田中利秋、写真:上村肇他)

第93回井の頭かんさつ会レポート

第93回井の頭かんさつ会レポート

 「冬芽 ~木々の春支度を覗いてみよう

日時:2013年2月27日(日曜日)午前10:00~12:00
主催:井の頭かんさつ会
後援:東京都西部公園緑地事務所

案内
上村 肇 
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
大原 正子
小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
高久 晴子
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
日置 日出男(森林インストラクター)
大橋 博資
参加者数17名(大人16名 子ども1名)

レポート

今回のかんさつ会は冬芽を主題として取り上げました。
今回は参加者の方が比較的少なかったので、3班に分かれて各班5-6名に3人の案内者という小回りの効くかんさつ会となりました。
コースはボート乗り場から始まって、七井橋を渡り、池の北岸を反時計回りに回って、梅園から弁天橋・日本庭園を通ってスタート地点に戻る一周としました。コース内から選んで撮影した冬芽24種を写真資料として配布し、この資料を基に冬芽の特徴や意味をたずねて周りました。

普段は跨ぐことのない園路のロープを越えて木々の直ぐ傍まで行き、ハンノキやハナノキの比較的低い枝の先をルーペを使って一つ一つ覗いていきます。 ハンノキでは資料の写真にある可愛らしい葉痕をあれでもないこれでもないと探し回って見つかったときには「あっこれだ!」と声があがりました。またシナマンサクでは頂芽が二つ縦に並んでいる理由をあれこれと考え、大きな方の主芽が駄目になったときの予備が小さく構えていることを実例をもとにお話しました。
特徴的なアカメガシワやムクロジの頂芽が実生として沢山見られる場所では、倒木という周りの変化に敏感に反応するパイオニア植物たちの役割に、自然の仕組みを感じて頂きました。
また実体顕微鏡を使ってでコブシの花芽やアオキの芽の中がどうなっているかをじっくりと見ていただきました。
また落葉樹という範疇からは少し外れますが、日本庭園のユズリハで資料の写真と同じ顔をあれかこれかと葉痕探しをして楽しみました。 このころには終了の時間が迫っており急ぎ足となって、いくつもの木々をとばして集合地点を目指すこととなりました。

観察した主な冬芽・葉痕
ハナミズキ・ハンノキ・ハナノキ・コブシ・シナマンサク・ヒメシャラ・ヤマグワ・ミツマタ・ロウバイ・タラノキ
カラスザンショウ・ドウダンツツジ・クズ・ムクロジ・ハゼノキ・クサギ・ミズキ・ユズリハ・トチノキ・トサミズキ
ヒュウガミズキ・アジサイ・アカメガシワなど

 

(レポート:上村、写真:高久)

第92回井の頭かんさつ会レポート

第92回井の頭かんさつ会レポート

「冬鳥探鳥会 鳥観の楽しみ方と身近な自然環境」

日時:2013年1月27日(日曜日)午前10:00~12:00
主催:井の頭かんさつ会
後援:東京都西部公園緑地事務所

案内
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
大原 正子
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
高久 晴子
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
大橋 博資
日置 日出男(森林インストラクター)
上村 肇 
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)

レポート

 寒さの厳しい今シーズンですが、かんさつ会当日は小春日和となり、冬のバードウォッチングには最高の条件でした。今回は参加者がとても多く、満員御礼でしたので、おおまかに親子班、初心者班、中級者班、上級者班の4班に分けて案内しました。
 御茶ノ水池では水辺の鳥を観察しながら、今シーズンカモが少ないこと、それが井の頭公園に限らず全国的な傾向であることを紹介しました。具体的にはカモの総数が少ない上に、今季はハシビロガモが姿を消してしまったこと(当初は渡ってきていた)、毎年飛来するオオバンが来ないこと、などです。その後、池のほとりのハンノキの花にヒガラが来ているのを観察し、行動と鳴き声について説明しました。その後、池のカワウをフィールドスコープで詳細かつ鮮明に観察、カワウの羽の色が黒一色ではないこと、眼の虹彩がエメラルドグリーンで宝石のように美しいのに参加者は感動していました。その後、シメが地上で行動しているのを確認し、その理由を説明、また池のほとりにはカワセミが来てくれたので、宝石のような羽色を参加者一同楽しむことができました。
 池を離れ、地上で餌を探すシロハラを観察、そこで餌を探す理由を説明しました。弁天池のほとりではシメがイロハモミジの種子を不器用に食べているのを観察、生きものが合理的・効率的に行動するようでいて、案外不器用さや個性があるのを観察して楽しみました。弁天池では木の陰にオシドリが隠れているのを紹介しました。
 弁天池のほとり、茶屋の周辺でお目当ての一つであるキクイタダキを確認。シジュウカラ、メジロ、コゲラなど他の種との「混群」の中で、大きさ、シルエット、動きを基に肉眼で見分け、双眼鏡で観察する方法を紹介しました。その後、御殿山から玉川上水にかけては少し低調でしたが、ヒガラやヤマガラを観察できました。
 小鳥の森に着くと、再び大きな混群に出会い、キクイタダキを目の前で観察することができました。キクイタダキは複数いた上に、比較的に低い位置で行動してくれたので、茶屋で今一つしっかり観察できなかった参加者もばっちり観察することができ、頭部の菊の花びらのような黄色い羽もしっかり確認できて感激していました。
 こうして充実した観察を楽しんでいる内にあっという間に2時間が経ちました。各班が小鳥の森の観察窓前に集合したところで、井の頭公園に多様な樹木があり、その実り、および樹木につながっている多様な昆虫がいるからこそ、今日のように多くの野鳥が観察できること、自然が豊かな山間部の実りが凶作だったり雪深く埋もれてしまった時に、井の頭公園のような平地の自然環境が野鳥たちの越冬を支えることを伝え、まとめとしました。

(レポート:高野、写真:上村)

第91回井の頭かんさつ会レポート

第91回井の頭かんさつ会レポート

 「冬の井の頭公園を探してみよう ~それぞれの冬越しウオッチング~

日時:2012年12月22日(土曜日)午後2:00~4:00
主催:井の頭かんさつ会
後援:東京都西部公園緑地事務所

佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
大橋 博資
日置 日出男(森林インストラクター)
高久 晴子
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
大原 正子
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員)
上村 肇
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)

参加者数25名(大人20名+子ども5名)

レポート

タイトルからもわかるように、今回は井の頭公園の冬にそれぞれの生物がどのように過ごしているかを参加者とともに探そうという内容で、はっきり申し上げまして地味なテーマに挑戦しました。したがって、参加者の方々の反応は芳しくはないと予想していました。実際、募集当初は、参加者人数は伸びなやんでいました。ところが、一週間前に掲示したポスターの効果か、前日までに定員を上回るほどとなったのです。
しかし、天に我々は見離されてしまいました。前日の夜から冷たい雨が降り始めてしまったのです。しかも予報は15時頃から晴れマークというなんとも微妙な状況(観察会は14時~16時)です。ほとんど用意していなかった雨用プログラムやキャンセルの連絡の対応等、それぞれのスタッフも天気予報に翻弄させられました。
結局、日本の優秀な天気予報ははずれることなく、参加者の数は上記のものとなりました。
いつもの雨用会場に移動して、重ねて行われた下見のときに出会った昆虫の写真をみながら、冬という季節を生き物を通して考えました。
成虫で越冬していたヒメコガネナガカメムシやカメノコテントウ、幼虫越冬のゴマダラチョウやアカボシゴマダラ、蛹越冬のモンクロシャチホコやオオミノガ、卵で過ごすオオカマキリ・ハラビロカマキリやジョロウグモ。また、あえて冬に成虫になって繁殖活動をするフユシャクの仲間のクロオビフユナミシャクのオスや蛾の仲間とは思えない羽が退化してしまったチャバネフユエダシャクのメスなどの生活についても説明がなされました。
一時間程の講義が終わると、窓からは日差しがのぞいてきました。
2班に分かれて、急きょ屋外の観察会をすることになりました。雨天会場で見た昆虫の60~70パーセントは、観ることができたように思えます。
1時間の講義の後の観察ですので、参加者の方々の理解力も早く、短時間の割には充実した観察会が行えたと思います。
天は我々を見離してなかったのかもしれません。我々に新たな観察会のスタイルをお教えてくれたのかもしれません。

(レポート:大橋、写真:高野)

第90回井の頭かんさつ会レポート

第90回井の頭かんさつ会レポート

 「どんぐり パーフェクトマスター ~みんなで木の実探し~」

2012年11月25日(日)10:00~12:00
主催:井の頭かんさつ会
後援:東京都西部公園緑地事務所

案内:
小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員)
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
大原 正子
高久 晴子
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
日置 日出男(森林インストラクター)
大橋 博資
上村 肇

参加者:39名(大人28名+子ども11名)

レポート

参加者は39名、スタッフを入れると約50名の大所帯。どんぐり人気に後押しされ、当日は穏やかな小春日和となり、絶好のどんぐり拾い日和でした。
人数が多いため、3班に分かれて観察会の行いました。子どもがいる班では初めにどんぐりクラフトでアイスブレイキング。完成したドングリバッジを胸に、期待が高まります。
次にどんぐりとは何かを子どもたちと一緒に考え、日本のどんぐり、世界のどんぐりの話をして、どんぐり観察ツアーをスタート。ブナを手始めに、井の頭公園で見られる10種のブナ科の樹木を巡っていきました。10種のうち、ブナとクリ以外の8種類がどんぐりの木で、多い人で7種のどんぐりが今回拾えました。コナラ、クヌギ、シラカシ、アラカシ、スダジイ、マテバシイ、それぞれが皆魅力的などんぐりですが、一番人気は北米原産のピンオークのどんぐり。丸くて可愛いどんぐりにみんなが魅了され、大人も子どももどんぐりを拾いながら、じっくり観察しました。また、スダジイやマテバシイは食べられるので、話題も盛り上がりました。夕飯はどんぐりにしたい!と言っている子どももいて、お母さんとのやり取りが微笑ましかったです。
ドングリのほか、トチの実、チャノキ、ハクウンボク、イヌシデ、マツボックリ、ヒノキ、ムクロジなど可愛い実・面白い実を見つけながら、木の実に親しみ、木の実拾いを楽しみました。
小さい子どもも多かったですが、それぞれに楽しいどんぐりの観察会になったと思います。
観察会終了後、公園で野外親睦会を行いました。30名近くが参加して、楽しく自然談義に花をさかせました。

(レポート:小町、写真:上村)

第89回井の頭かんさつ会レポート

第89回井の頭かんさつ会レポート

 「井の頭池と生き物たち ~そのいまとこれから~」

日時:2012年10月20日(土曜日)午前10:00~12:00
主催:井の頭かんさつ会
後援:東京都西部公園緑地事務所

案内:
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
大原 正子
上村 肇
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員)
大橋 博資
日置 日出男(森林インストラクター)

協力:
外来魚調査活動同志 3名

参加者:17名(大人14子供3)

レポート

井の頭池の「かいぼり」が実現しようとしています。水の濁りと外来魚問題を解決または改善し、良好な生態系を取り戻すのが目的です。西部公園緑地事務所が現在その計画を策定中で、開催中の「全国都市緑化フェアTOKYO」でも展示を行っています。外来魚問題の解決を目指して調査と啓発の活動を続けてきた我々も、それに合わせて今回の観察会をかいぼりをテーマに実施することにしました。参加者に池と池の生き物を実際に観てもらい、なぜ今かいぼりが必要なのか、良好な生態系を再生し維持していくためにはどんなことが必要になるのか理解を深めてもらうことを目指します。各所で魚などを探して外来魚問題の現状を実感してもらうとともに、生き物たちが暮らしていくのに必要なそれぞれの条件についても知ってもらいたいと思います。水の濁りの問題については、濁りの正体である水中の植物プランクトンや、それを食べる動物プランクトンを実際に観てもらうほか、植物プランクトンが増える原因となっている水の富栄養化について知ってもらうため水質検査も実施することにしました。

池の生き物を観察するのに最適な、すがすがしい秋晴れです。観察メニューが多いので、スタッフはいつもより早く準備を始め、必要な器材をお茶の水池北岸のベンチへ運びました。そこに器材とスタッフの一部を残し、いつものボート乗り場前から観察会をスタートしました。コースは、ボート乗り場前→七井橋→ボート池北岸→ひょうたん池・在来種保護池→ボート池北岸→そしてお茶の水池北岸ヨシ原前ベンチです。その間、岸辺の植物や水鳥などに注意を向け、仕掛けておいたオダアミやカゴワナを上げてどんな魚が入っているか調べ、スタッフが池に入って網で魚やエビを探し、保護池の状況を見学し、数箇所でプランクトン観察用と水質検査用の水も採取しました。そしてヨシ原前のベンチで、見つかった魚やエビの詳しい観察と、水の中にいるプランクトンの顕微鏡観察、水質検査を行いました。

オダアミやカゴワナに入っていたのはブルーギルの稚魚ばかりでした。水中に伸びだした木のひげ根を網で掬ったら、在来種テナガエビの稚エビなどもいくらか見つかりましたが、やはり多いのはギルの稚魚でした。絶滅が心配されている在来種、モツゴやトウヨシノボリやスジエビはこの日1匹も見つかりませんでした。網やカゴワナでは獲れないサイズの外来魚も観てもらうために、本隊がコースを回っている間に他のスタッフが手釣りを試み、オオクチバス5匹と大きなブルーギルを釣り上げました。外来魚のバスとギルは今もたくさんいて、そのせいで在来種が減ってしまっているのです。稚魚や稚エビがひげ根の中やヨシの茂みにいたのは、外来魚などの捕食者から逃れるためです。本来は水生植物がその役割をするのですが、現在の井の頭池にはそれが少なく、特に沈水植物がまったくないのが問題です。かいぼり時には水生植物を増やすための工事も行われる予定です。

ひょうたん池の在来種保護池では、かいぼりが済んだ池に放流するために「いけす」で保護しているモツゴを見てもらいました。なぜいけすが必要なのかというと、バスやギルなどが多数侵入して、保護していたはずの在来種を食べてしまったからです。多くは柵の隙間から侵入したらしいのですが、故意に放流されたとしか考えられない大きなバスも見つかっています。我々は侵入種を捕獲して除去してきましたが、小さな保護池でも完全除去は困難で、保護対象種はほぼいなくなってしまいました。この事実は、当初の案にあった、井の頭池を二分して二年かけてかいぼりするという方法では、外来魚をいなくすることはできないことを示しています。そのため我々は、井の頭池全体を同時にかいぼりするよう要望しています。また、せっかくかいぼりをしても再び外来魚が密放流される可能性があるので、我々も参加している「井の頭外来生物問題協議会」は公園管理者と警察と来園者が連携して密放流を防ぐ体制を作るべく警察と話し合いを進めています。

じつは保護池への侵入種の筆頭はアメリカザリガニです。保護池にカゴワナを設置して侵入種の調査を続けているのですが、ザリガニがほぼ毎日入ります。そのすさまじさを実感してもらうために、10月11日以降に保護池で獲れたザリガニを生かしておいて、参加者に見てもらいました。この日は5匹も入っていたので、それを足すと10日間で19匹になりました。ところが一同驚いたことに、それで終わりではなく、一匹のメスが抱えていたらしい稚ザリガニが百匹以上も一緒に獲れたのです。保護池に放たれてしまったものも多かったでしょうから、保護池はさらにザリガニだらけになりそうです。ザリガニは泥に穴を掘って隠れるので、かいぼりでの完全駆除は無理です。天敵のバスがいなくなった池で爆発的に増えることが予想され、増やそうとする水草に大きな被害を与える心配があります。失敗した在来種保護池ですが、かいぼり後の井の頭池の姿が見えるとも言えるので、我々は今後ここでアメリカザリガニの生息数を抑制する実験を行いたいと考えています。なお、保護池の改善策についても西部公園緑地事務所で検討が進んでいます。

プランクトンの顕微鏡観察と水質検査は初めて体験する人が多く好評でした。水質検査をすると、井の頭の湧き水には窒素が多量に含まれていること分かります。リンが供給されるだけで植物プランクトンが増え、水が濁るのです。植物プランクトンを減らし水の透明度を改善すると期待されているのがミジンコを始めとする動物プランクトンです。しかし動物プランクトンは小魚の格好の餌になるので、全部食べられてしまわないようにするには、隠れ場所となる水生植物が必要です。水生植物は窒素やリンを吸収して育つので、池の水の富栄養化を抑える効果も期待できます。しかしザリガニが増えると水生植物が増えられないかもしれません。

池の中にも生き物と環境、生き物と生き物との複雑なつながり合いがあり、さらに人間の行為がそれに加わります。それらを十分考慮してかいぼりを行わないと生態系の再生と維持はうまくいきません。なかなか難しい話ですが、いろいろ観ていただいた参加者の皆さんには理解していただけたことと思います。

かいぼりの計画策定担当者である工事課の田中淳一さんが途中から参加してくださったので、最後にご挨拶をお願いしました。田中さんはかいぼりで目指していることを話されるとともに、協力を呼びかけられました。大がかりなかいぼりの成功には多くの市民の参加が必要です。今回は、田中さんが作成され緑化フェアで配布されているかいぼりチラシをご提供いただき、参加者への配布資料のひとつとさせていただきました。我々は今後も池での活動時にそのチラシを来園者に配布し、かいぼりへの理解と協力を呼びかけていきたいと考えています。

(レポート:田中利秋、写真:上村肇)