第55回井の頭かんさつ会レポート

「10倍楽しむ池の鳥」~エサやりのない池は面白い!~

日時: 2010年1月17日(日) 午前10:00~12:00
場所: 井の頭池~神田川
集合: 午前9時45分 井の頭池ボート乗り場前
主催: 井の頭かんさつ会
後援: 東京都西部公園緑地事務所
案内:
田中 利秋(NACS-J自然観察指導員)
小町 友則(NACS-J自然観察指導員、森林インストラクター)
高野 丈(NACS-J自然観察指導員)
大原 正子
佐藤 誠
高久 晴子
田中雅子(NACS-J自然観察指導員)
日置 日出男
大橋 博資
上村 肇
参加者:34名

レポート

 「エサやり自粛でカモが激減したので、池がつまらなくなった。」 という声をエサやりをしていなかった鳥好きの人からも聞くことがあります。 でも我々は逆で、池が面白くなったと思っています。その違いは、池の鳥を見る見方の違いからきているようです。 それで今回は、普通の探鳥より10倍は楽しめる鳥の見方を紹介し、 「エサやりのない池は面白い!」ことを示すことにしました。それは鳥たちの行動を観察し、 彼らが何を考えているのか想像することです。
 かなり冷え込んだ朝でしたが、参加者に1人の欠席もありませんでした。 参加者が増えた最近では無かったことです。 その34名と案内者10名が、意見交換がしやすいように、5つの班に分かれて観察をスタートしました。 我々の班は最初に、今ごろ卵を抱いているカイツブリを七井橋から観察。 するといろいろなカモやオオバンが寄って来たので、 種類の見分け方や、身体の造りの違いと食べる物の関係などを説明しました。
 その後は、→弁天池→ボート池→神田川と進みながら、 池の鳥たちがどこに多くいてどこにいないか、そしてどんなことをしているか観察しました。 そういう目で見るといろいろなことに気づきます。
 例えば、
・弁天池にはお茶の水池やボート池と比べてカモがとても少ない
・しかしその一角、分園の白鳥池にはオナガガモがたくさん集まる
・キンクロハジロやホシハジロは以前は弁天池に来なかったのに、エサやりが減ってから来るようになった
・しかし白鳥池にキンクロハジロやホシハジロがいるのを見たことがない
・お茶の水池でキンクロハジロが集まって休む場所が昨年とは変わった
・以前は毎日たくさん来ていたユリカモメが今はまったく来ない
・今朝池に少なかったカルガモが神田川にはたくさん、しかもカップルでいた
・最近神田川にいるオナガガモは池のオナガガモと違って人に寄ってこない
などなどです。
kansatukai55a.jpgその都度、それがなぜかを考えてもらいました。 ヒントは、鳥が考えているのは基本的には3つ(①安全、②食べ物、③子育て)のことだけだということです。 鳥がいるのにも、いないのにも理由があります。 いないことも観察の重要な対象なのです。 問いかけを繰り返しているうちに、参加者の皆さんも鳥たちの考えをあれこれ想像するのに慣れてきたようでした。 鳥の種類によって形や色だけでなく暮らしぶりが異なり、好きな場所も違うことを分かってもらえたと思います。 鳥たちの暮らしを歪めてしまうエサやりがなければ、それがよく見えるのです。 いろいろな鳥が暮らすにはいろいろな環境が必要なことも理解してもらえたことでしょう。
 弁天橋では皆の憧れの鳥・カワセミが飛来し、一同の目はそれに釘付けになりました。 しばらく池にいれば必ず見られる鳥なのですがね。 そこで、どちらも小魚を食べる鳥なのに、カイツブリは困窮しカワセミはそうでもない理由を考えてもらいました。 カイツブリが時季外れの子育てをしているのも窮状の表れです。 池の小魚が外来魚ばかりになっていることと、両者の魚の捕り方が違うことがその理由です。 もちろん、原因となる外来魚を池に持ち込んだのは人間です。
 自然文化園が40年以上前から数えている池のカモのグラフや、 井の頭バードリサーチ(高野代表ほか)が2006年から秋~春の毎月カウントしているデータを示して、 井の頭池のカモの種類と数の移り変わりを説明しました。 大幅に増えたカモがいる一方で、ほとんど来なくなったカモもいます。 参加者はその大きな変化に驚いていました。 池と周辺の自然環境の変貌、そしてエサやりなど人間の行為の影響です。 それに順応できるカモは増え、できないカモは減ったのです。 大幅に増えていたカモはエサやり自粛で大幅に減りましたが、来なくなっていたカモは今も戻ってきていません。
kansatukai55b.jpg参加者のすぐ目の前には美しいカワセミが40年余り前まで池に毎年500羽近く来ていたのに今はほとんど姿を見せないコガモを見に神田川を少し下りました。 今もそこには10羽近くが毎日来ているのです。 最初の2羽を見つけたところで全部の班が停止して、遠くから双眼鏡で観察しました。 コガモはとても臆病なので、大勢で近づくと間違いなく飛び去ってしまうからです。 人間の生活ゴミだらけの神田川のほうがコガモにとっては井の頭池よりマシらしいのが、 井の頭池ファンとしては悔しいです。 井の頭池にはコガモが安心して過ごせる場所や好きな食べ物が足りないのでしょう。 どんな池になったらコガモが戻ってきてくれるのか、考えてもらいました。
 三角広場でまとめの話をして解散。「楽しかった。」という感想に混じって、 「鳥を見る目が変わりました。」という言葉をいただいたのが企画担当としてとても嬉しいことでした。 鳥たちの行動やしぐさの意味を想像するのは最初は難しいですが、続けているとしだいにできるようになり、 その結果、鳥たちのことをより深く理解できるようになります。 それはとても面白いし、大切なことです。 「カモが減って寂しいので、少しはエサやりを認めてもいいんじゃないの。」などと言う人は、 今日の参加者の中には1人もいないと思います。 (レポート:田中利秋 写真:高野丈)