保全活動

井の頭かんさつ会の保全活動

自然観察会の開催と並ぶ、井の頭かんさつ会の活動のもうひとつの柱が、井の頭公園の生物多様性を高めるための保全活動です。活動頻度も延べ活動人数も保全活動のほうがかなり多くなっています。現在力を入れている活動は、おもに次の項目です。(2023年10月更新)

水域(井の頭池)

  • アメリカザリガニなど外来種の駆除
  • かいぼり後の池と池の生物のモニタリング

水域(神田川)

  • 希少水生植物の保護と育成
  • 景観を改善するためのゴミ拾い

陸域

  • 侵略的外来植物の駆除
  • 希少在来植物の保護
  • 世話を任されている3箇所の保護エリアでの活動

活動に参加している人

井の頭かんさつ会保全活動班メンバーが中心になって活動しています。2023年10月現在のメンバー数は18名です。井の頭自然の会の人たちとも協力しています。他の団体や個人の中にも、協力者として登録し活動に参加してくれる人がいます。

活動のようす

日ごろの保全活動については、保全活動ブログで報告していますので、ご覧ください。

井の頭かんさつ会が保全活動をしているわけ

井の頭公園(東京都立井の頭恩賜公園)は1917年5月1日に、日本初の郊外型公園として開園しました。当時のこの辺りは、住んでいる人も少なく自然が豊かな場所だったのです。しかしその後に周辺の開発が急速に進んだため、今では都会の中に残された貴重な自然環境となり、野生の生き物と人々から愛されています。
その井の頭公園も、周辺の環境変化、人々の自然との関わり方の変化、そして公園管理のしかたの変化などが原因で、自然環境の質、すなわち生物多様性(いろいろな生き物と環境が存在し、それらが複雑に関係し合って成り立っている状態)が急速に低下していました。井の頭公園を自然観察のフィールドとしてきた我々は、それを食い止めたい、できれば改善したいと考え、保全活動を始めました。
とはいえ、目標を達成するには、井の頭かんさつ会だけでは力が足りません。そこで、自分たちが率先して活動することで人々を啓発し、支援者や協力者を増やすとともに、公園管理者(東京都西部公園緑地事務所)や他の団体との協働で問題を解決する道を模索してきました。2008年にできた「井の頭外来生物問題協議会」はそのひとつで、そこでの議論が管理者を動かす大きな力になり、画期的な井の頭池のかいぼりが実現したのです。
これまでの活動の結果分かったのは、井の頭公園での成果は他の公園などにも波及するということです。我々が井の頭公園で実現した、公園の生き物へのエサやり自粛も、今では他の公園に広がっています。池の生物多様性改善のための「かいぼり」も、井の頭池での成果が認められ、他の都立公園池などのかいぼり実施につながりました。井の頭公園はそれほど注目度が高い公園なのです。
かいぼりを機に公園管理者が組織するボランティア「井の頭かいぼり隊」が結成され、かいぼり後も活動を続けてくれているので、井の頭かんさつ会は陸域の生物多様性を改善するための活動に重点を移しています。「井の頭外来生物問題協議会」は「井の頭自然再生協議会」と改称され、井の頭公園全域の自然環境を改善するための協議をしています。協議会参加団体だけでなく、個人を含む多くの人々が、それぞれが可能な範囲で一致協力して、井の頭公園をさらに良くするために活動するようになるのが、我々の最終目標です。2022年度に始まった、「井の頭恩賜公園生物多様性保全活用計画」に期待しています。

井の頭かんさつ会の保全活動の歴史

日ごろの自然観察 かんさつ会立ち上げ前から

井の頭公園の環境や生き物への理解は、じっくり観察することで進みます。もし問題があっても、よく観察していなければ気づけません。日ごろの自然観察が保全活動のベースであり、我々メンバーは今もそれを続けています。

自然観察会の開催 2005年4月から

多くの人に井の頭公園の自然の魅力や自然のしくみを知ってもらい、問題点にも気づいてもらうために、月例の自然観察会を始めました。2018年12月で第163回になっています。毎年、井の頭公園の環境問題がテーマの回を設けています。

エサやりを無くす運動
2006年8月から運動、2007年3月に「エサやり自粛キャンペーン」開始

それ以前の井の頭池では、コイやカモへのエサやりが盛んで、公園の店でもエサを売っていました。池はエサを拾おうと右往左往する多数の生き物で騒々しく、池の水が汚れる原因にもなっていました。野生の生き物が自力で食べ物を探す池を実現するため、東京吉祥寺ライオンズクラブと協力して管理者に働きかけた結果、2007年3月に「エサやり自粛キャンペーン」が始まりました。我々はそれを周知するため、来園者へのチラシ配りなどの啓発活動を続けました。今ではエサやりをする人はほとんどいなくなりましたが、必要に応じて啓発活動を続けています。

外来魚調査・駆除活動 2007年8月から

2007年7月に自然観察会「在来種と外来種」を井の頭池で実施。管理者の許可を得た上で、NPO法人生態工房の協力を得て池の生き物を調べた結果、外来魚のオオクチバス(ブラックバス)とブルーギルが増えて在来種を激減させていることが明らかになりました。そこで、駆除を兼ねた外来魚調査活動を2007年8月に始めました。協力者の力も借りて、ピーク時は週2回以上活動し、多くの外来魚を駆除しましたが、それでは問題を解決できませんでした。

井の頭外来生物問題協議会 2008年から

管理者に設置を要望した結果、管理者と民間4団体(その後5団体)が参加する月例の協議会ができました。井の頭かんさつ会も毎回出席して活動報告と意見交換を行いました。管理者も独自に調査をするようになり、井の頭池のかいぼり実施につながりました。協議会は今も続いており、今後は外来生物問題に限定せず、より広い分野の自然再生について協議することになっています。

井の頭池かいぼりへの参加

協議会の一員として、かいぼり25、かいぼり27、かいぼり29に参加しました。それまでの池の活動の経験が活かされました。

かいぼり後の生物モニタリング

かいぼりで駆除しきれなかった外来生物(アメリカザリガニなど)の駆除を継続するとともに、在来生物が増えているかどうかを調査しています。

侵略的外来植物の駆除 2010年ごろから

増えて園内の植生を変えてしまっていた外来植物シュロやトキワツユクサなどの除草から始めました。2017年からは活動頻度を増やし、アメリカオニアザミ、ブタナ、ワルナスビ、ヨウシュヤマゴボウなどの除草も実施しています。

希少在来植物の保護 2016年ごろから

盗掘や草刈りのせいで園内ではほとんど見かけなくなった、キランソウ、ジュウニヒトエ、オトコエシ、チダケサシ、ミズタマソウなど見つけ保護する活動を行っています。

保護エリアの世話

井の頭池の外来生物駆除活動と並行して、「池尻保護エリア」で植物と動植物の保護活動を始めました。そこは池と陸地を行き来して暮らす小動物にとって貴重な場所です。

玉川上水に隣接した「ミズタマソウ保護エリア」にはミズタマソウなど公園の他の場所では見られなくなった野草が残っていたので、世話を始めました。このエリアは、樹木が茂って薄暗く湿度が高い玉川上水の環境を守るためにも重要です。

その近くの通称「百年森」は、2019年までは更地だった場所です。時間をかけてそこにいろいろな環境を作ることで、多くの生き物が暮らせる場所にするため、選択的除草や生き物調査などの活動をしています。公園の他の場所で消えつつある植物をここに移植して保護する活動もしています。「森」ができるのはまだまだ先だと思いますが、すでに多くの草木が茂り、昆虫を始めとするいろいろな小動物が訪れています。

保全活動関連の受賞歴

※「」内は受賞理由(表彰状の文面)です。

  • 2007年度 三鷹市環境活動表彰 (2008年3月4日)

    「貴会は日頃の環境活動により三鷹市民のために尽力され地域へ多大なる貢献をされました この功績は誠に顕著であります」
    推薦者:個人

  • 2008年度 第15回コカ・コーラ環境教育賞主催者賞 (2008年8月吉日)

    「貴殿は、環境教育、環境保全において継続的な活動をおこない、社会に貢献をされました。」

  • 2016年度 第27回「みどりの愛護」功労者国土交通大臣表彰 (2016年6月12日)

    「みどりの愛護に優れた活動を行い緑化推進におけるその業績は誠に顕著であります」
    推薦者:東京都西部公園緑地事務所工事課

  • 2016年度 水・土壌環境保全活動功労者表彰(環境省)(2016年12月22日)(東京都環境局による伝達式は26日)

    「貴団体は多年にわたり水・土壌環境の保全活動に貢献されその功績は誠に顕著なものがあり他の模範となるものであります」
    推薦者:三鷹市環境政策課