第90回井の頭かんさつ会レポート

第90回井の頭かんさつ会レポート

 「どんぐり パーフェクトマスター ~みんなで木の実探し~」

2012年11月25日(日)10:00~12:00
主催:井の頭かんさつ会
後援:東京都西部公園緑地事務所

案内:
小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員)
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
大原 正子
高久 晴子
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
日置 日出男(森林インストラクター)
大橋 博資
上村 肇

参加者:39名(大人28名+子ども11名)

レポート

参加者は39名、スタッフを入れると約50名の大所帯。どんぐり人気に後押しされ、当日は穏やかな小春日和となり、絶好のどんぐり拾い日和でした。
人数が多いため、3班に分かれて観察会の行いました。子どもがいる班では初めにどんぐりクラフトでアイスブレイキング。完成したドングリバッジを胸に、期待が高まります。
次にどんぐりとは何かを子どもたちと一緒に考え、日本のどんぐり、世界のどんぐりの話をして、どんぐり観察ツアーをスタート。ブナを手始めに、井の頭公園で見られる10種のブナ科の樹木を巡っていきました。10種のうち、ブナとクリ以外の8種類がどんぐりの木で、多い人で7種のどんぐりが今回拾えました。コナラ、クヌギ、シラカシ、アラカシ、スダジイ、マテバシイ、それぞれが皆魅力的などんぐりですが、一番人気は北米原産のピンオークのどんぐり。丸くて可愛いどんぐりにみんなが魅了され、大人も子どももどんぐりを拾いながら、じっくり観察しました。また、スダジイやマテバシイは食べられるので、話題も盛り上がりました。夕飯はどんぐりにしたい!と言っている子どももいて、お母さんとのやり取りが微笑ましかったです。
ドングリのほか、トチの実、チャノキ、ハクウンボク、イヌシデ、マツボックリ、ヒノキ、ムクロジなど可愛い実・面白い実を見つけながら、木の実に親しみ、木の実拾いを楽しみました。
小さい子どもも多かったですが、それぞれに楽しいどんぐりの観察会になったと思います。
観察会終了後、公園で野外親睦会を行いました。30名近くが参加して、楽しく自然談義に花をさかせました。

(レポート:小町、写真:上村)

第89回井の頭かんさつ会レポート

第89回井の頭かんさつ会レポート

 「井の頭池と生き物たち ~そのいまとこれから~」

日時:2012年10月20日(土曜日)午前10:00~12:00
主催:井の頭かんさつ会
後援:東京都西部公園緑地事務所

案内:
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
大原 正子
上村 肇
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員)
大橋 博資
日置 日出男(森林インストラクター)

協力:
外来魚調査活動同志 3名

参加者:17名(大人14子供3)

レポート

井の頭池の「かいぼり」が実現しようとしています。水の濁りと外来魚問題を解決または改善し、良好な生態系を取り戻すのが目的です。西部公園緑地事務所が現在その計画を策定中で、開催中の「全国都市緑化フェアTOKYO」でも展示を行っています。外来魚問題の解決を目指して調査と啓発の活動を続けてきた我々も、それに合わせて今回の観察会をかいぼりをテーマに実施することにしました。参加者に池と池の生き物を実際に観てもらい、なぜ今かいぼりが必要なのか、良好な生態系を再生し維持していくためにはどんなことが必要になるのか理解を深めてもらうことを目指します。各所で魚などを探して外来魚問題の現状を実感してもらうとともに、生き物たちが暮らしていくのに必要なそれぞれの条件についても知ってもらいたいと思います。水の濁りの問題については、濁りの正体である水中の植物プランクトンや、それを食べる動物プランクトンを実際に観てもらうほか、植物プランクトンが増える原因となっている水の富栄養化について知ってもらうため水質検査も実施することにしました。

池の生き物を観察するのに最適な、すがすがしい秋晴れです。観察メニューが多いので、スタッフはいつもより早く準備を始め、必要な器材をお茶の水池北岸のベンチへ運びました。そこに器材とスタッフの一部を残し、いつものボート乗り場前から観察会をスタートしました。コースは、ボート乗り場前→七井橋→ボート池北岸→ひょうたん池・在来種保護池→ボート池北岸→そしてお茶の水池北岸ヨシ原前ベンチです。その間、岸辺の植物や水鳥などに注意を向け、仕掛けておいたオダアミやカゴワナを上げてどんな魚が入っているか調べ、スタッフが池に入って網で魚やエビを探し、保護池の状況を見学し、数箇所でプランクトン観察用と水質検査用の水も採取しました。そしてヨシ原前のベンチで、見つかった魚やエビの詳しい観察と、水の中にいるプランクトンの顕微鏡観察、水質検査を行いました。

オダアミやカゴワナに入っていたのはブルーギルの稚魚ばかりでした。水中に伸びだした木のひげ根を網で掬ったら、在来種テナガエビの稚エビなどもいくらか見つかりましたが、やはり多いのはギルの稚魚でした。絶滅が心配されている在来種、モツゴやトウヨシノボリやスジエビはこの日1匹も見つかりませんでした。網やカゴワナでは獲れないサイズの外来魚も観てもらうために、本隊がコースを回っている間に他のスタッフが手釣りを試み、オオクチバス5匹と大きなブルーギルを釣り上げました。外来魚のバスとギルは今もたくさんいて、そのせいで在来種が減ってしまっているのです。稚魚や稚エビがひげ根の中やヨシの茂みにいたのは、外来魚などの捕食者から逃れるためです。本来は水生植物がその役割をするのですが、現在の井の頭池にはそれが少なく、特に沈水植物がまったくないのが問題です。かいぼり時には水生植物を増やすための工事も行われる予定です。

ひょうたん池の在来種保護池では、かいぼりが済んだ池に放流するために「いけす」で保護しているモツゴを見てもらいました。なぜいけすが必要なのかというと、バスやギルなどが多数侵入して、保護していたはずの在来種を食べてしまったからです。多くは柵の隙間から侵入したらしいのですが、故意に放流されたとしか考えられない大きなバスも見つかっています。我々は侵入種を捕獲して除去してきましたが、小さな保護池でも完全除去は困難で、保護対象種はほぼいなくなってしまいました。この事実は、当初の案にあった、井の頭池を二分して二年かけてかいぼりするという方法では、外来魚をいなくすることはできないことを示しています。そのため我々は、井の頭池全体を同時にかいぼりするよう要望しています。また、せっかくかいぼりをしても再び外来魚が密放流される可能性があるので、我々も参加している「井の頭外来生物問題協議会」は公園管理者と警察と来園者が連携して密放流を防ぐ体制を作るべく警察と話し合いを進めています。

じつは保護池への侵入種の筆頭はアメリカザリガニです。保護池にカゴワナを設置して侵入種の調査を続けているのですが、ザリガニがほぼ毎日入ります。そのすさまじさを実感してもらうために、10月11日以降に保護池で獲れたザリガニを生かしておいて、参加者に見てもらいました。この日は5匹も入っていたので、それを足すと10日間で19匹になりました。ところが一同驚いたことに、それで終わりではなく、一匹のメスが抱えていたらしい稚ザリガニが百匹以上も一緒に獲れたのです。保護池に放たれてしまったものも多かったでしょうから、保護池はさらにザリガニだらけになりそうです。ザリガニは泥に穴を掘って隠れるので、かいぼりでの完全駆除は無理です。天敵のバスがいなくなった池で爆発的に増えることが予想され、増やそうとする水草に大きな被害を与える心配があります。失敗した在来種保護池ですが、かいぼり後の井の頭池の姿が見えるとも言えるので、我々は今後ここでアメリカザリガニの生息数を抑制する実験を行いたいと考えています。なお、保護池の改善策についても西部公園緑地事務所で検討が進んでいます。

プランクトンの顕微鏡観察と水質検査は初めて体験する人が多く好評でした。水質検査をすると、井の頭の湧き水には窒素が多量に含まれていること分かります。リンが供給されるだけで植物プランクトンが増え、水が濁るのです。植物プランクトンを減らし水の透明度を改善すると期待されているのがミジンコを始めとする動物プランクトンです。しかし動物プランクトンは小魚の格好の餌になるので、全部食べられてしまわないようにするには、隠れ場所となる水生植物が必要です。水生植物は窒素やリンを吸収して育つので、池の水の富栄養化を抑える効果も期待できます。しかしザリガニが増えると水生植物が増えられないかもしれません。

池の中にも生き物と環境、生き物と生き物との複雑なつながり合いがあり、さらに人間の行為がそれに加わります。それらを十分考慮してかいぼりを行わないと生態系の再生と維持はうまくいきません。なかなか難しい話ですが、いろいろ観ていただいた参加者の皆さんには理解していただけたことと思います。

かいぼりの計画策定担当者である工事課の田中淳一さんが途中から参加してくださったので、最後にご挨拶をお願いしました。田中さんはかいぼりで目指していることを話されるとともに、協力を呼びかけられました。大がかりなかいぼりの成功には多くの市民の参加が必要です。今回は、田中さんが作成され緑化フェアで配布されているかいぼりチラシをご提供いただき、参加者への配布資料のひとつとさせていただきました。我々は今後も池での活動時にそのチラシを来園者に配布し、かいぼりへの理解と協力を呼びかけていきたいと考えています。

(レポート:田中利秋、写真:上村肇)

第88回井の頭かんさつ会レポート

第88回井の頭かんさつ会レポート

 「秋のバードウォッチング 渡りの夏鳥を探そう」

日時:2012年9月23日(日) 8:30~11:00
場所:井の頭公園および井の頭地区公会堂
主催:井の頭かんさつ会
後援:東京都西部公園緑地事務所
集合:午前9時15分 井の頭池ボート乗り場
案内:高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
大原 正子
高久 晴子
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員)
日置 日出男(森林インストラクター)
上村 肇
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)
参加者:13名

レポート

晴天率がとても高く雨知らずの井の頭かんさつ会ですが、今回は珍しく雨に降られました。
前夜の段階での天候の見極めが難しく、当日天候が好転することを期待しましたが、その祈りもむなしく、まとまった雨の降るスタートとなりました。通常より1時間早く設定していた開始時間を通常の9:15集合、9:30スタートに繰り下げて雨プログラムを実施する旨、参加者に一斉メールを送りましたが、当初の集合時間にボート乗り場前に行くと、時間繰り下げの連絡が間に合わなかった2名の参加者が来ていましたので、集合時間までの1時間の間、傘をさして観察することにしました。これが正解でした。
今季は冬ガモ(井の頭池ではコガモ、オナガガモ、ハシビロガモ、ホシハジロ、キンクロハジロの5種)の飛来が遅かったのですが、雨の降る中、コガモ、オナガガモ、ハシビロガモ、キンクロハジロを確認。今季初認することができました。
その後もまとまった雨が降り続き天候の条件は悪かったのですが、池の畔の桜の木にシジュウカラ、メジロ、コゲラの混群を見つけ、そこに夏鳥のエゾビタキ、コサメビタキが数羽混ざっているのを発見し、観察を十分に楽しむことができました。夢中になって観察している内にあっという間に時間が経ち、変更した集合時間になりましたので、あらためて集合場所へ向かい、集まってくれた参加者にご挨拶をして、再度池の畔に戻りました。桜の木には未だ留鳥と夏鳥の混群が残っていて、雨の中活発に餌を採っていました。そして、夏鳥を観察しているといつの間にかアオゲラも飛んできて、桜の木にとまってじっとしていたので、参加者全員でじっくりと観察することができました。まだ、しばらくそのまま観察を続けたいところでしたが、雨は降り続いていましたし、気温の低い中、半袖で来ている参加者もいましたので、室内プログラムに移行することにし、井の頭地区公会堂に移動しました。
室内プログラムは「よくわかる!秋のバードウォッチングのポイント」というテーマで講演し、カモのエクリプスの見分け方や、夏鳥の探し方「シジュウカラ消去法」、鳥の好む木の実の3点について説明しました。

(レポート:高野、写真:上村)

第87回井の頭かんさつ会レポート

第87回井の頭かんさつ会

「夜の井の頭で自然探訪~ナイトウォッチング」

日時:2012年8月11日(土) 18:30~20:30
場所:井の頭公園
主催:井の頭かんさつ会
後援:東京都西部公園緑地事務所
集合:午後6時15分 井の頭池ボート乗り場
案内:上村 肇
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
日置 日出男(森林インストラクター)
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
大原 正子
高久 晴子
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員)
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)

参加者:49名

親睦会
日時:2012年8月11日(土) 21時~
会場:夷ビアホール吉祥寺
参加者:20名

レポート

 今回のかんさつ会は毎年恒例の夜の井の頭公園での自然観察でした。
例年親子の参加が多く、子供が中心の賑やかなかんさつ会ですが、今年も例に漏れず35名の定員に対し、50名を越す参加希望が寄せられ、早めに満員御礼で募集を打ち切らざる終えない程で、残念ながら参加を諦めた方も出たようです。 当日は大気が不安定で雷雨の予報が出る中、夕刻になるにつれて雲が厚くなり集合時刻にはポツポツと雨が降り出す生憎の天気となりました。 天候が悪化する中、欠席者がどれだけでるかが心配されましたが、ほとんど全ての参加者が集合時刻前にボート乗り場前に集まり、キャンセル待ちを申し出られた方も何とか3名の方にご参加いただけました。
 スタート時刻には傘が無いとしのげない位の雨となり、先が思いやられる中全員でボート乗り場を出発しました。狛江橋を渡って第一のポイントで、カラスウリの花の開花を観察しました。カラスウリの花を見たことのない参加者も2割くらいいて、暗くなってから開花する花の不思議やその姿の美しさに驚きの声を上げていました。曇りの時間が長く雨も降ってきたため、花の開花も進んでおりきれいな網状の花を見ることが出来ましたし、正に瓜そっくりの可愛い実も確認できました。そうこうしている内に辺りはすっかり暗くなり、誰かがこうもりが飛んでいることに気づき、場所をそのままにこうもりの観察に移りました。薄暗い小雨の空に小さなこうもりがひらひらと舞っているのに始めてこうもりを見た参加者が、井の頭にもこうもりって居るんですねと感心しきりでした。バットディテクタを使ってこうもりの出す音を聞き、特殊な能力の説明に再び驚きの声が上がっていました。 
 次の観察ポイントへの移動中も小雨とはいえアブラゼミ・ニイニイゼミ・ヒグラシが数多く鳴いており、夏の夕暮れの雰囲気をかもし出していました。目線が低く眼の良い子供たちが途中でセミの幼虫が歩き回っているのを発見し、立ち止まって観察が始まりました。それを繰り返すうちに全体で移動していた参加者が幾つかのグループに自然と分かれ、10人ほどの班で行動することになりました。 
 次のポイントはピンオークの林で樹液に集まる虫たちを探しました。すると運よくオスのカブトムシが発見され、多くの参加者で写真撮影会となりました。連れて帰りたいという子供たちに自然の虫たちの大切さを説明してわかってもらいました。
 玉川上水から小鳥の森の脇の暗闇では手持ちのライトだけが頼りで、その小さな光の輪の中で各自が生き物探しを行いながら移動しました。残念ながらあまり多くの発見は出来ませんでしたが、時には見つけた虫がゴキブリだと説明され小さな悲鳴を上げる場面もありました。
 最後の第2公園では、事前に仕掛けておいたライトトラップに群がる虫たちを観察しました。白布にブラックライトや蛍光灯を当てて光に集まる虫たちを観察しました。また第2公園はセミの羽化の観察ポイントとして毎年訪れている場所です。毎年あちこちでこれから羽化するために木を登っているアブラゼミやニイニイゼミの幼虫が見られるのですが、今年は見つけるまでに少し時間がかかりました。流石に大勢の眼で公園中を探すと今まさに殻から出終わるところというタイミングを幾つか発見し、わくわくしながら皆で見つめました。特に高さ2m程の枝先でミンミンゼミとアブラゼミが同時にその時を向かえてイナバウアーの競演となったところで、ほぼ同時に抜け出たときには大きな歓声が沸き起こり、本日最後の大イベントとなりました。
 終わってみると、いつの間にか雨は止んでおり充実したかんさつ会となっていました。

 かんさつ会終了後、恒例の納涼親睦会が吉祥寺駅前の夷ビアホール吉祥寺で行われ、アルコールでのどを湿らせながら交流を深めました。自己紹介という名の自己アピールタイムでは一人ひとりの個性があふれ出ていて和やかな時間となりました。

(レポート:上村、写真:高野)

 

 

第86回井の頭かんさつ会レポート

第86回井の頭かんさつ会

「玉川上水探検隊」

日時:2012年7月22日(日曜日)午前10:00~12:00
主催:井の頭かんさつ会
後援:東京都西部公園緑地事務所

案内:
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
大橋 博資
高久 晴子
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
大原 正子
上村 肇
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)

参加者:31名(大人22子供9)

レポート

 子供たちが夏休みに入ったせいか、または今回のかんさつ会のタイトルに『探検隊』の文字が入っていたせいか、子供の参加者がぞくぞくと増えているとの情報が企画担当者の耳に入ってきました。
 そのころ下見を重ねる担当者は、前回のかんさつ会の神田川と違った側面を多く持つ玉川上水の魅力に圧倒されていました。当初は、環境全体の観察を描いていたのですが、目を凝らすととにかくたくさんの「虫」がいるのに気付かされます。歩いていては見えないものが立ち止まると見えてきます。小さな宝石がちょろちょろ動き、葉っぱやフンや枝に身を同化させてたものが姿を現すのです。いつしか、テーマは『虫』に固まり、これは年齢を問わず面白いのではないかとの想いも固まっていきました。
 当日は、暑さ対策は不要で長袖のシャツを着てちょうど良い気候でした。大人も子供も炎天下の中の2時間は厳しいものです。天候も味方につけ観察会は始まりました。
 集合場所のボート乗り場前から15分位で、玉川上水の幸橋に到着しました。幸橋を境に三鷹側と久我山側では、いくつかの違いが見て取れます。一つは、三鷹側は大きな樹木に囲まれていて暗いのですが、久我山側は、太陽の日差しが降り注いでいます。もう一つは、三鷹側の柵にはツル植物等の野草がほとんどないのに対して、久我山側にはアスファルトへもはみ出して野草が生い茂っていることです。森の住人(昆虫)がどちらにたくさんいるのかは明らかです。我々は3班に分かれて久我山側に向かいました。
 探検早々、小さな子供がその低い目線の先にエゴヒゲナガゾウムシを見つけました。この虫は、その名のとおりエゴノキで生活をしています。エゴノキの実に卵を産むのです。昆虫の生活のサイクルは早く、一週間で会える虫は変わってきます。このエゴヒゲナガゾウムシは、最近成虫になったばかりと思われます。そのため発見された植物は、生活圏のエゴノキではなかったのです。つまり、まだ繁殖活動の時期ではないと言うことです。シャーレに捕獲して順番に参加者にルーペで観察をしてもらいました。最初の参加者から「アッ、エ~」と声が上がりました。順番待の参加者の期待は、大きなものになってゆくのが見てとれました。この虫の表情は、人間やフクロウの様に平面的でなんとも言えない愛嬌がある顔をしているのです。この瞬間、参加者は今回の探検のイメージを、我々が伝えたいものを、それぞれの頭の中に描くことができたのではないでしょうか。
 はたしてそのとおり、班は玉川上水沿いに広がり各々探検を始めました。ハムシやカメムシの仲間をシャーレにとり、ルーペで観察。そして次の探検へとチームワークがとれてきたようです。
 亀の歩みでたどり着いたのは、樹液の出ているクヌギの木です。カブトムシをはじめいろいろな昆虫が集まる、いわば森のレストランです。女の子が「アルコールの匂いがする」と言いました。それもそのはず、辺りは樹液の発酵臭がただよっていました。期待が高まってきましたが、残念ながらカブトムシには会うことはできませんでした。それでもヒメジャノメ・カナブンの仲間・スズメバチの仲間が樹液に集まっているのを確認できました。(かんさつ会後には、このレストランにカブトムシがいたそうです。)
 次に参加者の歓声が響いたのは、チャイロハバチの幼虫の大量発生です。体長3cmほどの真黄色のイモムシタイプの姿をしています。玉川上水の鉄製の柵には、たくさんのツル植物が巻き付いています。最近導入された擬木(ぎぼく)タイプには、どのツル植物も巻き付くことはできないようです。夏に一気に成長するツル植物の多くは昆虫の食草であり、チャイロハバチの幼虫もヘクソカズラの葉っぱ一枚に何匹も頭を揃えて整列していました。その姿に、参加者の歓声があがったのです。さすが井の頭かんさつ会の参加者と感じました。虫嫌いの人には、最も目にしたくない光景の一つと思えたからです。余談ではありますが、ヘクソガズラはその名のとおり臭いとされる植物です。そして真黄色の幼虫は、幼虫にしては目立つ色をしています。しかも整列して同じ場所にたくさんいるですから、天敵に狙われやすいのではないかとの疑問が湧きました。もしかしたら、彼らも同様に臭いのではないかと考えたのですが、その場での確認はためらわれました。
 次は、事前調査をしていた蝶の幼虫へと参加者を案内しました。エノキの1メートル位の幼木に集まっていただき、幼虫を探してもらったのですが、やはり一見では発見できないようでした。その正体は、葉の緑にうまく擬態しているアカボシゴマダラの幼虫です。ここ数年の間に急速にその数を増やしています。理由は、人間による放蝶なのです。しかも日本にはいなかった外来種です。在来種のゴマダラチョウの幼虫との見分け方を話すサブリーダーの目は真剣でした。それもそのはず、本家のゴマダラチョウを目にすることはめったになくなってしまったそうなのです。
 ぜひ参加者に見て欲しいと思っていた虫が何種類かいました。その一つが、エサキモンキツノカメムシです。とかく臭いにおいをだすことで全国的に有名なカメムシですが、その種類の多さは昆虫のなかでもトップクラスです。また色彩においても多様にわたり、都会的なデザインには息をのむものが少なくありません。なかでもエサキモンキツノカメムシは、背中に大きなハートマークがあり、一般的に見られるカメムシのなかでは相当おしゃれなカメムシといえます。さらにこのカメムシは、卵や幼虫を守るという特徴があります。アリ・ハチの仲間のように社会構造がある昆虫を除くと、極めて珍しい行動です。そして、とにかくその姿がイジラシイのです。しかし、残念ながら今回は成虫のみの観察に留まってしまい、昆虫の季節の動きの速さをあらためて感じました。
 折り返し地点の松影橋までかなりの距離を残しているのに、時間はみるみるなくなってきました。ピッチをあげなくてはならないのですが、そうすると虫は見つけられません。板挟みではありましたが、事前調査で虫が見られる可能性が高いと判断したポイントまで移動することにしました。
 まずは、クワノキで生活するクワカミキリです。発見できるときは何匹もいるのですが、なかなか見つけられませんでした。しかしシマシマ模様の長い触覚が見えました。ちょと木の奥にいたのですが、参加者全員が黙視に成功しました。そのあと、アミで捕獲も成功し、キーキーと鳴く声も確認できました。
 次のポイントは、マユミの木です。探す昆虫は、キバラヘリカメムシです。こちらは探すまでもなく、いっぱ見つかりました。卵も幼虫も成虫も観察することができました。
 終盤駆け足になってしまったのですが、たくさんの住人がいる玉川上水の面白さ、そして大事さは、参加者の方々に伝わったのではないかと思います。

 (レポート:大橋、写真:上村)

第84回井の頭かんさつ会レポート

第84回井の頭かんさつ会

「井の頭の森で宝探し 春の夏鳥探鳥会」

日時:2012年5月12日(土)午前6:30~8:30、9:30~11:30
主催:井の頭かんさつ会
後援:東京都西部公園緑地事務所

案内
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
大原 正子
高久 晴子
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
大橋 博資
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員)
上村 肇
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)

参加者: 46名 (大人3子供4)

レポート

 84回目の井の頭かんさつ会を「井の頭の森で宝探し 春の夏鳥探鳥会」のテーマで開催しました。探鳥会は朝早い方が良い、という声に応え、井の頭かんさつ会を始めて以来、初めて早朝スタートの設定をしました。通常のかんさつ会は10時から12時、探鳥会の時もせいぜい9時30分からだったものを思い切って6時30分からにしました。また、遠方から来る参加者のために、通常の時間帯も開催して二回連続で行うこととしました。早朝の回は人が集まるのか不安でしたが、蓋を開けてみると、申込は早朝の回ばかりで最終的に38名、これに対して二回目の回は10名と、早朝の方が参加申込が多かったのです。これには勇気づけられ、私やスタッフのモチベーションが上がりました!
 最初に鳴き声の予習をクイズ形式で行い、参加者を3班に分けて森へ向かいました。折角早朝にスタートするので、話をしている時間が勿体ないというものです。私の班では弁天池からお茶屋の脇を上がったところでキビタキの声を聴き、さらに奥へ進みました。やがて聞こえたホイホイホイの声…サンコウチョウの声です。しかも一羽ではなく複数羽いました。さえずりを聴きながら、皆懸命に姿を探しました。キビタキやセンダイムシクイも盛んにさえずる中、見事にサンコウチョウの姿を捉えた参加者もいれば、声のみだった人もいました。胸が躍るような観察を楽しんだ後は、なぜ井の頭公園でこのように魅力的な野鳥を観察できたのかについて解説をし、当地の自然環境の重要性について伝えました。

 休憩後、二回目のかんさつ会に取り組みました。二回目は今までの通常の探鳥会の開始時刻である9時30分からスタートしました。こちらは10名と参加者が少なかったので、班分けせずに全員で一緒にまわりました。状況は一回目と同じような感じで参加者と共にサンコウチョウの観察を楽しみました。

(レポート:高野、写真:上村)

第83回井の頭かんさつ会レポート

第83回井の頭かんさつ会

「春のお花観」~花の色・形・匂い~

日時:2012年4月22日(日曜日)午前10:00-12:00
主催:井の頭かんさつ会
後援:東京都西部公園緑地事務所

案内

小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
大原 正子
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
大橋 博資
高久 晴子
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員)
日置 日出男(森林インストラクター)
上村 肇
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)

参加者: 32名 (大人28子供4)

レポート

昨年の第70回かんさつ会は花の形をテーマにし、一昨年の第48回かんさつ会は花を中心とした色をテーマとしました。そして今年は、匂いを中心に花に関して総合的に行い、3年で色・形・匂いと花観察3部作?ができあがりました。
花の観察は小さいものを皆で観察するため、リーダーの説明が全員に見えるように、今回は班を多くし、少人数で行動するようにしました。
挨拶の後、各リーダーは今咲いてる花々を1つずつ案内し、参加者の方々にじっくり観察してもらいました。花の色、形、匂い、時には花を分解し、めしべ、おしべ、花弁、がくなどパーツを更に観ていくと、花の特徴は様々であり、個性豊かでした。その個性が花粉を運んでもらう虫や鳥との関係で進化したものであったり、何でか分らないものがあったり、知れば知るほど興味深く、「へぇ~」って声が随所に聞かれました。
じっくり、じっくり観察したので、ボート乗場前の広場を離れるのに40分もかかった班もあったようです。その後、七井橋を渡り、井の頭池の北岸を花を観察しながら巡り、雑木林を抜けてジブリ横のお弁当広場まで行きました。ツツジの花の色と形のしたたかさ、タンポポの花のしくみ、ヤマブキが八重となったわけ、ヤエムグラやキュウリグサの可愛い花、ドウダンツツジのつぼ型の花の秘密など、多くの不思議と感動に出会えたと思います。

また、かんさつ会終了後、恒例となった春の野外懇親会(花見)を行いました。八重のサトザクラが見ごろのお弁当広場で、参加者とスタッフが和気藹々と語り合い、楽しい一時を過ごしました。ちょっと肌寒い天候でしたが、雨に降られることなく観察会のみならず親睦会も行えて、井の頭かんさつ会の「雨に降られない神話」に守られた楽しい花観&花見の1日でした。

(レポート:小町、写真:上村)

第85回井の頭かんさつ会レポート

第85回井の頭かんさつ会

「神田川で生き物探し」

日時:2012年4月22日(日曜日)午前10:00~12:00
主催:井の頭かんさつ会
後援:東京都西部公園緑地事務所

案内:
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
大原 正子
上村 肇
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)
小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
大橋 博資
高久 晴子
日置 日出男(森林インストラクター)

参加者:29名(大人21子供8)

レポート

 心配された雨もなんとか上がり、集合場所の井の頭公園駅前には、網を持った子供たちや双眼鏡を下げた大人など、参加者が続々と集まりました。早々と全員の受付を済ませることができたのは、皆さんの意気込みや期待の現れでしょうか。神田川でのかんさつ会は4年ぶりです。親水域ではスタッフの一人が器材を準備して待機しています。その他のスタッフと参加者が子供班と大人班に分かれて観察をスタートしました。

 まずは、川沿いの道を歩きながらの生きもの探しです。最初林の中を流れる川は夕やけ橋上流の親水域で辺りが開けて明るくなり、川の中にハナショウブなどの植物が現れます。そしてその先の滝から下流は種類がぐんと増えます。堆積した泥の厚さや流れの強さなどに変化があり、それぞれの植物にふさわしい環境ができているからです。皆でどんな植物があるか探し、その特徴やそれがどんな場所に生えているかを観察しました。たとえば同じ抽水植物でも、マコモは水深の浅い場所に、ヒメガマは泥が深く流れが緩やかなところに、そしてミクリは比較的流れが速い場所に生えていることが分かります。どれも細長い葉をした植物なので、穂が出ていない今は区別が難しいのですが、葉に触って詳しく観察してもらったら、それぞれまったく違う手触りや構造をしていることが分かり、覚えてもらえたようです。ミクリは小さいうちは流れに逆らわずに細い葉を水中でたなびかせている沈水植物ですが、生長すると水面上へ立ち上がり抽水植物になるという、流れの中で生きるための特技を持っています。葉の形を観たらその秘密が分かりました。
 水深の浅い場所に繁茂し紫色の可愛い花を一面に咲かせてモンシロチョウを集めていた草は特定外来生物のオオカワヂシャです。その影響で数を減らしている在来植物のカワヂシャが1株だけ見つかりました。カワヂシャとミクリは準絶滅危惧種に指定されています。神田川には外来生物が多いのですが、希少な植物も残っているのです。
 そんな環境に暮らす動物もいろいろ見つかりました。橋のたもとで大きなヘビの抜け殻を見つけ一同びっくり。その「中身」らしい大きなアオダイショウも見つかりました。それが何を食べて生きているのか、神田川の食物連鎖に話が及びました。カルガモやコサギなどの水鳥、ギンヤンマやハグロトンボなどの川を好むトンボもいました。大きなコイのほかに、小魚の群れを発見しました。種類までは分かりませんでしたが、近年、カワムツやヌマムツ、オイカワなどが見られるようになっています。魚にとって神田川はしだいに棲みやすくなっているようです。
 フェンス以外に視界を遮るものがなく、川や生き物のようすををつぶさに観察できるのが神田川の良いところです。皆で川を覗き込んでいたら、通りがかった人たちも、そんなに面白いものがあるのかと川を覗き込むのでした。

 我々大人班が親水域に戻ると、すでに子供たちは川に入って熱心に水中の生き物探しをしていました。見つかったものが次々にテーブルに並びます。ドジョウ、シジミ、カワニナ、タニシ、サカマキガイ、アメリカザリガニ、ヌカエビ、それからヨコエビなど、意外にいろいろな生きものがいることが分かりました。サカマキガイは4年前のかんさつ会では見つからなかった外来種の巻貝です。朝、保護池(井の頭池の末端)で獲れた大きなテナガエビも展示しました。神田川から井の頭池へ遡上していると思われるエビで、川と池のつながりの大切さを知ってもらいたかったからです。

 生き物たちはそれぞれ異なる能力を持ち、特定の環境に適応して暮らしています。すべての生き物に良い環境というものはありません。どんな川にすべきかは、人間の都合と生き物たちへの影響をよく考えて決める必要があり、そのためには生き物のことをよく知らなければいけません。というような話を最後にしてかんさつ会を終えました。ちょっと難しい話だったかもしれませんが、あまりきれいとはいえない神田川でたくましく暮らす生き物たちを探し、その暮らしぶりを考えた参加者には理解してもらえたのではないでしょうか。

(レポート:田中利秋、写真:上村肇)

第82回井の頭かんさつ会レポート

第82回井の頭かんさつ会

「春の野草」~小さな姿に大きなパワー~

日時:2012年3月18日(日曜日)午前10:00-12:00
集合:午前9時45分 京王帝都井の頭線・井の頭公園駅前広場(井の頭公園入口前)
主催:井の頭かんさつ会
後援:東京都西部公園緑地事務所

案内

竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)
大原 正子
上村 肇
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
小町 友則(NACS-J自然観察指導員)
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
高久 晴子
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
田中 雅子(NACS-J自然観察指導員)
日置 日出男(森林インストラクター)
大橋 博資

参加者: 29名 (大人24子供5)

レポート

前日まで雨の日が続き心配しましたが、当日は曇り空ながら天気も回復、まずまずの観察日和となりました。
テーマの「春の野草」は親しみ易いテーマでしょうか、子どもも交えた家族、カップル、歩き始めの1歳のお子さんから86歳のお年よりまで、幅広い世代の参加者が集まりました。グループ分けは子供及びその保護者の班を1班、大人班が2班という3班編成としました。テーマに関しての簡単なポイントと資料について説明のあと、グループごと上記観察コースに進みました。
各班、日頃見慣れたようで見過ごすことも多い野草を、改めてじっくり観て特徴や名前を確認しながら、野草たちの驚くべき「たくましさ」について質問したり、説明を聞いたりしてコースを回りました。
最初の場所は井の頭公園駅の北側、フェンスに囲まれた駅敷地の一角です。実はここ野草にとっては一種の「保護区」で、簡単に15種を越える野草が群がっています。ヨモギ、タンポポ、ハルシオン、ミチタネツケバナ、ヤエムグラ、オオアレチノギク、キュウリグサ、シロツメクサ、オランダミミナグサ、オニノゲシ、ムラサキハナナ、セイタカアワダチソウ、等々。足元の道端にも目がゆきます。まずはロゼットを作るもの、すでに花を咲かせはじめたもの、など野草の姿と名前のおさらいです。名前と姿をむすびつける中で質疑応答が活発になってきます。
道を挟んだ三角広場に移ると早速タンポポにも似た大小のロゼットが群がっています。アブラナ科のカキネガラシです。ロゼットの下を掘って長い根を見ます。
少し進んでオオバコの根も同様に見てみます。形は違うものの、どちらも地面に
生えた姿に対して、これから成長するため栄養を貯めた大きな根です。
リーダーが用意した写真で、それぞれの野草の親の姿・花や茎などを確認します。
子供班では、外来種(帰化植物)の原産地あてクイズを代表国の国旗を使っておこなうなど子供向け特別メニューも出て、大いに盛り上がりました。
次は井の頭池から続く神田川沿い、ゆうやけ橋の袂を見て回ります。ナズナ、ハコベ、ヒメオドリコソウ、キュウリグサの花を見、葉の匂いを嗅ぎ、茎の形を確認しながら進みます。
オオイヌノフグリの花はほんの一部しか開いていませんでしたが、アリが運ぶエライオソームのついた種、他家受粉・自家受粉併用の繁殖戦略などの簡単な補足説明がされました。
橋を渡り川縁に下りて、オニノゲシ、ハハコグサ、ウラジロチチコグサ、ギシギシ
などを見てから、ギシギシとカタバミの葉で10円玉磨き実験をしました。草の作る蓚酸は、ヨモギやノビルなど強い匂いと同様に本来は野草の虫除け対策だったといわれていますが・・・。
次は石垣に沿って駅方面に進みます。石垣の隙間から長い茎を伸ばすホトケノザ、
石垣の下にも群落を作っています。すぐ隣にヒメオドリコソウは花をつけているのにホトケノザは赤い蕾のようなもの以外、咲いた花がないのはどうしてでしょう。
同じ科の近縁種に見られる不思議な関係に改めて野草の不思議さに感心します。
あっという間に予定時間が近づき、特番「根掘り葉掘り」の根掘りの時間が厳しくなってきました。そこをなんとか急いでノビル、タンポポ、カラスノエンドウの根を掘り出し、神田川の水で土を落とし、鱗茎(ノビル球根)、タンポポの立派な根、カラスノエンドウの根粒も確認でき、お開きとなりました。

■レポーター所感
・ 何かおかしな今年の天気が続いていますが、遅れていた梅の花も咲き、やっと春らしくなってきました。野草たちも日を追うごとに葉を広げ、花を咲かせ始めています。心配した雨にも降られず、少し尻切れ気味でしたが、予定したメニューもなんとかこなすことができました。参加者の皆様には今回のテーマ“春の野草たちの小さな姿に秘められた大きなパワー”に賛同していただけたように思います。
野草は人によってはどうでもよい存在、また邪魔な存在とする人すらあるかも知れませんが、見れば見るほど知れば知るほど、その可憐な美しさやしたたかさに驚くばかりで、多くの人とこの楽しさを共有できることを望みます。貴重な都会の公園の全てにそうあれと期待するのは難しいとおもいますが、少なくとも一部には最低限の手入れのままの野草が見られる場所が残されることを祈ります。
「雑草という草はない。すべての草にはそれぞれ名前があって、自分に合った場所を選んで生を営んでいる。人間の勝手な都合で切ったり、刈ったりしてはいけない。」と昭和天皇が言われたとか、まさに至言と思います。
(レポート:竹内、写真:高野)

第81回井の頭かんさつ会レポート

第81回井の頭かんさつ会

「冬の樹木―もっと知ろう常緑樹」

日時: 2012年2月25日 10時~12時
場所: 井の頭公園
主催: 井の頭かんさつ会
後援: 東京都西部公園緑地事務所
案内:
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員 森林インストラクター)
 日置 日出男(森林インストラクター)
 田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
 小町 友則(NACS-J自然観察指導員 森林インストラクター)
 高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
 大原 正子
 高久 晴子
 田中 雅子(NACS-J自然観察指導員)
 大橋 博資
 竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)
参加者:12名(大人12名)

レポート

81回井の頭かんさつ会当日は、寒く冷たい冬の雨の中で行われました。
参加者も12名、しかも子供の参加者なしという、いつもと比べて非常にこじんまりとした会でした。
多くの樹木が葉を落とし、枯れ枝のさびしい風景の冬に緑の葉を茂らせ、森を元気づけている常緑樹。その多様な形態、種類、生態をさらに詳しく知り、もっと常緑樹を身近なものにしよう、という狙いで行われた今回のかんさつ会でしたが、雨のため野外での観察をあきらめ、屋内での雨の日用プログラムとなりました。
企画担当者が朝早く集まり、いろいろな場所から40種類もの常緑樹の葉を集め、(枝付きです)机の上に並べて、参加者の集合を待ちました。
いつもどおり井の頭公園のボート乗り場(屋根の下、ボート乗り場入口をお借りして受付を行いました)での受付を済ませた参加者を地区公会堂まで案内し、並べた葉を前に、リーダーから常緑樹の特徴についての説明が始まりました。
落葉樹と比べて、全体的に葉は小さく厚いこと、緑色が濃く光り方も強いこと、クチクラ層という葉の表面にみられる蝋分がどうして作られるのかなどなど、常緑樹の生態、特徴、分布遷移についての話が語られ、参加者の好奇心をくすぐっていきました。
さらに、葉の見分け方、樹木の同定の方法についての説明があり、いよいよそれまでの説明を思い出しながら、スタッフが持ち寄った図鑑を使っての葉の同定にチャレンジです。
葉に鋸歯があるかないか、生え方は対生か互生か、色は、厚さは、冬芽はどうなっているのか等々夢中になって図鑑を調べます。ときにはスタッフも一緒になってヒントを出したり考えたり・・・ところがこれが結構難しいのです。途中で、担当から葉っぱを燃やしてその違いや意味を説明したり、匂いをかいでそこから種類のヒントを出したり、と参加者全員時間のたつのを忘れて集中していました。
最後に、担当から一つ一つ葉を取り上げて、その特徴・見分けるポイント・名前などを説明していきました。
参加者全員が自分で同定をした結果のメモを持ち、楽しみながら答え合わせです。
中にはちょっとひねくれた問題も用意してありました。同じ樹木でも形の全く違う葉(カクレミノ)を2枚並べて置いたり、斑入りで色も薄く小さめの葉(アオキ)を並べて置いたり・・・。意地悪問題はやはり正解は少ないようでした。
もう一つ代表の田中さんにカイツブリの話をプログラムとして用意してもらっていたのですが、葉っぱの観察であっという間に時間が過ぎてしまいました。
モチの仲間、カシの仲間、アオキ、クスノキ、ヒイラギの仲間、サカキの仲間、ツバキ、サザンカ、いたるところに実生が目立つマンリョウなど様々な常緑樹の魅力を満喫したかんさつ会でした。


(レポート:日置、写真:高野)