第163回井の頭かんさつ会実施レポート

■タイトル: 生き物の冬越し

■実施年月日: 平成30年12月16日(日)13:30~15:30

■参加者数: 一般参加者:22名(大人19名、子ども3名)

■案内人: 井の頭かんさつ会スタッフ12名

■実施場所: ボート乗り場前広場→七井橋→お茶ノ水池北岸→お茶ノ水→梅園→弁天橋→野草園→御殿山→陸上競技場横(解散)    

  開始直前に雨が降りだし実施が心配されまたが、すぐに止み、終わる頃には薄日のさすまずまずの天候のなか、公園で冬を越す鳥、昆虫、植物、そしてわざわざ冬に出てくる昆虫や冬に咲く花を探しながら、実際に観察しました。  特に冬に出てきて交尾・産卵するフユシャクは、初めて見た参加者も多くいました。昼行性のクロスジフユエダシャクが既に出現ピークを過ぎており、飛んでいる雄は発見できませんでしたが、産卵後の雌がおり、あえて天敵のいない冬に出てきて、食べることも飛ぶこともせずにそのエネルギーを産卵にそそぐ生態をお話ししました。

 弁天池では、池畔のムクの木に、ヒヨドリ、ホンセイインコ、ハトが残り少なくなった実を食べに来ていましたが、さらにその下では、キンクロハジロ、オナガガモ、カルガモが落ちてくる実を食べに来ているという面白いようすが観察でき、観ている間にも増えるカモの数に「いつの間に…?」という声もきかれました。冬の間にひたすら食べ、つがい相手を見つけ、春になると繁殖のために帰っていく冬鳥の生態の一端が観察できました。

 ムラサツバメは近年、分布を拡大しているといわれるシジミチョウで、東京の都市部公園でも普通に見られるようになっていますが、井の頭公園でも9頭で集団越冬している様子がみられました。アオキ葉上に9頭で重なるように横になって、まるで枯葉が落ちてきて葉上にたまっているかのようなので、なかなか一目では発見できず、生き物のデザインの妙に感心するばかりでした。さらに、別にいた1頭は参加者が発見しました(後日談:前述の集団に合流したのが確認されました)。  生き物が少ないと思われる冬の公園でも、探してみると多くの生き物がいろいろな形で越冬していたり、積極的に冬を利用したりしていることを、参加者が実際に目の前で発見・観察し、生き物のさまざまな生き方や生態を実感していただける観察会になりました。

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<観察できた越冬中の生き物>  

昆虫等: アカボシゴマダラ幼虫(エノキ葉上)、オオミノガ幼虫(エノキ枝先の蓑の中)、トホシテントウ幼虫(カラスウリ葉裏)、オオカマキリ卵鞘(低木の枝の間)、フタスジヒラタアブ幼虫(ヤツデ葉上)、ウラギンシジミ成虫(ツバキ葉裏)-異なる場所で計4頭、クモ不明種成虫(樹名板裏)、ヨコヅナサシガメ幼虫(物置屋根下)、ヒラタグモ卵のう(物置扉上)、ムラサキシジミ(アオキ葉上)、ジョロウグモ・コクサグモの卵のう(擬木柵)、ムラサキツバメ成虫9頭(アオキ葉上で集団越冬)

冬 鳥: キンクロハジロ、オナガガモ、オオバン、ヤマガラ(里におりてきている)

植 物: コブシ、シナマンサクの冬芽など

<観察できた冬に活動する生き物>

昆虫等: クロスジフユエダシャク成虫・雌(産卵後の個体・木柵上)2頭、クロオビフユナミシャク成虫・雌(産卵後の個体・木柵上)、クロスジホソサジヨコバイ(ヤツデ葉裏)

植 物: ヤツデ(開花中)、オオハナワラビ(胞子散布中)

<観察できたその他の生き物、越冬前の生き物や通年見られる生き物>

昆虫等: キマダラカメムシ成虫、ツヤアオカメムシ成虫、ビジョオニグモ、オオヒメグモ、カネタタキ

鳥 類: ヒヨドリ、キジバト、ホンセイインコ、カイツブリ、ゴイサギ、コサギ、カワウ

以上 (報告書:田中雅子)