第86回井の頭かんさつ会レポート

「玉川上水探検隊」

日時:2012年7月22日(日曜日)午前10:00~12:00
主催:井の頭かんさつ会
後援:東京都西部公園緑地事務所

案内:
佐藤 誠(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
大橋 博資
高久 晴子
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
大原 正子
上村 肇
竹内 隆一(NACS-J自然観察指導員)

参加者:31名(大人22子供9)

レポート

 子供たちが夏休みに入ったせいか、または今回のかんさつ会のタイトルに『探検隊』の文字が入っていたせいか、子供の参加者がぞくぞくと増えているとの情報が企画担当者の耳に入ってきました。
 そのころ下見を重ねる担当者は、前回のかんさつ会の神田川と違った側面を多く持つ玉川上水の魅力に圧倒されていました。当初は、環境全体の観察を描いていたのですが、目を凝らすととにかくたくさんの「虫」がいるのに気付かされます。歩いていては見えないものが立ち止まると見えてきます。小さな宝石がちょろちょろ動き、葉っぱやフンや枝に身を同化させてたものが姿を現すのです。いつしか、テーマは『虫』に固まり、これは年齢を問わず面白いのではないかとの想いも固まっていきました。
 当日は、暑さ対策は不要で長袖のシャツを着てちょうど良い気候でした。大人も子供も炎天下の中の2時間は厳しいものです。天候も味方につけ観察会は始まりました。
 集合場所のボート乗り場前から15分位で、玉川上水の幸橋に到着しました。幸橋を境に三鷹側と久我山側では、いくつかの違いが見て取れます。一つは、三鷹側は大きな樹木に囲まれていて暗いのですが、久我山側は、太陽の日差しが降り注いでいます。もう一つは、三鷹側の柵にはツル植物等の野草がほとんどないのに対して、久我山側にはアスファルトへもはみ出して野草が生い茂っていることです。森の住人(昆虫)がどちらにたくさんいるのかは明らかです。我々は3班に分かれて久我山側に向かいました。
 探検早々、小さな子供がその低い目線の先にエゴヒゲナガゾウムシを見つけました。この虫は、その名のとおりエゴノキで生活をしています。エゴノキの実に卵を産むのです。昆虫の生活のサイクルは早く、一週間で会える虫は変わってきます。このエゴヒゲナガゾウムシは、最近成虫になったばかりと思われます。そのため発見された植物は、生活圏のエゴノキではなかったのです。つまり、まだ繁殖活動の時期ではないと言うことです。シャーレに捕獲して順番に参加者にルーペで観察をしてもらいました。最初の参加者から「アッ、エ~」と声が上がりました。順番待の参加者の期待は、大きなものになってゆくのが見てとれました。この虫の表情は、人間やフクロウの様に平面的でなんとも言えない愛嬌がある顔をしているのです。この瞬間、参加者は今回の探検のイメージを、我々が伝えたいものを、それぞれの頭の中に描くことができたのではないでしょうか。
 はたしてそのとおり、班は玉川上水沿いに広がり各々探検を始めました。ハムシやカメムシの仲間をシャーレにとり、ルーペで観察。そして次の探検へとチームワークがとれてきたようです。
 亀の歩みでたどり着いたのは、樹液の出ているクヌギの木です。カブトムシをはじめいろいろな昆虫が集まる、いわば森のレストランです。女の子が「アルコールの匂いがする」と言いました。それもそのはず、辺りは樹液の発酵臭がただよっていました。期待が高まってきましたが、残念ながらカブトムシには会うことはできませんでした。それでもヒメジャノメ・カナブンの仲間・スズメバチの仲間が樹液に集まっているのを確認できました。(かんさつ会後には、このレストランにカブトムシがいたそうです。)
 次に参加者の歓声が響いたのは、チャイロハバチの幼虫の大量発生です。体長3cmほどの真黄色のイモムシタイプの姿をしています。玉川上水の鉄製の柵には、たくさんのツル植物が巻き付いています。最近導入された擬木(ぎぼく)タイプには、どのツル植物も巻き付くことはできないようです。夏に一気に成長するツル植物の多くは昆虫の食草であり、チャイロハバチの幼虫もヘクソカズラの葉っぱ一枚に何匹も頭を揃えて整列していました。その姿に、参加者の歓声があがったのです。さすが井の頭かんさつ会の参加者と感じました。虫嫌いの人には、最も目にしたくない光景の一つと思えたからです。余談ではありますが、ヘクソガズラはその名のとおり臭いとされる植物です。そして真黄色の幼虫は、幼虫にしては目立つ色をしています。しかも整列して同じ場所にたくさんいるですから、天敵に狙われやすいのではないかとの疑問が湧きました。もしかしたら、彼らも同様に臭いのではないかと考えたのですが、その場での確認はためらわれました。
 次は、事前調査をしていた蝶の幼虫へと参加者を案内しました。エノキの1メートル位の幼木に集まっていただき、幼虫を探してもらったのですが、やはり一見では発見できないようでした。その正体は、葉の緑にうまく擬態しているアカボシゴマダラの幼虫です。ここ数年の間に急速にその数を増やしています。理由は、人間による放蝶なのです。しかも日本にはいなかった外来種です。在来種のゴマダラチョウの幼虫との見分け方を話すサブリーダーの目は真剣でした。それもそのはず、本家のゴマダラチョウを目にすることはめったになくなってしまったそうなのです。
 ぜひ参加者に見て欲しいと思っていた虫が何種類かいました。その一つが、エサキモンキツノカメムシです。とかく臭いにおいをだすことで全国的に有名なカメムシですが、その種類の多さは昆虫のなかでもトップクラスです。また色彩においても多様にわたり、都会的なデザインには息をのむものが少なくありません。なかでもエサキモンキツノカメムシは、背中に大きなハートマークがあり、一般的に見られるカメムシのなかでは相当おしゃれなカメムシといえます。さらにこのカメムシは、卵や幼虫を守るという特徴があります。アリ・ハチの仲間のように社会構造がある昆虫を除くと、極めて珍しい行動です。そして、とにかくその姿がイジラシイのです。しかし、残念ながら今回は成虫のみの観察に留まってしまい、昆虫の季節の動きの速さをあらためて感じました。
 折り返し地点の松影橋までかなりの距離を残しているのに、時間はみるみるなくなってきました。ピッチをあげなくてはならないのですが、そうすると虫は見つけられません。板挟みではありましたが、事前調査で虫が見られる可能性が高いと判断したポイントまで移動することにしました。
 まずは、クワノキで生活するクワカミキリです。発見できるときは何匹もいるのですが、なかなか見つけられませんでした。しかしシマシマ模様の長い触覚が見えました。ちょと木の奥にいたのですが、参加者全員が黙視に成功しました。そのあと、アミで捕獲も成功し、キーキーと鳴く声も確認できました。
 次のポイントは、マユミの木です。探す昆虫は、キバラヘリカメムシです。こちらは探すまでもなく、いっぱ見つかりました。卵も幼虫も成虫も観察することができました。
 終盤駆け足になってしまったのですが、たくさんの住人がいる玉川上水の面白さ、そして大事さは、参加者の方々に伝わったのではないかと思います。 

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(レポート:大橋、写真:上村)